2-4 二人の剣士
ケンは一人、平野を歩いていた。
たまに遭遇する敵プレイヤーを斬り倒しながら歩き続ける。
この辺りは強い奴がいないのか。遠出しないといけないみたいだな。
ソニアもシンも近くにいないのはありがたい。開始数時間で壊滅させられるのは嫌だからな。タイマンでの勝負ならまず負けないが、集団戦や不意打ちとなると話は変わってくる。
ひとまずキルポイントだけ稼ぎながら情報を集めるか。全滅させても良いが、1チームにつき16ポイントだけじゃ上位に組み込めないかもしれないからな。ここは慎重にいこう。
俺の前に一人のプレイヤーが現れる。彼女の持っている剣を見て察する。すぐさま俺は鋼鉄の剣を朱く染めた。
◇
神速剣と呼ばれているプレイヤー、ナツメは細身の剣を抜く。
まさかこんな所で朱剣と見えることになるとは思わなかったね。北の最前線ではお互いにトップを走っているため、ライバルみたいなものである。
「実際に会うのは初めましてだね。」
「そうだな。話はよく聞いてるよ。」
「嬉しいな。それで、やる?両方旨味は少ないけどね。」
「1ポイントしか入らないからな。正直やる意味は無い。でも視聴者的には面白いんじゃないか?」
「確かにそうだね。ならやりましょう!」
私はスキルを発動させて自身の速度を上げる。
「では行きます!」
「来い。」
私の剣は細く軽い。威力は低いがその分速くなり、速さで威力も増す。しかもこのゲームでは威力は少なくとも急所を捉えれば一発で死ぬこともある。普通の相手ならば3秒以内に決着がつく。
しかし流石は二つ名がつくだけはあり、3秒間で14回放った剣戟は見事に全て捌かれた。
「全部防がれるのか。困ったね。」
「まぁこのくらいはね。次は俺の番だ。」
朱剣は朱いオーラを纏った剣で攻撃を繰り出してくる。直感的にまともに受けてはいけないことを察して、剣身で逸らして対応する。
そして逸らした隙に速攻を決める。反応速度限界程度の速さで繰り出されたその剣を朱剣は避けずに胸に突き刺さる。
朱剣は消える間近に言葉を残していった。
「クー・ドゥブル。決着はまた後でにしよう。」
朱剣が消えると同時に私に刺さっていた朱い剣も消える。
全く、狙って相打ちに持っていったのか。お互いが手の内を完全に見せられるタイミングではないからだろう。そうだな。後で決着はつけようか。
私もリスポーンまでの5分を待つことになった。
◇
「なんと!朱の剣ケン選手と神速剣ナツメ選手の対決は相打ちとなりました!スレアさんどう思いますか?」
「序盤で本気を出すのはまずいと思ったケン選手が相打ちに持っていった感じですかね。」
「なるほど!良い判断かもしれません。見られているかもしれませんからね。」
「初回のイベントですから全員情報が少ないので懸命な判断ですね。」
「それにしてもケン選手の朱い剣はなんだったのでしょうか。」
「あれは〈魔法剣〉ですね。剣に属性と威力を追加するスキルです。今の段階でかなりの威力があるようですから、捌いたナツメ選手も相当な剣の腕前のようですね。あ、スキルに関してはイベント参加の同意書に効果の公表を許可する項があるので問題ないです。入手方法は秘密ですが。」
「ナツメ選手の速さは何のスキルの影響なんでしょうか?」
「〈速度上昇〉〈疾走〉〈付与術:速度〉とかですね。他にもありますがこの後のネタバレになりそうなので控えておきます。」
「なるほど。複数のスキルの重ね掛けだったんですね。」
「……アルスさん。選手のスキル見てきてないんですか?」
「い、いや、見てますよ?…実況として解説は譲っているだけで。」




