1-21 脱初期装備
「俺はカズラ君のとこに装備取りに行くけどヴィズはどうする?」
「あ、私も頼んでるから一緒に行く。」
ヴィズと共にパスルのポータルに飛んで、カズラ君の店に向かう。
「あ!シンさんにヴィズさん!丁度良かったです。少し相談が有りまして。」
そう言ってカズラ君は店の中にいた一人のプレイヤーに目を向ける。
椅子に座っていたそのプレイヤーは立ち上がる。身に纏った服は和服テイストだ。
「私は紗霧だ。よろしく頼む。」
「ああ。俺はシンだ。」
「私はヴィズよ。」
「実は紗霧さんはイベントに出たいらしいんだけど、一緒に出る人を探してるらしいんだ。それで僕たちのチームに入らないかなって相談してたんだ。」
「んー。そうだな。」
レベルが合っていないと紗霧さんにも悪いしな。こうなったらPVPするか?
「シン。多分大丈夫よ。紗霧さんは刀を身に付けてるわ。刀を売ってるのはカンサルなのよ。つまりあの山岳を突破したってことよ。フェリエさんですら諦めてた、あの山岳をね。」
なる程、確かにそれなら十分な強さを持っているかもしれない。
その時、店のドアが開く。入ってきたのはフェリエさんだ。
「やっほー、シン君もヴィズちゃんも元気?」
「元気ですよ。それより何故ここに?」
「カズラ君の新作拝みにね。……ってあれ?紗霧ちゃんじゃない。」
「早打ちさん。どうも。」
「知り合いか?」
「シン君と同じく重要な情報を落としてくれるお得意さんだよ。ちなみにカンサルの最速到達者で、西の仙人とか掲示板では呼ばれてたね。」
フェリエさんに今の流れを説明する。
「良いと思うわ。戦力も申し分ないし。」
「助かる。一人でイベントに出ることにならなくて良かった。」
「そうだ。明日、チームでボス戦やるんだが、来れるか?」
「ええ。行けますよ。」
待ち合わせ等を確認したらお待ちかねの装備である。
「ジャジャーン!こちらが完成品です!」
「夜の狩人服」品質8
暗闇の中で見つからない狩人の服。〈認識吸収〉〈影同化〉 製作者:カズラ
素晴らしい出来である。色は深緑をさらに黒っぽくした色で、腰には剣を留めるベルトがあり、肩から斜めに弓を掛けるベルトも通っている。手触りが滑らかなのはケイブスパイダーの糸のお陰のようだ。
〈認識吸収〉は触れた相手や攻撃を当てた相手を認識しやすくして、自分は認識され辛くなるスキルだ。時間制限はあるが、連戦をすると徐々に認識阻害が強まっていく。
〈影同化〉は暗い場所で見えにくくなるスキルだ。
融合した「バットの牙」は思ったよりも良い効果を付けてくれたらしい。
早速着てみる。そして初期装備に合わないと着ていなかったイリュージョンリッチのドロップである「影のマント」も羽織る。「影のマント」には〈認識阻害〉がついているので、かくれんぼでは負けないくらいには見つけづらい。
「完璧ですね。」
「良いわね。似合ってるわよ。」
「シンっぽい服だね。というかシンにこの効果付けると大変なことになる気が…」
「ヴィズは貰わないのか?」
「…あ、はい!貰います!」
「ヴィズさんのも凄いですよ!はい。どうぞ。」
「戦姫の忍者服」品質7
動くことに特化した忍者装束。〈軽量化〉〈立体行動〉 製作者:カズラ
ヴィズの装備は赤色の忍者服だ。袖がなく、スカートも短いので動きやすそうだ。
〈軽量化〉は装備自体の重さが減るスキルだ。武器に付けると振りやすいが威力が出なくなるとか。
〈立体行動〉は3次元的な動きをしても服が邪魔にならないスキルだ。ヴィズにはぴったりかもしれない。
「ヴィズさんもよく似合いますね!」
「やっと忍者っぽくなったわね。」
「可愛いな。」
「…?!か、かわいい?そうかな?」
「ああ、よく似合ってる。」
「えへ、ありがとう。」
「いくらくらいになった?」
「昨日の10万Gで十分ですよ。糸もたくさんもらいましたし。素材代が無くなったので。ヴィズさんも10万Gで良いですか?」
「勿論よ。はい。」
「これで残りはムールさんで6着すべて終わりなんですけど。」
「あー、ムールは多分今日は来れないわよ。」
「フェリエさん何か知ってるんですか?」
「色々大変らしいわ。帰ってきたら聞きましょ。」
「そうですね。」
ムールは今、手が放せない状況にあるらしい。何があったのやら。




