2-13 別の戦いへ
シンが到着したときにはもう事が終わっていた。
「思ったより早かったな。俺も戦うつもりだったんだが。」
「5分でリスポーンするから早めに終わらせないといけないんですよ。」
「あぁ。紗霧が手伝ってくれたお蔭で助かったよ。シンも良い一発、いや二発だったよ。」
ナツメは俺の手にある2本の矢を見て言い直す。
「運が良かっただけだな。」
「よく言うよ。」
「それで鳳珠破壊貰っちゃって良かったのか?」
「長生き出来ただけでも儲けだからな。そちらに勝てる気がしないし恩だけでも売っておくさ。」
「そうか。ならまた最終決戦で会うとしようか。生憎もう協力する必要は無いんでな。」
「そうだな。紗霧、次は戦えるといいな。」
「そうですね。ナツメには負けませんよ。」
紗霧は何か変わったか?どことなく雰囲気が違う気がする。ま、いいか。
「紗霧、急ぐぞ。あっちも始まってる。」
「ええ。戻りましょう。」
俺たちは急いで隠れ家に帰る。
◇
フェリエはヴィズと共に水巫女リルと戦うために歩いている途中だった。
「それで?シンとはどうなの?」
「……一つ聞いておきますけど気は無いんですよね?」
「んー無いわね。私も好きな人はいるし。」
私だって気になっている人はいる。シンが少しその人に似ているが、彼はこのゲームをやっていないので別人である。
「なら良いけどね。別にシンとは何も無いわよ。私がいくらアピールしても気付かないくらいには鈍感だからね。」
「あーそれは有りそうだね。モテてるのに全然気づいていなくて俺モテないとか思ってそうなタイプよね。」
「生粋の鈍感主人公って感じね。かといって私からは無理だし。」
「思い切って告白しちゃえば?」
「それが出来たら苦労しないわよ。」
「ま、そういうことよね。私も出来ないタイプだし。」
「そうなの?少し以外だわ。バンバン言うタイプだと思ってた。」
「ヴィズの中で私はどんな存在なのよ。」
「陽キャゲーム廃人。」
「くっ!反論は出来ないわね。」
「私も結構なゲームオタクだと自負しているけど、フェリエはそれ以上じゃない。」
「そうね。メジャーなゲームはやり尽くしているからね。ゲームの知識に関しては誰にも負ける気がしないよ。」
「なら私たちのことも知っていておかしくは無いんじゃない?」
「…まぁ動きが特徴的だからね。知ってる人ならすぐに分かるよ。名前も変えてないしね。」
「なんで私たちと組もうと思ったの?」
「そうだなぁ。元々出場はするつもり無かったんだけどね。FPS界に突如現れた二人組、驚異の回避と身のこなしを見せ、いくつかのゲームでは日本一位にもなった謎のプレイヤー、shinとvizy。そんな幻想とも言われたプレイヤー達に出会ったら知りたくなるじゃない。」
「……幻想は初めて聞いたわ。」
「プロゲーミングチームに所属してないでしょ?だから何者だ?ってなってるのよ。」
「あーなるほどね。所属してないのは色々理由があってね。一応勧誘はたくさん来てるんだけど。」
「そりゃあそうでしょうね。ゲームによっては最強と謡われているペアだもの。」
「そうね。まぁいいわ。これ以上は今は教えることが出来ないけれど、オフ会があるし知れる機会はあるでしょ?」
「確かにね。」
「それよりもうすぐ着くわよ。準備しなさい。」
フェリエは気を引き締め直す。ここからは油断できない。




