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歪んだ童話達  作者: aqurius
Cinderella
2/2

シンデレラ:<幸せの始まり>

この世界について

1:住人達は延々と物語を繰り返している。

2:物語が終われば住人達の記憶はリセットされる。

3:この世界は現実世界の童話とリンクしている。

4:だから下手なことはするな。

シンデレラとは?


シンデレラ (英: Cinderella) は、童話の一つ。また、その主人公。仏語で『サンドリヨン(仏: Cendrillon)』。和名は『灰かぶり姫』あるいは『灰かぶり』。

グリム兄弟によるアシェンプテル (Aschenputtel) 、シャルル・ペローによるものが知られているが、より古い形態を残していると考えられている作品としてジャンバッティスタ・バジーレの『ペンタメローネ(五日物語)』に採録されたチェネレントラ (Cenerentola) が挙げられる。日本の落窪物語や、中国にも唐代の小説「葉限」などの類話があるなど、古くから広い地域に伝わる民間伝承である。日本ではペロー版が有名である。


(wiki引用)


-------------------------------------


いつからだろう。


こいつの顔を見ることに抵抗ができたのは。


いつからだろう。


世界に色がなくなったのは。


いつからだろう。


自分がただの駒に過ぎなかったと実感したのは。


「さあシンデレラ、こっちにおいで」


もう何度目だ?


「・・・はい、王子様」


王子様と幸せな結末を迎えるのは。


あたしは血に染まった王子の手を取るために、手を伸ばした


-------------------------------------

?日前 


眼前には延々と続く森。

そして背後には、色を失ったオーロラ(境界線)

黒いローブに刀を腰に下げた青年と、赤い頭巾の少女はその真ん中で立ち往生していた。

「おにーさんはどう思う?」

少女が青年に問うが、青年は言葉を発さずにただ少女を見るだけであった。

「・・・」

「そっかそっか、やっぱりおにーさんは頼りになるね!」

しかし少女は青年の言いたいことを視線で理解するかのように返事をした。

「・・・」

「ん~?そっちに国があるの?」

青年は肯定するように首を縦に振った。

「そっか~じゃ、そっちに行こっか」

自分たちの行き先をきんると、少女は青年に手を差し出す。

「おにーさん、手、手出して」

「・・・」

ゆっくりと出される青年の手を待ちきれないとばかりに、少女は強引につかんだ。

「・・・」

「れっつごー!」

嬉々として走り出す少女と青年。

その足元に()()()()()()()()には目もくれず、二人は森の中を突き進んでいく。

--------------------------------------

せっせと掃除する手を止め窓の外に映る街を眺める。

おめかしをする女、物を売ろうと仕入れをする商人、祭り好きなガキ・・・

ここから見える人間はみんな近々お城で行われる舞踏会に向けての準備で浮足立っている。

「くだらねぇ・・・」

思わずそんな言葉がこぼれた。

(そんなことしたって無駄なのに)

女がどんなにおめかしをしようが、商人がどんなに物を売ろうが、餓鬼がどれだけ祭りを楽しもうが、最終的には全部が無駄になるのに。

あたしは知っているんだ。

この祭りごと(舞踏会)の結末も、あたしの生末も・・・

あたしは大きくため息をつき、止めていた手を動かし始める。

(だる・・・)

この世界の仕組みに気が付いたのは、もう何年も前だ。

何回も何回も、何周も何周もこの世界にいる奴らは同じ行動をとる。

近所のガキは空き地で同じ遊びを繰り返し、向かいのババアは同じことを喋る。

頭がおかしいとか、言われそうなのはわかってはいるが・・・

(これじゃ、生きてんのか死んでんのかわかんねぇな)

あたしは三日三晩の舞踏会に参加して、王子に見初められ、結婚する。

物語はいつもそこで終わる。まるで、幸せな夢を見ていたかのように。

(箒で掃くのはここまでにして、雑巾がけやるか)

夢が覚めると、あたしはまた母親の死に際に対面することになる。

『シンデレラ、良い子で神様を信じているんですよ。そうすれば神様がいつもお前を守ってくれます。私は天国からお前を見下ろしてお前の近くにいますからね』

毎週、死に際にその言葉をあたしに残す。

初めは記憶があいまいだったこともあり、悲しんではいたし、信じてもいた。

でもそれも2,3周してしまえばはっきりと現実が見えてくる。

神なんていない。

清い心を持っていても何も変わらない。

何周も幸せな夢を見て学んだことだ。

あたしは永遠に、歯車のように王子様に愛される役を演じなければならない。

だったら、いっそのこと一周するたびに記憶を消してくれた方が楽だ。

(夢を夢として、見させてくんないかねぇ・・・)

「あ~ら、手が滑ったわ(棒)」

「あぁん、お姉さま(棒)」

そんな言葉とともに、俺は頭から灰を被せられ、さっきまで考えていたことを吹っ飛ばされた。

(汚ねえ・・・)

あたしが声のした方を見ると、二人の継娘が笑いをこらえながら立っていた。

「あ~ら、ごめんなさいシンデレラ。そこにいるとは思ってなかったわ!」

「でも汚いあなたには汚い恰好がお似合いね!」

これも、決められたセリフと行動だ。もう、悲しみも怒りも感じない。

「はい、お姉さま方」

あたしは機械のように返事をし、掃除を続ける。

「「・・・ッチ!」」

二人は面白くないと言わんばかりに息ピッタリに舌打ちをしその場から去っていった。

「・・・くだらねぇ」

一人残されたあたしは、床に舞った灰を箒で集め、暖炉に戻した。

掃除はいい。放っておけばそこに埃が溜まり、ある程度キレイにすれば新品同様に変わる。

この代わり映えのない世界で、唯一変化のある事だ。

もう舞踏会だとか王子様だとか、そんなものはどうでもいいから、ずっとどこかを掃除していたい。

そんな叶わぬ願望を抱きながら、料理などで出たごみをまとめる。

(これ終わったら夕飯用の薪を用意して、馬鹿どもの服洗濯して、後は・・・)

あぁ、次々とやるべきことが湧いて出る。

巻いて行動しよう。私は小走りで移動を始めた。

そう走ったのが間違いだったのか、それとも前方不注意だったのか、ゴミ捨て場に出た瞬間、誰かとぶつかってしまった。




トゥルッ




そして体制を崩し、()()()()足元にあったバナナの皮を踏んでしまう。

(なんでバナナが落ちてんだよ!?)

結果はご想像通り、持っていたゴミ袋をひっくり返し、中に入っていたものをすべて頭からかぶることになってしまった。

(へーい、最悪だ・・・)

思った以上に臭い。やっぱごみ袋って偉大だったんだな。ハッハッハ・・・

何周も生きてきた中で初めて遭遇した出来事に思わず自虐的な笑いが噴き出る。

あー、うん。もう何でもいいかな・・・

「・・・」

「・・・あ?」

感情が思考の外側まで家出をしかかったあたりで、やっと目の前に突っ立っている男に気が付いた。

「・・・」

(な、何だ・・・?)

寒いわけでもないのに足元まであるローブを着て、腰には剣らしきものを下げている。

一瞬国の兵士かと思ったが、そんなわけもない。

「・・・」

「あの~?」

顔は、よく見ると整った顔立ちだが、国の人間ではないことはハッキリとわかる顔。

「・・・」

「お、おい?」

男は何を言うわけでもなく、感情の無さそうな目で、ただあたしを凝視している。

「・・・・・・」

(ヤッベェ、人生初だわこんな出来事・・・)

いくら顔がいいからっていつまでも人の顔を凝視していいと思うなよ。てかこいつ本当に何にも喋らねえな。

「・・・」

戸惑うあたしをよそに、男は黙って見つめ続ける。

(うわ、もうどうしよ・・・う・・・?)

そこまで考え、やっと自分が感じていた違和感に気づく。

(あたし、はじめてこの体験をしたのか?・・・“はじめて”?)

意識がハッとなる。

そうだ。こんな奴に会うのも、この体験をするのも、すべてが初めてだ。

代わり映えのないサイクルの中で、はじめて・・・。

「おい、お前!!」

気が付けば、あたしはそいつの両肩をがっしりとつかみ、至近距離まで引き寄せていた。

もしかしたら、このサイクルを抜け出せるかもしれない。

本当の幸せが手に入るかもしれない。

そんな希望を持ったあたしを、神様は良しとしなかったのだろうか。

「おにーさんから離れて?」

背後から女の声が聞こえたかと思うと、今度は首筋に冷たい感触が触れた。

❍月✘日


今日の話。

前の童話から移動したというのにガブがお湯を浴びたいと言い出したのだ。

かと言って今日入ったばかりの童話のスタート地点は森の中。

とてもお湯が沸き出る場所とは思えなかった。

とりあえず街や人のいそうな目指すことになった。

途中何度かガブは「本当はお風呂に入りたいんだけどな~」とボヤいていた。

だったら近くの川で行水でも、と提案したら。

「おにーさん、私の裸みたいんだね?」

などと訳の分からないことを言い出したので無視をした。

そして、日が落ちきるころにはとある国に到着した。

裕福そうな国で、宿になりそうな家もすぐに見つかった。

町の人間はなにやら浮足立っている様子だった。

今日はもう眠い。明日にでも誰かの話を聞こう。

ガブが俺の布団に入ってきた。

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