6話:海水浴と岡山の魚漁の1年
そして、夏休み、海水浴場へ行きたいと言うので、バスに乗って、出かけた。20分ほどで到着し、早速、健一と健二が、海水パンツに着替えて、泳ぎ出すと、プールよりも体か浮く感じがして、泳ぎやすいと言った。
昼は、持参した、おにぎりと焼き魚を食べた。やがて、15時になり、帰ろうと言っても、健一も健二も、もう少し泳ぎたいというので、父が、2人に16時までだと言った。
16時になると、帰ろうと言うと、わかったと言い、バスに乗って、座席に座ると、コックリをはじめて、寝てしまったが、その顔が可愛いので、数枚、寝顔の写真を撮った。
長女の姫子も水着に着替えて、母が、ダッコして海水に入ると最初、冷たがっていたが慣れると楽しそうに、はしゃいでいた。うちでもケーキ買ってきて、クリスマス会をやろうと健一が言うと健二が、ケーキと鶏の唐揚げも食いたいと言った。
そこで、近くのスーパーで、12月24日、昼間に、良江さんが健一と健二の要望に答えて、多くの鶏の唐揚げとケーキを買って帰ってきた。学校から帰ってそれを見た健一と健二が、旨そうと笑った。
その晩19時過ぎ、父が帰ってきて風呂に入り出るとクリスマスケーキと鶏の唐揚げが用意してあった。そしてロウソクに火をつけ電気を消して、火をつけると、格好いいと健一が言った。
息で吹き消しても良いよと母が言うと、賢一と賢二が一気に消した。それを見ていた姫子が、大きな声で笑った。ケーキを6つに分けて、皿に置くと、健一は、一気に食べ、健二は、少しずつ味わって食べていた。
父は、唐揚げと御飯を食べていて、ケーキは、入らないと言うと、男の子が、俺食べるというので半分に分けて、渡した。姫子も、ゆっくりと笑顔で、美味しそうに食べていた。ニンニクの香りが強い唐揚げも男の子の大好物だった。
多いと思っいたが、ぺろっと完食した。やがて1988年を迎えた。この年、漁の安全を祈願しに小山田家では、少し離れた祇園神社に初詣でに行った。この周辺では、冬にはチヌ「クロダイ」漁が盛んだが、今年は大きいのが少なかった。
その代わり、イイダコ、マダコ、シャコが良く取れて、年の初めとしては、まずまずの滑り出しだった。岡山のさわら漁師は使命感とプライドを持って、春の便りの春告げ魚「朝干『あさび』のさわら」の漁に精を出し始める。
「朝干『あさび』のさわら」を届けるためにさわら漁に励む」
「そりゃあ朝干『あさび』のさわらが一番じゃ」
「さっきまで泳いどったのがぐしゃっと網に突き刺ささる」
「気が付きゃ夜明けの市場に並べられ、売られて買われて刺身にされる」
「その後、地元の親父達が、こぞって買いおって見てみい、あそこの家でも食よおるがな」
朝干『あさび』とは。夜明け干潮を迎える頃の事。岡山では朝が干底になるのは大潮の時。大潮には、鳴門や豊後水道から強い潮が流れ込み、それに乗って「さわら」が、たくさん入りこんでくる。「さわら」も活発に泳ぎ、網にかかる量も多くなる。
夜明け前、干潮の潮止まりとなるので網を揚げると、すぐに港に水揚げし、競りに間に合うタイミングで中央卸売市場に出荷。「さわら」は、身の柔らかい魚。刺身での消費が、メインの岡山では、その身の質の良し悪しが値段に響く。
漁師や市場の人々のさわらの扱いは特別で、船の上で網に刺さったさわらを網からはずすときも、体を握って引き抜くようなことは絶対にない。網から外した「さわら」は、締めて血抜きをする。
その後、頭から尻尾まで延髄に針金を通し神経抜く。
「延髄を破壊することで魚体の自己消化を止める」その後、海水氷に漬け込む。
「わしらは、『さわら』の扱いを見たら、そいつが素人かどうかすぐわかる」
「尻尾をもってぶら下げとるような奴は素人じゃ、さわらは両手で抱いてやれ」
岡山の「さわら」の食文化には古い歴史があり、かつて江戸時代初期に使われていた岡山城の台所跡で発掘調査を行った折、ゴミ捨て場跡からカキやハマグリなどの貝殻や瀬戸の小魚とともに、さわらの骨がたくさん出てきたそうだ。
いかなごのふるせ「親」に始まり、しんこ「しらす」。そろそろ、おおぶく「とらふぐ」のはしりが入り始める。待って焦がれた、ふぐの季節。岡山では3月下旬から5月下旬まで漁獲される、雄の白子は大きく絶品。
この時期にしか手に入らない貴重な味。1から3kgに育った「白子持ち」の雄のトラフグが、岡山の春の魚の代表。やがて、3月になり、暖かくなると、おおぶく「下津井のとらふく」の漁が始まる。
春の潮に乗っていろいろな魚が群れになって、島のように目の前の海に押し寄せ、浜は日に日に活気づく。玉野市の沖から水島諸島のあたりまでが漁場で、児島・下津井の漁協に水揚げされる。
漁法は、速い潮流の中へ間口を開けた大きな網をこいのぼりの要領で仕掛ける方式。潮をさかのぼるように泳いでいる魚を待ち受ける「袋待網『バッシャ網』」と「底曳網」で漁獲する。