2.悲劇の写真
「元気な女の子ですよ」
その言葉とともに私の意識は覚醒した。目が覚めると見知らぬ天井、見知らぬ男女に、知らない私。
『私は誰?…ここはどこなの』
なんてね!これ一回言ってみたかったのよ。それにしても。
『ここどこ!?めっちゃ豪華な家!』
光を反射して煌びやかに輝いているシャンデリアに気の遠くなるほど高い天井。
『これってまるで西洋のお屋敷みたーい』
リリアナ様のお屋敷に似てるなー。以前見たゲームの資料を思い出しながら感動に浸っていると視界にあるクリームパンのようなものが目についた。それはまるで赤ちゃん特有の手のようにも見えた。
『なんでクリームパン?』
不思議に思い、手を伸ばしてみるとクリームパンが遠のいた。もう一度手を伸ばしてみる。更にクリームパンが遠のいた。
また、手を右に動かすとクリームパンも右に動きその逆も然りだった。クリームパンと手の動きが連動している。
試しに手をパーにしてみるとクリームパンの形も変わった。嫌な予感がしてきた。今度はグーにしてみる。また形が変わった。もしかしなくてもこれは私の手なのではないか……?
『いやいや、ないない、ありえないから』
冷や汗が出てきた。気を取り直して手を高速でグーパーグーパーさせてみた。もちろんクリームパンも連動して動いた。これで私の嫌な予感は確実なものとなった。
『なんか赤ちゃんになってるんだけど!?』
冷や汗の量が尋常じゃない。まっ、まぁ、これ夢だしね。起きたら戻れるわけだし。せっかくの夢だし満喫しなきゃね。
『で、でも試しに腕つまんでみようかな』
痛い! どうしよう! 夢じゃないの!? えっ、だれか近づいてくる。
「はーい。じゃあ撮りますよー」
誰!? 写真!? 今そんなことしてる暇ないんだけど!
だが、私の思いと反してパシャっという効果音とともに写真は撮られた。
「……誠に申し訳ございません。もう一度写真を撮り直させてもらってよろしいでしょうか?」
「撮り直す前に今撮った写真を見てみたいわ。わがまま言ってごめんなさいね」
「私にも見せてくれ」
「「ふっ…」」
今あの人たち絶対私の顔見て笑ったよね!しょうがないじゃない!混乱してたんだから。写真屋さんが気を利かせてうまくフォローしてくれたんだから撮り直させてよ。
「やっぱり撮り直した方がいいんじゃないか?」
ナイス!! 誰かわからないけど美形な男性! さぁ、美形な女性も賛成して!
「あら、撮り直しちゃうの?こんなに可愛いく撮れているのに?」
いやいや、可愛く撮れてないって! なにキョトンみたいな顔して言ってるの。今すぐ撤回して撮り直そうよ。
「そうだな。君が言うなら間違いないな」
「でしょう? この写真そのまま提出でお願いするわ」
「かしこまりました。では失礼いたします」
写真屋さぁぁぁぁぁん!行かないでぇぇぇぇぇ!!