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その6 「お客様、当館での雄叫び等は近隣のご迷惑になりますので」 「いやだってまぢありえねーんだってッ! これ見てみッ!」 「……黙れ、客野郎」 「――ひぃッ!」

「そうですっ! イオは、まほうゆうしゃになったなのですっ!」

 にぱッ、と口元だけで笑う少女イオ。……いやだから、獣耳フードで顔半分しか見えないんだってば。たぶんフードの下ではベストなスマイルなのだろう。いや、どうでもいい。そんなことよりも。

 詩人はもう一度、その紙面の最後に記された一文を見た。


 『 ――規約に同意して、“魔法勇者”になることを、ここに誓います。 イオン 』


「へ~、お前って本当は、イオンって名前だったのか……」

「はいですっ! まほうゆうしゃイオン、なのですっ!」

「ふ~んへ~ぇほ~ぉ……」

 いやいや、だからそうじゃないって。そんなことよりも!

「おい、その、魔法勇者って、なんだ?」

「えっとぉ、ここに、りよーきやく、が、あるですよっ?」

 と、さらにイオはコートの小さなぽっけから、紙束を取り出した。

「なにその収納技術、どうなってんのッ? てか……、利用規約となッ?」

 しじんは きやくを よんだ!


『は・じ・め・に~ぃ。この規約はー、魔法勇者がーぁ、勇者専用である光魔法とーぅ、およびその魔力を利用したーぁ、勇者専用特技等(※以下、勇専)を使用するためのーぉ、条件を定めるものでぇ~す!』


「なんだこの字面はッ! 舐めてンのかッ?」

「イオには、むずかしいかんじがおおくて、よくわかりません、ですっ。てへぺろっ、なのですっ!」


『勇専利用を希望する場合ーぃ、本規約を、よ~~~くお読みになりぃ、本規約の全てに同意の上、唱えちゃってくださ~い。…………え、なにをだって? 呪文だよ、じゅ・も・ん、決まってンぢゃ~んっ! ほらほらさぁさぁ唱えてごらんよ~、恥ずかし気もなくぅ……ぷぷっ、大声で~ぇ?』


「うおおおおッ! イライラするぅ~ッ!」

「ああっ、しじんさんの、おでこがっ! ぴゅあな、けっかん、よなかに、はじけとびそうに、うきあがっているーっ、ですよっ?」


『ち・な・み・に~ぃ。本規約の全てに同意されない場合、魔力の補充、および利用することは、できませ~ん。はいはーい、残念でしたぁ! てぺぺろ!』


「……………………おい、イオちゃんよぉ」

「なんですっ、しじんさん?」

「お前、これ見て真似しただろ?」

「はいですっ! てへぺろっ☆」

「止せヤメロそのへんにしとけ、それは万能じゃないッ!」


『尚、魔法勇者が未成年の場合、えーっと……なんだっけなぁ……しんけんしゃとう……ほうていだいりに……ん? ……っだよ、コレすっげぇ難しいじゃん。まぁいいや、よく聴けよ? あのな、簡単に言うとな、周りにいる理解ありそうな大人、もしくはなんつーの、こう…………暇そうにしてる大きなオトモダチ? の、同意を得なければ、勇専保有することが出来ねぇんだわ。つーこって、――そこんとこ夜露死苦ぅッ!』


「ぬぁんじゃこりゃあああーッ!」

 しじんのさけびが こだまする!

「しじんさん、しじんさんっ! シーっです、シーっ。おおごえ、きんじょめいわく、なのですよっ?」

「いやいやいやいや無理だろ無理ムリ絶対これは有り得ねぇわ。つぅか、真面目に説明する気ねぇだろ、これぇぇぇえええーッ!」

「イオには、ちょっとムズくって……まったく、よめませんでした、てへぺろ、ですっ」

「だから、それヤメロッての。あと、ちょっとなのか、全くなのか、はっきりしろいッ!」

「ほぇぇ、おこられたのですーぅ……なんか~ぁ、ごめんなさーい、なのです~ぅ……」

「あッ、いやすまん、イオは何も悪くない。……つぅか、大丈夫だ、俺にも、よぉ分からん」

 ちなみに、それ以降も、『第1条 定義』などと続き、事細かに魔法勇者についての規約とやらが、何枚も何枚も綴られている……らしいのだが、やはりどれも恐ろしくふざけた文体なので、理解しようにも本能からの自己防衛なのか、頭脳がそれを拒み吐き気すら込み上げて来る。

 つまり、もう見るに堪えなかった。

「なんなんだよこりゃぁよぉ、これ書いたの、どこのどいつだぁ? つれて来いや!」

「さあ? おそらく、せいれいさん、なのではっ?」

「ロクなもんじゃねぇよ、そいつぁよぉ…………で、イオは、なっちゃったのか? その、魔法勇者とやらに?」

「なっちゃいました、ですーっ! どーんっ!」

「どーん、ぢゃねーよ、はぁ……」

 と、詩人は嘆息。

「でもなんかぁ……」

「ん、なんだ、何か理由でもあんのかよ、イオ?」

「すごぉくカッコいいからって、みんなのあこがれなんだよぉ、ちょーたのしいよぉ、ぜったいハマるよ~ぉって」

 イオの ひとみが あやしくひかる!

「それなんかダメなやつっぽいからぁッ! ダメ、ぜったいッ!」

 しじんのさけびが こだまする!


 ……こいつぁ、本気でヤバい。はやくなんとかしないと。……いや、まぢで。


 つづく!

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