プロローグ:少女の悲劇
この世界について
1:住人達は延々と物語を繰り返している。
2:物語が終われば住人達の記憶はリセットされる。
3:この世界は現実世界の童話とリンクしている。
4:だから下手なことはするな。
「君!そっちは危ないから戻ってきなさい!」
ぼんやりする頭の中に、そんな言葉が通り過ぎる。
おじさん、邪魔しないでください。
「フフンフ~♪フフフフフ~ン♪」
小粋な鼻歌を奏でて聞こえないふりをする。
「待てゆかり!父さんが悪かった!だから・・・!」
うるさい。お前を父親だなんて思ったことはない。
「こんな時まで父さんに迷惑かけんじゃないわよゆかり!」
こんな時まで夫を優先かよ・・・
「お父さん、お母さん、バイバイ♪」
二人のひどく青ざめた顔と、作業員さんたちの喧騒を背に
「いっちに~の・・・」
人生十六年、経験が浅いだのなんだの言われますが・・・
「ラビットジャ~ンプ!」
私、これから死にます。
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この世界は、摩訶不思議にできている。
偶然の奇跡なんて本当に起きるものなんだと、実際身に起きて実感する。
例えば、たまたま買った宝くじで一等が当たったり
例えば、実は大好きだった人と両想いで、ひょんなことで仲が進展したり
例えば、父親が実は犯罪者だったり
例えば、母親が実の親でなかったり
例えば、家族や警備の人の制止を振り切ってビルの屋上から飛び降りて、気が付いたらフィクションの世界にいたり。
「うんうん・・・まじか~」
いや、そんな偶然の奇跡があってたまるかくそ野郎
「・・・考えても仕方がないのかな~?」
頭を抱える。
いや、普通誰だって抱えるだろう。
勇気出してビルから飛び降りて、コンクリートの冷たい感触と激痛が来ないと思って目を開けたら
「あら不思議☆異世界転移しちゃったよ☆」
いやマジでふざけんな!!!
いや確かにそういう本はたくさん読んだよ!?あこがれた年頃もあったよ!?ていうか今でもちょっとあこがれてたよ!?だからってこのタイミングで引き起こす奇跡じゃないでしょ!?だったらもう少しいい奇跡とかなかったでしょうか神様コノヤロー!転移させるんだったらチートよこせコノヤロー!
「・・・そうだ。<ステータス>!」
しかし何も起こらなかった。
・・・いや、もしかしたらッて思うじゃん?
うん・・・死ぬほど恥ずかしいわ。本当に死のうと思ってたけど死ぬほど恥ずかしいわ。ヘタしたらコンクリートの地面に落ちるよりもダメージあるわコレ。
「もう二度とやらない・・・んぁ?」
そして、やっと軽い絶望と羞恥に苛まれた私のそばに落ちている本に気が付いた。
「なにこれ?」
私はその本を拾い上げ、タイトルを読もうとする。
あ、よかった。辛うじて読める英語だこれ。
「なになに?・・赤ずきん」
この後、私はこの奇跡が最悪なものだと、嫌でも知ることになる。
初めましてaquriusともうします。
駄文ではありますが、読んでいただき感謝します。
今回はプロローグということでもあり、物語の要素もどこにもありませんが気長に更新を待ってくれればうれしいです。