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その29 「どっかの地域じゃ死神は黒い子供の姿だって言うしなぁ、ははっ」 しかし! どこか本気で笑えない詩人さんだ!

「うろおおおん、さむいよぉ、なんか関節がズキズキするよおおおぉ……」

「もぉ、黙って寝てなよぉ。……はい、お薬」

「あい、あんがとぉ」


 シスター見習いの少女から受け取った薬を、噛み砕いて飲み干せば、いくらか落ち着く気がした詩人だ。

 ベッドの上で考える。もはや見慣れた天井だ。

 ついにイオの居場所をつきとめた詩人。

 長かった。

 ここまで、なんやかんやで、やたらと長かった。

「あーぁ、あたしも魔法とか使えたら、アンタの身体治してあげられるンだけどね。ごめんね」

 見習い少女は独り言のようにつぶやいた。

 そんなことない。なにも謝ることはない。

「あたしの友達にね、色んな魔法が使える、すごいヤツいるんだけどさ」

 魔法なんて使えるほうが珍しいんだ。詩人は胸中で返した。

「あたしも修行とかしたら魔法出来たりするのかな?」 

 その前にシスター修行中だったっけ、あたし。と、少女が笑った。


 それにしても、イオのヤツめ!

 今さら山籠もりだぁ? その前に覚えなきゃならんこと、腐るほどあるだろぉが! 常識とか教養とか道徳とか!

「もう何日かすればさ、戻ってくると思うよ」

 イオ――か。

 詩人がとある町で出会った幼女だ。この旅はそこから始まった。

 その正体は精霊に選ばれし魔法勇者イオン。彼女には大きな使命があった。しかし詩人はそれに耐えきれず、別れを選んだ。

 その後、意外な場所で明かされた彼女の生い立ち。何者かが今もイオの命を狙っている。

 詩人はジッとしていられなかった。

 執念。

 出会いと別れを繰り返し、詩人は駆け抜けていった。

「なぁ」

 不意に詩人は声を上げた。

「なに? 大人しく寝てなってば」

「煙草、喫いたいンだけど、持ってないかい?」

「んなッ? あるワケないでしょ! てか、病人が何言ってんの!」 

「いーじゃんかよー! 吸わせてくれよー! へへへぇ、一本……、いっぽんだけでいいからよぉ、これで最後にするからさぁ、なっ、なっ、頼むよぉ~!」

「ばか! それにここ、禁煙だからぁ!」

「ちっ」

「舌打ちされたーぁ! あたしショーック!」

「騒がしい娘さんだぜ、やれやれ」

「アンタが言うなしッ!」


 ところで、あの小僧は、どこだろう? と、詩人は首を傾け――、

「…………」

 眠たげな目をした黒髪の不思議な少年がそこにいた。

「うっわ、ビックリだ! てか、ずっとそこに居たンかーい?」

 少年は詩人の寝ているベッドの横で立ち尽くし微動だにしない。それは不思議というより不気味な光景だ。

「なんかさ、何にも教えてくれないんだよね、そのコ。どこから来たの? どうしてあの怖い人たちと一緒にいたの? って訊いても、さ」

 シスター見習い少女の言葉に詩人は、ピンと来た。

「ああ。そりゃ、たぶん、訊き方がダメなんだわ」

「は? どゆこと?」

「まぁ、見てろって」

「ちょっとぉ、起きちゃダメだよ」

 詩人は身体を起こし少年と向き合った。

「よぉ、さっきはどぉも。悪かったな、思い切り投げちまって」

「…………」

「お前さん、強ぇなぁ。でも戦いってのは剣だけじゃないぜ?」

「…………」

 しかし!

 しょうねんは なにも こたえない!

「ね、なにも言わないでしょ。ただそうやって黙ったまんま、ずぅ~っと、なんつーの、こう、“なかまになりたそうに?” アンタのこと、見てるだけなんだよねぇ」

 そこでふと、詩人はある物を取り出し、少年に見せた。

「なぁ、これ、お前さんだろ?」

 手のひらサイズで板状の不思議な金属物質、その画面の中に写る者。

「…………」

 こくり。

 何も言わなかったが、今はっきりと頷いた黒髪の少年。

「あ、やっと反応した! てか、なにコレー? 変なのー。……でも、確かにこのコっぽいねぇ」

 見習い少女に取り上げられてしまったが、そこには確かに少年が写っていたのだ。

「お前さんを捜してるヤツがいる。それは、そいつから預かったもんなんだ。黒服の優男、やたら毒舌なヤツさ。お前さん、知ってるンだろ?」

「…………」

 少年は無言で首を横に振った。

「じゃぁ、お前さんは、やっぱりあの荒くれ共の仲間なのか?」

「…………」

 ぶんぶん。

 またもや無言で首を横に振る少年。

「え、なにこのコ、ますます意味分かんないんだけど」

 と、

「すまない、コイツとふたりきりにしてくれないか?」

 詩人は困惑するシスター見習いの少女に退室を促した。

「うん、いいけど……。アンタ、ちゃんと寝てなくちゃダメだかんね?」

「お前さん、優しいのな~」

「もぉ、茶化すなッ! ばか!」

 少女が去って、詩人と少年だけが残った。

 気が付けば日は暮れ始め、ながいながい影が狭い部屋の端まで伸びていた。


 つづく!

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