1-5 エリアボス
このあたりの魔物は相当弱いようだ。というかフォレストボアが弱い。縄張りなのかフォレストボアしか出てこない。倒すのは楽なので問題は無いがだんだんと鬱陶しくなってきた。
そして森を遂に抜けるかといったところで、巨大な猪に遭遇する。フォレストボアでさえ1.5mほどあるが、こいつはその倍はある。フォレストボアのボスだろうか。巨大な牙を縦横無尽に振り回している。
『エリアボス:キングボア との戦闘を開始します。』
どうやら逃げられなくなったらしい。回りを透明な壁が囲い、倒すか死ぬかの二者択一になった。
「ムールどうするよ。短剣と棒だと勝てそうにないぞ。」
「リアルと違ってダメージは蓄積されるからいつかは倒せるぞ。」
どうやらHPという概念があるらしい。言われて気付いたが、キングボアの上方にHPゲージが表示されている。もしかしてと思いステータスを開いたら俺のHPゲージも存在した。しかしステータスを開かないと見れないのでこまめに確認は難しいだろう。
早速俺たちは攻撃を開始する。作戦は至って簡単だ。俺が引きつけつつダガーで攻撃し、ムールは隙を見て杖で殴る。このくらいの速さであれば"演算"するまでもない。ゲーマーにとってこのくらいは義務教育だ。
牙を躱し、体躯を躱し、時にはダガーで受け流し、俺らは徐々にキングボアの体力を削っていく。
そして残り1割を切った頃、ムールが叫ぶ。
「そろそろ来るぞ!」
キングボアがいつにも増してとてつもない勢いで迫ってくる。ぶつかればひとたまりも無いだろう。さて、どうするか。弓使うか。
俺は弓を取り出して矢をつがえる。弓の方がダガーより強いのはムールに聞いて知っている。狙いは勿論……目だ。今までは避けられる可能性があったから狙えない急所だったが、命を振り絞った突進であれば避ける隙は無いだろう。
シュッ
矢は勢いよくキングボアの目に刺さる。しかしキングボアは勢いが止まらない。そして俺はなんとか受け流そうとするが、間に合わない。
ドーン
瀕死である。死ぬかと思った。キングボアは消滅する。どうやらHPは0になったが突進は止まらなかったらしい。猪は伊達じゃないようだ。
「大丈夫か?死んだか?ドロップアイテム確認するぞ。」
「はぁ。HPミリだ。後一発で死ぬな。」
『エリアボス:キングボア を討伐しました。初回討伐報酬が送られます。』
『スキル〈弓〉を獲得しました。』
『スキル〈短剣〉を獲得しました。』
『スキル〈受け流し〉を獲得しました。』
『スキル〈ステップ〉を獲得しました。』
ドロップアイテムは「猪の毛皮」と「猪肉」の二つ。そして初回討伐報酬が「シーガイ南の地図」と「王猪の魂」だ。
「王猪の魂」は何に使えるか全く分からなかった。
「王猪の魂」
猪の王が置いていった魂。
ムールは初回討伐報酬は同じで、ドロップアイテムが「猪の牙」が二つだったらしい。
そしてスキルもいくつか手に入ったようだ。ステータスはこんな感じだ。
名前:シン
種族:人類
職業:〈狩人〉
技能:〈剣〉〈短剣〉〈弓〉〈受け流し〉〈ステップ〉
称号:〈エルローンの好敵手〉
〈ステップ〉は足の動きで躱すスキルだ。他のスキルは文字通り。〈剣〉はフォレストボアと戦って手に入れたスキルであり、〈短剣〉はその上位スキルだ。
そして遂に念願の無職脱出だ。自分の中で祝っておこう。
「何嬉しそうにしてんだ?いいスキルでも手に入ったか?」
「いや、何でもないぞ。さっさと次の街に行こう。」
「お?ああ。」
そして着いたのが第二の街パスルだ。広さはシーガイより一回り小さいが、人や店は多いように感じられた。夕方だからだろうか。
一通り回って地図を手に入れてポータルを開放したら、寝ることにした。もう現実では夜中だ。
「ムールは明日は何時からだ?」
「朝からやってると思うぞ。」
「暇なのか?ニートか?」
「休みなんだよ。」
「そうか。じゃあまた朝に会おう。」
こうして俺のUNO一日目は終了した。
◇
いくら見てもシンの動きは常人ではない。ムールはそう考えていた。エルローンの攻撃を躱したのも驚きだが、フォレストボアを楽々狩るのもどうかと思う。
フォレストボアはβでは中級モンスターに属されていた。弱点を突くのが難しいためだ。途中から脳震盪アタックが開発されて楽に倒せるようになったが、初心者には厳しい相手だ。明らかにゲーマーだろう。しかし、攻撃を躱すセンスがありすぎる。ただのゲーマーでは無いだろう。そういや、海外でリアル忍者と話題になった日本人プレイヤーがいたな。何でも銃弾すら躱して見せたとか。まぁ噂にすぎないけどな。
なんとなく始めたUNOだったが、色々面白いことになりそうだ。
◇
Tips.エリア:シーガイ南
森が広がっている。様々な植物が採取可能。日中は弱いモンスターが多いが、夕方になると強力なモンスターが出現する。
エルローンはボスではないので逃げれます。(逃げれるとは言ってない。)