表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/34

その26 「人は、それぞれなのです。み~んな違って、み~んな良い」 「アンタもか! アンタもボケるンかッ? ――そんなの絶対おかしいぜッ!」

 ややあって、婦人が言った。

「ここは人々が神の教えを学ぶ場所。元気なのは結構ですが、あなた方の行為を、ご自身でよくお考えなさい」

「はい、すみません」

「ごめんなさい」

 詩人と、自称・シスター見習いの少女は、ふたり仲良く並んで正座をしていた。廊下で。

「でもぉ、いんちょーぉ」

 見習い少女に呼ばれ、婦人が振り返った。

「はい、なんでしょう?」

「なんかぁ、コイツぅ露出狂なんですけどぉ、こんな特殊な趣味をお持ちの方をぉ、このまま置いといていいんですか~ぁ?」

 少女がとんがり口調で告げ口しおった。――まだ引っ張りやがるか、このやろう。どうでもいいけど、素足が床に触れていて、とても冷たいぜ。

 と、

「なにをおっしゃいますか。このお方は魔物に襲われている私を助けてくださったのですよ?」

 そうなのだ。このご婦人、先に詩人が助けた人物である。まさかここの院長だったとは。

「勇敢にも、たったひとりで、大勢の魔物たちに立ち向かう姿。修道見習いのあなたにも、お見せしたかったわ」

 院長が微笑んだ。その眼差しに照れ笑いで返す詩人。

「ふふん、よせやい」

「なに赤くなってんのさ、キモ~ぉい」

 と、見習い少女。

「それは、強く正しき者にしか出来ない行いです。……そう、例え、特殊なご趣味をお持ちだとしても!」

 いんちょーの ひとみが

 あやしくひかる!

「ちょいちょいちょーい! アンタそれでも院長かーいッ?」

 やはりこの世界は間違っている――、詩人さんは思った!

「人の嗜好にあれこれ言うのは野暮ってものですわ」

「はーい、いんちょー、わかりましたー。またひとつ賢くなる、あたし」

「いや納得しちゃダメだかんね! てか、そんな趣味ないからね、俺ぁ!」

 ダメだコイツら。なにも聴いちゃいねぇ。詩人さんは嘆いた!

「ですが強要してはいけませんねぇ。そういうのは、お互いの趣味が合うもの同士でないと」

 院長の言葉にシスター少女は、

「……ぽっ」

「なぜ頬を赤らめるぅッ!?」

 詩人は少女に激しくツッコんだ!



「アンタのせいで、あたしまで怒られちゃったぢゃん」

「いいや、自業自得だと思うね、俺は」

 ふたりを残し、院長は行ってしまった。

 いけない。訊きたいことが山ほどあったのだ。こうしてはいられない――、具体的には、仲良く廊下で正座なんぞをしている場合ではない。

 早速、詩人は立ち上がっ――、

「ぬおぉぉぉ……ッ!」

 しかし! 詩人は足がシビレて動けない!

「あはは。ばっかじゃないのー。さて、あたし、お仕事に戻らにゃぁぁぁ……ッ!」

 やった! 少女もシビレて動けない!

「あ、アンタ……、なかなかやるじゃない……!」

「お、お前さん……、バカだろ?」

 ふたりはシビレて動けない!



 さて。

 ここが街はずれの寺院か。

 礼拝堂らしき広間を中心に修道者たちの宿舎が囲む。詩人が寝かされていた部屋もそのひとつだった。

「アンタ、動いてへーきなの?」

 詩人が散策を始めると、なぜかシスター見習いの少女が付いて来た。お仕事あるんじゃなかったのか?

「いやだって、ほっとけないでしょ。アンタ、すごい熱だったンだよ」

 詩人はとくに背から腰にかけての痛みが酷かった。かの地から脱出の際に負った傷なのだろう。脂汗が滲む。

「安静にしてなきゃダメだよ?」

 上目遣いでこちらを見つめてくる、自称・シスター見習いの少女。ベリーショートが恥ずかしいのか、頭には三角巾。そこからはみ出た、きんいろの髪。どこか気品があるように詩人は思えた。

「ところでお前さん、さっき、“こないだ変な子供を拾った”とか、言ってなかったか?」

「え、アンタまさか、露出癖に加えて、ロリ……」

 やった!

 みならいしょうじょは ひいている!

「いや、そーゆーのはもういいから」

 ったく、話が進まないだろぉ。……詩人は嘆息し続ける。

「あのな、人を捜してるンだよ」

「へぇ。それで、こんなとこまで来たの?」

「まぁ。そんな、ところさ。……三に――いや、ふたりだ」

「ふたり?」

「ああ。ひとりは、黒髪で眠たげな目をした、お前さんくらいの歳の男の子」

「ふむふむ」

「もうひとりは、なんか、白い服着た無駄に元気なチビっ子で――」

 と、詩人が説明をしていたその時、


「ごちゃごちゃぬかしてねぇで、さっさとしろっつってんだろぉ!!」


 汚い怒鳴り声が響いた。

 詩人と少女は急いだ。玄関の方だ。

「声を荒げるのはおやめなさい。神はすべてを見ているのですよ?」

「さっきからワケわかんねぇこと言ってんじゃねぇ。いいか? ここにいる孤児共全員を――、差し出してもらおうか!」

 そこでは、見るからに荒くれの男たちが、院長と対峙していた。


 つづく!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ