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その4 「くらうがいいですっ、そして、おどるがいいですよっ、……あいと、じょうねつの、りびどーですぅぅぅっ!」 「……お前、難しい言葉、良く知ってンのな」

「いやあああっ、なのですっ! しじんさん、しじんさんっ! どうして、どぉしてしんぢゃったの、ですっ?」

「おいコラちょい待てぃ、勝手に殺すな。まだ死んどらん……ッ!」

 しじんは おもった!

 ……ったく、初登場早々にして、くたばってたまるかッ、どこぞの蟹刑事か、俺はッ!

「ぐぎぃぃ……、おぉ痛ぇな、ちきしょう……」

 そして、全身の痛みに耐えつつも片膝を着いて顔を上げた詩人は、前方へと視線を戻した。

 鳥獣型の怪物どもが、低空飛行で旋回しながら、こちらへの間合いを徐々に詰めてくる。再び襲い掛かるタイミングでも計っているのだろうか。

 どうやら悠長にしてはいられないようだ。そう思い、詩人が立ち上がろうとした、そのとき、

「……かくなるうえは……」

 今まで詩人の足にしがみ付き泣き喚いていた少女――、

「このイオが、たたかうっ、ですっ!」

 イオが、そう叫んだ。

「な……ッ? よせ、イオッ! 何考えてんだ、お前ッ、やめろっての……ッ!」

 唖然とする詩人の眼前へ飛び出し、凛と立ちはだかる、イオ。

「しじんさんっ、かたきは、とるですっ! やすらかに、おねむりください、ですっ!」

「いやだから、俺ぁ死んでないからね、まだ。……ってか、そんな予定、ないからねッ?」

「……へんじがない、ただのしかばねのようだ、ですっ……」

「ちょいちょいちょいちょーいッ! めっちゃ返事してるぢゃーんッ、俺ぇぇぇッ!」

 え、なんで無視ッ? 無視なのッ? 近ごろの幼女、怖ぁああッ!

 と、そんな詩人をよそにしてイオは、小さな小さなその両手を、目一杯、大きく大きく広げてかざし、

「かいぶつさんっ、くらうがいい、ですっ、しゃくねつのごうかを、ですっ! イオのじょうねつけいじゅもん……」

「じゅ、呪文、だと……ぅッ?」

 まさか、こんな子供が、魔法使い……?

 しかし、詩人がそう思ったその瞬間、隙をついたように、怪物どもが一斉に飛び掛かって来た!

 詩人はその小さな背に手を伸ばすが…………、ダメだッ、間に合わないッ!

「ばッ、バカタレぇッ! 避けろッ、イオ! あぶねーぇッ!」

 イオの こうげき!

 イオは じゅもんを となえた!


「――――ガ〇メキラっ!」


「ガタ〇キラ、とな――――ッ?」

 あたりに ばくはつが まきおこる!

 イオは モンスターAを たおした!

 イオは モンスターBを たおした!

 それは閃光、そして暴発。イオが放った光の球が、怪物の身体に触れた途端に爆発を起こし、後の何匹をも巻き込んで、燃え上がった。そして怪物だったものは黒い粒子になって散り、消え去った。

「なっ、なっ、なっ、なっ……」

 しじんは おもった!

 ……なんちゅー恐ろしいガキなんだッ、コイツぁッ! まだ子供なのに、この魔力……、ヤバいよ、コイツぁ、そーとーヤバいぜよ、ゴクリンコッ!(※固唾を飲む擬音) 雑魚とは言え、あのバケモノどもを、ひとりで全部やっつけちまうなんてッ! …………ん、全部? ツェー、デー、エー…………あれあれ?

「やっ……、やったあああっ、です~っ! イオ、やりましたですよ~っ! ……てんごくのしじんさんっ!」

「てめッ、まだ言うかッ! だから死んでねぇっつーのッ!」 

 ぴょんぴょん跳ね回って喜ぶ、ケモ耳フード姿のその少女に、詩人は嘆息した。

「あのなぁ、イオちゃんよぉ。……そもそも、お前さんがなぁ、俺の足に引っついて来なけりゃぁこんなことに…………ん?」

 すると。

 子供のはずのイオの目線が、成人男性(住所不定無職)である詩人(自称)の目線と、何故か同じ高さで……、

「はにゃ……っ? イオ、なんで、とんでるっ、ですっ? えっ、ちょっ、ちょっとまつですっ、なんか、どんどん、しじんさんが、とおくなるですよっ?」

 イオは、厨二……、もとい、宙に浮かんで、ふわふわとそのまま上昇し始めていた。

「なにこれ、ですっ? しじんさんっ、これ、どゆことー、なのですっ?」 

「お~お~やっぱりな~。数が足りねぇと思ったぜ~」

 と、悠然と見上げている、詩人さん。

「……えっ?」

 恐る恐る、イオが振り向く、と、

「んぎゃああああっ! おろしてっ、おろしてくださぁいっ!」

 なんと!

 モンスターがイオを持ち上げていく!

 ……おそらく、爆発の中を生き残っていたのだろう、鳥獣怪物の最後の一匹が、背後からその鉤爪でイオのコートを器用に掴んで引っ張り、大きな翼をはためかせ、文字通り浮かび上がっていたのだ!

「このままイオは、とりになるですかっ? いまとりになって~、とりになって~、イオはとりになって~、……おおぞらをとぶ、ですかっ?」

「意外と余裕なんだな、お前……」

「ああっ、でも。このままいけばっ! てんごくのしじんさんに、あえるかもっ、ですねっ!」

「それまだ言うのッ?」


 つづく!

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