2-7 混戦の予兆
「それで、紗霧とヴィズは何があった?」
「私は天草というプレイヤーにやられました。」
「天草なら紗霧でも仕方ないかもね。」
「フェリエは知っていたか。」
「周りには道場破りというあだ名で呼ばれている騎士のプレイヤーね。対人戦に優れているらしいわ。」
紗霧が負けるとなると強敵で間違いないだろう。
「ヴィズは?」
「私はリルってプレイヤーにやられたわ。遠距離で一方的にやられたから手も足も出なかったわ。」
「忍者のスキルがあれば接近は出来るだろ?」
「MPが足らなかったのよ。だから諦めて帰ってきたわ。」
「リルのことは魔法使いってのは知ってるけどあまり知らないわ。二つ名は水巫女だったかしら。」
「そうね。水属性の魔法が多かったわね。」
ヴィズでは相性が悪そうだ。
「どうせ戦うことになるだろうけどどうする?」
「参加者を見る限り厄介なのは天草、リル、ソニア、ナツメ、ケン、後ノイスね。」
フェリエから全員の情報を聞く。
ナツメは神速剣と呼ばれる剣士、ノイスは優しい蛮族と呼ばれているオールラウンダーだそうだ。
「幸い6人とも別チームだからチーム単位で見れば私たちの方が上回ってる。ポイントを稼がれる前に潰しておきたいけど。」
「なら1人1チームやるとか。」
「無理ね。他のチームメンバーもそれなりに強いわよ。作戦によっては2人で1チームならいけるかもだけど。」
「なら先に3チーム潰しておきますか。」
「でも防衛はどうするの?」
「戦場をこの近くにすれば良いんじゃない?」
「それなら僕に良い作戦ありますよ。」
カズラ君から作戦を聞く。
「良いわね。それでいきましょうか。場所が近い方が良いから狙うなら天草ね。」
「他の襲撃相手はどうするんだ?」
「リルとナツメね。他の3人はかなり強いから。」
「ナツメは隠れ家の特定から行わないとな。」
天草とリルは紗霧とヴィズが見つけているのでその手間はない。
「俺が探してくるよ。」
「シンが行ってくれるなら助かるよ。」
一番穏便に索敵できる俺が行くことにする。ケンとソニアに顔が通じるという理由もある。
「私も行きましょう。前衛が必要でしょう?」
というわけで俺と紗霧でナツメをサーチ&デストロイする事になった。
「それなら私とヴィズでリルを叩きましょうか。」
「なら俺とカズラ君で天草か。了解だ。」
役割分担が決まったので、それぞれ準備を始める。まぁ俺と紗霧は行き当たりばったりで行くことになったが。
4人を置いて紗霧と洞窟を出る。もうすぐ夕方なので暗くならないうちに行動しなければならない。
今回全く情報がない状態から1人のプレイヤーを探すことになる。勿論それは不可能に近い。というわけでその辺のプレイヤーを見つけては交渉して情報を手に入れていった。
決して脅しではない。平和な交渉である。
全く狭いわけではないエリアだったが、十数人を葬ったところでナツメの情報は手に入った。
ナツメは一人で鳳珠を壊して回っているらしい。早いうちに脱落させるのは正解だったようだ。
「紗霧、相手は動きの速い剣士だ。いけるか?」
「無論だ。シンの援護もあるしな。」
少し作戦をたててからナツメに挑むことにした。
◇
「こんにちは。」
紗霧が一人でいるナツメに近付いて話し掛ける。挨拶なのは紗霧なりの会話術である。
ナツメは警戒したように観察する。
「こんにちは。侍とは珍しい。私に何か用ですか?」
「少し語り合いたいと思いまして。」
「別に構わないが。」
お互いに獲物を抜く。
「おっと。それ俺も混ぜてくれないか?」
紗霧は基本1対1でナツメと勝負するつもりだった。そしてシンが影からサポートするはずだった。
その人物の登場はナツメにも紗霧にも予想外であり、シンでさえも想定の範囲を越えていた。
「まさかこんな所で会えるとはね。」
ケンはニヤリと笑った。




