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その3 「ほほぉ、あれが、うわさの、じぇっとすとりーむあたっく、というヤツなのですっ?」 「いや、知らんがな。なにも聞こえん。なにも答えたくないぞ、俺は」

「まったく、よのなかには、じゅうごさいのたんじょうびにたびだったという、ゆうかんなおひめさまもいるらしいのにっ!」

「あーぁはいはいすいませんねぇ、ご覧のとおり俺ぁ、世間様にはウトくてねぇ……って、んなことどーでもいいよ。結局お前は一体何者なんだよッ! てか、はやく家に帰れよッ!」

 大人げも無く怒鳴る詩人。

 が、

「イヤですっ!」

 ――きっぱり。

「断固拒否となッ?」

[“イオ”には、しめいが、あるですよっ、しじんさんっ!」

「“イオ”……? って、それが、お前さんの名前なのか?」

 どうやら、“イオ”というのが、そのコの名前らしかった。……なんだろう、不思議な名前だ。

 イオは胸を張って元気よく答えた。

「はいっ、なのですっ、しじんさん」

 でも、獣耳フードで覆われて顔半分が見えなくて、不気味だった。

 詩人は厭きれた様に、

「ったく、使命っつったってなぁ、子供がこんな時間にうろつくもんじゃねぇぞ?」

 辺りはすでに、薄暗い。もう街の喧騒も届かない。ともすれば、こんな街はずれと言えど油断は禁物だ。何故ならば――、

「んぎゃあああっ! あれはっ、あれはなんですっ!」

 イオは悲鳴と共に、詩人にしがみ付いた。

「ほら見ろ、言わんこっちゃねぇッ!」

 詩人は立ち上がり、剣を取った。


 なんと!

 モンスターが あらわれた!


 周囲の闇に紛れても際立つ、その全身の禍々しい黒。

 大きな翼と鋭い鉤爪を持った、鬼のような顔面の鳥獣型モンスター。さらにその全長は、人間の子供程の大きさはある。それが三匹も、二人の前にいきなり現れたのだった。

 奇声や唸り声を上げつつ、不快な羽音をはためかせたその姿に、イオが泣きわめく。

「キモイきもいキモイきもちワルイですぅぅぅ~~~っ!」

「ああもぉッ、分かったから、ちょっと離れてろってのッ。くっ付いてると、逆に危ねぇってばッ!」

 詩人はイオの腕を優しく振りほどいた。

 これでも日雇い傭兵を買って出た程の詩人だ。何も飾りで“それ”をぶら下げていたのではない。このご時世、多少の心得は、もちろん、ある。

 そして――、剣を構えた!

「ふふんッ、雑魚がいくら数で来ようと、所詮はザコだぜ? おら来いよッ、俺が相手をしてやるぜッ!」

 詩人は啖呵を切った。言葉など通じるワケがなさそうな相手に。

 ぎゅぐるるるぅ……、と不気味に唸り声を上げていた怪物たちだが、詩人の言葉を受けてなのか、一斉に舞い上がりこちらへと突っ込んで来る!

 モンスターの こうげき!

 と、


「きゃあああこわいこあいなにあれこわいしんじらんないですぅぅぅ~~~っ!」


 しじんは あしをとられた!

「ちょ……、おまッ、バカ何してンだこら、はッ、放せ……ッ!」

 しかし!

 しじんは うごけない!

「うげッ! ぐわッ! ぎゃぁッ! ………………ごっふぅッ!」

 ――ばったりッ!

 と、怪物三匹による連携の突進攻撃を、まともに喰らって(それぞれご丁寧に、腹、背中、顔面の三か所へ)そして膝から地面に崩れ落ち、うずくまる、詩人さん。しかして、その足首には、幼女の両腕が……ッ!


「 てめえこら なにしやがんだ このやろう ……ッ!」


「はぅぅ……、このじょうきょうでも、いっくよむとは、さすがは、しじんさん、なのですっ!」

 しじんは ぶきみに わらいだす!

「へ……、へへへ……ッ、『啖呵を切った!』ならぬ、『短歌を詠んだ!』 ってヤツだぜ、詩人だけに、な……ぐふぅ……ッ!」

 だがしかし それでは ただの川柳だ!


 つづく!

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