1-27 レイド討伐 後編
幻が消えて驚いているフラガラハに魔刃を紗霧が放つ。勿論避けられるが惹きつけることには成功した。そのまま、紗霧に向かって駆けてくる。
〈集中〉
〈受け流し〉
スキルを発動させ、刀一本で力を逸らす。〈集中〉はその名の通り集中力を高めるスキルであり、その影響でフラガラハの速さでさえ反応できる。
〈闘気〉
〈瞬身〉
〈踵落とし〉
ヴィズがフラガラハの頭上に現れ、黄色いエフェクトを纏いながら踵落としを繰り出す。〈闘気〉は攻撃力と素速さを上げるバフであり、〈瞬身〉は短距離を一瞬で移動する忍者の職業スキルである。ピンポイントで速い敵に当てるのはかなり難しく、ヴィズと言えども、紗霧がスピードを緩めたお蔭の命中である。
フラガラハは地面に叩きつけられ、一瞬動けなくなる。そこへ俺とムールとカズラ君で畳み掛ける。
〈魔法矢:シャドウバインド〉
〈速射〉
〈妖術:引力〉
〈妖術:拘束罠〉
〈奪力〉
俺の矢から黒く長い影が出てフラガラハに絡みつく。麻痺薬も塗ってあるので抜け出しにくいはずだ。
さらに、ムールの拘束系の妖術2つを重ね掛け。さっき歩き回ってたのは罠を設置してたのか。これでフラガラハは黒い丸に強く引かれ、地面から出た赤紫色の力に縛られた。
さらにおまけでカズラ君が死霊によってデバフをかける。
ここまですれば抜けれる奴は早々いない。
「みんな完璧よ。後は任せて。」
フェリエを残して全員が離れる。
〈魔法陣:ウォーターボール〉
〈魔法陣:強化〉
〈魔法陣:収束〉
〈魔法陣:加速〉
〈魔法陣:回転〉
〈魔法陣:爆発〉
→〈改良魔法:旋水乱槍〉
6種類の円が重なった魔法陣から水で出来た槍が飛び出す。後で聞いた話だが、フラガラハが風属性の可能性があるため風魔法は避け、森が燃えるため火魔法も避けて、地面に立っている俺たちに影響する地魔法も避けて、それ以外で一番威力の高い水魔法にしたそうです。
その槍は回転しながら動けないフラガラハに命中する。
その途端にとてつもない爆発が生じる。周りの地面や木を吹き飛ばし、少し離れた俺たちにも爆風が襲ってくる。
「やばっ!」
〈シャドウバインド〉
〈妖術:引力〉
とっさに俺とムールが飛ばされないように全員を固定する。
〈ウォータープロテクト〉
フェリエが防御魔法を発動させたお蔭で、そこまで爆風は来なかったが、台風並の強風はやってきた。
普通に死ぬかと思った。
「威力馬鹿げてるな。」
「一面平らになってしまった…。」
「ミステリーサークルはこうやって作られるんですね。」
「やったか?」
「止めろ!そのフラグ立てるの。でも流石にやっただろ。」
しかし、フラグというものは元来回収されると決まっていまして、爆発が収まるとフラガラハはほんの少しのHPを残して立っていた。
フラガラハが咆哮をあげると、腕に付いた鎌から斬撃を飛ばしてくる。
紗霧が魔刃で打ち消す。
フラガラハは飛び回っては斬撃を放ってくる。
紗霧とフェリエが魔法などで打ち消すが、このままでは魔力が尽きて終わる。しかも行動パターンが変わり、近接攻撃をしてこなくなった。さっきの連携は使えない。
フラガラハは俺たちから20mは離れて攻撃してくる。
「遠距離攻撃で仕留めるしか無いみたいね。幸い一発でも当てれば死ぬHPしか残ってないわ。」
「私の〈魔刃〉は射程5mだし速度も低いから無理ね。」
「私は遠距離は持ってないわ。〈瞬身〉は2mが限界。」
「僕も遠距離攻撃は使えないよ。」
「俺は罠を設置すれば起動は可能だ。」
「私は魔法が撃てる。撃つなら一番速い風魔法だけど撃つときに無防備になるわ。」
「俺は弓があるな。距離は結構届くぞ。」
「斬撃を防げるのが紗霧と私だから、シンに当てて貰うのが手っ取り早いんだけど。」
「無理だな。あの速さで当てられるわけがない。いや、誘導すればいけるか。」
「出来そう?」
「多分な。でもみんなの力が必要だ。」
「分かった。言ってみて。」
「ムールはその辺の石に出来るだけ目立つ罠を仕掛けてくれ。で、ヴィズがそれを思いっきり投げる。後は俺がやる。」
「なるほどな。なら爆発罠を仕掛けるわ。…はいよ。爆発タイミングは?」
「ヴィズが投げて1秒後かな。ヴィズ、『鳥かご』をやるぞ。」
「そういうことね。分かったわ。」
「フェリエと紗霧は斬撃を防いでくれ。」
「了解よ。」
「僕はどうすればいいんですか?」
「カズラ君は……見ていてくれ。」
「えぇ?!酷いです。」
すまないがカズラ君がやれることはない。
「ヴィズ。頼んだぞ。」
〈遠距離射撃〉
俺が放った矢は囮だ。フラガラハはそれを避けるように方向転換する。
それを見てもう一発放つ。同時にヴィズも石を投げる。
石はフラガラハの進行方向に満遍なく散らばり、
〈妖術:爆発罠〉
爆発する。しかしフラガラハの速度だと、その爆発すらも見てから余裕である。
しかし、その爆発を見てしまったら終わりである。
俺が放った矢は爆発とは反対側かつフラガラハの死角を抜けて、フラガラハの胸に刺さる。
威力はそれほど高くない。しかし、スキル〈根性〉で耐えた1HPを削りきるには十分の威力だった。




