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7話:岡山の魚漁2

「袋待網」は、あまりの潮の流れの速さに泳いでも前に進まず、後ずさりする魚を待ち受けて捕獲する漁法。干満の区切りの潮止まり「一時的に潮が止まった状態」で魚を待ち、獲る漁法である。


 そして、潮の向きが変わるタイミングで網を大きく反転させて潮を受け、さらに次の潮止まりまで待つ。水揚げは、その日の一番ゆるい潮時に帰港して行い、またすぐに漁場に帰って漁を続行。


 その後、夏、6月から9月、穴子、「梅雨の水を飲んで大きくなる」と言われる。梅雨明け真近になると、浜に揚がってくるアナゴの量が一年で最も多くなり、最もおいしい季節を迎える。


 時期を同じくしてウナギもハモも旬を迎え、魚屋さんの店先によく似た「ニョロニョロ体型」の三人衆が並ぶ。姿はよく似ていても、それぞれの味や味わい方は彼らの特徴をよく生かした工夫がされている。


 昔から、その地方の人々のこだわりと自慢があふれる魚たち。アナゴは、ハモやウナギと同じように、日本から遠く離れた南の海の深海まで遠い旅をして産卵する。


 生まれた稚魚は春先に、独特の透明な柳の葉っぱのような体で群れになって瀬戸内に帰って来て、イカナゴやイワシのシラス漁で沢山獲られてしまう。岡山では春の風物詩として稚魚を「べらた」と呼んで生で酢味噌をかけて食べる。


 初夏から真夏にかけてアナゴの水揚げが増えるとともに浜の直売所や街の魚屋さんの店先で開きながら炭火で「焼きアナゴ」を焼き始める。タレを焦がしながら焼くその香りは、昔も今も変わらず懐かしく最高だ。


 岡山のアナゴは肉厚だけど、味わいはあっさりと言われる。その他、同じ時期、 岡山全域で漁獲されるスズキ。一年を通して水揚げのある身近な魚だが、夏の風物詩としての実力は一流。


 地元では、夏バネ「スズキ」の洗いの販売促進に力を入れる。スズキのそぎ切りにした切り身を桶の氷水にしっかりさらし、芯まで冷えが回ると身はちぢみ、肌は白く霜降りとなってまるですりガラスの細工物のよう。


 薄口しょうゆに青唐辛子の辛いやつをほんの少し入れ、身の端をちょっと浸して口に運ぶ。ヒヤッと冷たさの後に浅い旨みとほのかな甘み。さらっとした舌触りと生きた身の弾力が程良く感じ切れの良いかみごたえ。


 活きたスズキを板場でしめて、ぶりぶりする身を即座に切り下したものでなければ絶対にできない技である。岡山で「かつお」といえば、「まながつお」、岡山が誇る高級魚。


 なんと言っても、刺身が最高。岡山の真夏の御造りになくてはならない存在だ。6月、ふぐが去り、さわらが通り過ぎ、真いかも落ちてしまった頃、「流瀬のかつお『まながつお』がやってくる。


 梅雨のうっとおしい季節が始まる頃には、漁師たちは「さわら」の網を「かつお」網に積み替え、「流瀬のかつお」漁の準備にかかる。漁期はこれから、真夏の盛りである。


 ぎらぎら照り付ける陽を浴びて全長800メートルもある刺し網を「かつお」の通り道に入れて行く。しばらく潮の流れに任せて、網と一緒に流れ、頃合いをみながら揚げ始める。


 そのうち、揚がる網からキラキラと「かつお」のまばゆい光が見えてくる。「かつお」の鱗「うろこ」はとても剥がれやすい。岡山の真夏の御造りになくてはならない存在だ。


 鮮度落ちがとても早いので、岡山の地元ならではの一品。その身はくせがなくとても滑らかな食感で、脂肪も少なくあっさりとした味。刺身に加えて、照り焼き、味噌漬け、あらの煮付けなどどれも絶品。


 マナガツオの骨フライ、照り焼き、マナガツオの軟骨ときゅうりの酢のもの、マナガツオのあぶりなど絶品である。その後、秋、9月になると、ままかり「さっぱ」、さっぱり漬けた酢漬けは、あまりの美味さに食べる手が止まらない。


 ままかりの名前の由来は、「あまりおいしいので隣に、ご飯『まんま』を借りに行ってしまう」と言う話がとっても説得力がある。岡山名物「ママカリの酢漬け」は、その名前の由来をキャッチフレーズとして、お土産として駅や観光地のお土産店で売られてきた。


 その他、秋には、よしえび「おおぞうえび」このエビは、立派な20センチ程の大きさに成長する。沿岸域で獲れる15センチ以上のものは「おおぞうえび」と呼んでいる。岡山の分限者「お金持ち」のステータスは、名物「祭り寿司」のネタに、どれだけ立派な、このえびをどれだけたくさん使うかで決まる。秋の祭りに欠かせない「祭り寿司」


 その家の「祭り寿司」の豪華さを決めるのが、よしえび。あそこは、さすがに分限者じゃ。すしのおおぞう「よしえび」の立派なことなどと地元では言われる。そのため豪華な「祭り寿司」を地元では、「分限者『お金持ち』寿司」とも呼ぶ。秋も深まり10月を迎える頃。岡山では、里ごとに、祭囃子「まつりばやし」が聞こえ始めると、いよいよ、わたりがにの季節。 「がねがねーと『蟹がないと』祭りが始まらん」

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