1-29 レイド報酬 後編
「……おう、私は〈気配感知〉と「魔石(雷)」だな。」
紗霧も良い引きをしたみたいだ。
〈気配感知〉は周囲の気配を感じ取るスキル。これを使えば気配切りだってできる。するとは言って無いけど。
雷属性の魔石も使い道が多く、良いアイテムだ。
「全部欲しいのだけど。1個だと物足りないわ。」
そう言いながらフェリエが使用する。
「……面白いのが出たわね。〈空間魔法〉と「妖精の雫」よ。」
〈空間魔法〉はそのままだろう。いずれワープとか出来るのかもしれない。色んな可能性を秘めた魔法だ。
妖精の雫はカズラ君曰わく〈魔力上昇〉のスキル付与が出来る強化アイテムだそうだ。魔法一筋のフェリエにとっては一番欲しいアイテムだったかもしれない。
「最後は俺だな。」
「今のところ外れることは無さそうですけど。」
俺はスキルスクロールとランダムボックスを開く。
「……なんだこれ。えっと、〈加速度〉と「血の因子」だった。」
〈加速度〉は物体に加速度を与えるスキルだ。言わば色んな方向に重力をかけれるみたいなものだな。初期の最大加速度は0.1Gだ。試しに石に上向きにかけたら落ちるのが遅くなった、気がする。で、これをどうしろと?
血の因子に関しては結論から言うと何も分からなかった。
「血の因子」
ある力の結晶。
フェリエにも何も分からず、カズラ君も使い道は分からないようだった。
「…まぁいいか。ところで魔石と魂で卵作れるがどうする?」
「お願いしようかな。」
「私もお願いするわ。」
というわけでヴィズと紗霧からそれぞれ貰って卵を作る。
まずはヴィズから。渡されたのは「魔石(毒)」と「空鼬の魂」である。
〈融合〉
久しぶりの錬金で「卵(毒)」が完成する。アイテム名だけ見ると裏路地とかで捌かれてそうだ。
続けて紗霧から貰ったのは「魔石(雷)」と「氷熊の魂」だ。
〈融合〉
完成した「卵(雷)」を紗霧に渡す。
「良いなぁ。私もペット欲しい。」
確かにフェリエだけ使役モンスターがいないのか。
「迷宮行ってくれば?」
「んー既出の迷宮だとやる気が出ないのよね。そうだ!今度シンと迷宮探しに行くわ!」
「え?何で俺?」
「何となく見つかる可能性が高そうだから。」
「そんなこと無いだろ。」
「シンが行くなら私も行くわ!」
「ヴィズは全く関係なくないか?」
「シンは私のパートナーなんだから当たり前でしょ。」
えぇ、そうなのか?そのまま3人で探しに行くことに決まってしまったけど、そんな感じで見つかるものでは無いだろ。
「さて、これで目標は達したけどどうする?進む?」
「まだ昼ですし、進みません?」
「そうだね。進もうよ。」
「なら、進みますか。」
てなわけで、ドラゴンケイブ上層の森を先に進むことになった。
「なんか、敵があまりいないわね。」
「そうだな。グソクムシくらいか。」
結果から言うと、森の中は安全だった。
住んでいるのはリスや鹿などの友好的な動物か、上から落ちてきたグソクムシくらいなもんだ。飛竜も木で獲物を探し辛いため、下りてくることはなかった。
「まるでフラガラハが豊かな森を守っているみたいね。」
フラガラハが住み着いていることで、結果として狂暴なモンスターが寄り付かないのかもしれない。
「敵がいない分、採取は多めに出来ますよ。」
果実、木の実、キノコ、草、鉱石、得られるものは多かった。ほとんどが日常でもたまに見る程度の食用の植物であったため、食材を穫るには最適な森かもしれない。
鉱石は鉄鉱石と稀にボーキサイトを採掘する事が出来た。現在プレイヤーの中で使われているのは鉄のため、大きな発見では無いが、貴重な採掘ポイントである。
さらに木を見る感じ、広葉樹のため木工などには重宝することも分かった。建造のレベルまでいくと針葉樹が使われることもあるが、家具までなら広葉樹がよく使われる。
そんな素材の展示会みたいな森を抜けると、分岐路に出た。
ぱっと見で分かるのは上に登る坂と下に下る穴と真っ直ぐ進む道があることだ。
上に登る道はこの洞窟の入り口から下りずに真っ直ぐ進んだ場所に出るだろう。分かりきっているので却下になった。
問題は上層を進むのか、下層に進むのかだ。少し奥を覗くと、上層は森は切れているが続いていて、下層はまた大きな洞窟になっているようだった。
「さて、どうするよ?」
「どっちも面白そうだけど、難易度を上げるなら下じゃない?」
「下の方が強そうよね。」
「なら下か?」
「そうね。」
「下へ行きましょう!」
この人たちはまだ難易度が足りないらしい。ま、俺もだけど。
俺たちはドラゴンケイブ中層に足を踏み入れることになる。
おそらく血の因子は50話後くらいに再登場します。知らんけど。
加速度の下りは理解できましたかね。通常の重力で1G下にかかっていて0.1G上にかけたので、合わせて0.9G下にかかっていることになります。なのでちょっと落ちる速度が下がります。