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その16 邂逅(かいこう)3

 少年。

 そう、そこにいたのは、小さな男の子だったのだ。

 ふと、詩人は思い出す。

 自分が捜していたのもまた、同じく少年。

 しかし彼がそれとは別人であることは、容姿からして一目瞭然なのだが。

 それでも詩人はもう一度その少年を見定めた。

 大きな布を全身に纏っていて、マントと言えなくもないが、それはつぎはぎだらけの、もはや襤褸切れだ。それに、捜していた少年は確か黒髪だったはずだが、彼のはボサボサの銀髪。細身の剣を背にして、冒険者のようにも見えるが、それよりなにより、

「……俺の捜していたのは、こんな目つきと態度と口の利き方がちょー悪くてちょー貧乏そうなボロ切れまとったガキんちょなんかじゃねぇはずだよな…………ん?」

「ぐぅぬぬぬぬ……ッ!」

 その銀髪の少年が、わなわなと震え、唸り出した!

 しじんさんは おもった!

 ……あ、やべぇ、俺、口にしちゃってた? あちゃ~ぁ、流石に怒らせちゃったかな~ぁ? しょ~がねぇ、一応、謝っとくか――、

「ごめりんこ、てへぺろっ☆」

「ぬがぁーーーッ!」

 しょうねんは しじんさんに げきどした!

「おぉぅ、怒りマックスのご様子か……?」

「貴様ぁ! どこまでも余を愚弄するかッ!」 

 少年がついに吠えた!

 そして両手を掲げると、

「よいだろうッ、ならばその身をもって、とくと地獄を味わうがいいッ!」

 不気味な威圧感が辺りに漂いだした!

「……ッ?」

 詩人は咄嗟に身構える――!

「――喰らえッ! しゃくねつのごうか!」

 しかし!

 MPが たりない!

「え……?」

「……えーっと、……こ、これはだなぁ、つまり、なんというか、こう……その、なんだ……うん」

 きまずい ちんもくが あたりをつつむ!

 が、

「ちょっとちょっとぉなにやってんのアンタは~~~ぁッ!」

 なんと!

 ようせいさんが あらわれた!

 ようせいさんの たいあたり!

 かいしんのいちげき!

 ばちこ~んッ!

 しょうねんは ふくぶに きょうれつなダメージ!

「ぐふ……ぅッ!」

 少年はその場に崩れ落ちた。

「ええええぇ……、なにこれぇ……、デジャヴ……?」

 ついさっき、同じような光景を目の当たりにした気がする詩人だった。

 もっとも詩人さんの場合は当事者なのだが。

「貴様ぁ、なにしやがるか……っ!」

 少年が呻きを漏らしていた。

「ほら、もう、起きなさいよねっ」

「………………」

 しじんさんは ようすを みている!

 倒れた少年の頭上で、手のひらサイズの小物体が、ぶんぶんと羽音を立てて舞っている。

 あれが、妖精――、なのだろうか。

 古い書物でその記録を読んだ覚えがあった。確かに可愛らしい外見ではある、が。

 そいつは不意に目が合うと、まくしたてた。

「あらヤダ。みっともないとこ、ごぉめぇんなさいね~ぇ。このコったら、ちょ~っと人格変わっちゃうっていう設定……、いや、癖……そう癖なのよ、うん。そういうことにしまショ。変な癖があってね~ぇ、オホホホホ……」

 その妖精らしき小物体が、少年を起こそうと彼のボロ布を必死になって引っ張っている。

「そりゃ~ぁ、ノーヒントで~ぇ? 平原を~ぅ? 三日三晩? さまよっていたからって~ぇ、疲労困憊なのは分かるけどさーぁ。アンタねぇ、ここ、もう街の中なのよ? やっとたどり着けたんじゃないの、しっかりしなさいよね、まったくぅ」

「次から次へと、なんなんだよ、もう……」

 呆気に取られた詩人は、ただ見守るしかなかった。

 と、詩人の背後に人影が。

 店の奥から武器屋の娘が近寄って来る。

 彼女が言った。

「では、私は協会に行って参ります」

「このタイミングでッ? 出掛けるっての? 急じゃねッ?」

 いつの間に身支度を整えていたのだろうか、この娘。

「てか、えっ、協会ッ? ……教会でなくて?」

「細けぇこたぁいいんです。あなたはちゃんと店番するように。あとお掃除も」

「えええええ……なんか追加されたしぃ……」

「それでは――」

「ちょっ、待っ、……コイツら、どぉすんだよぉッ?」

 詩人は、うずくまる銀髪の少年とそのまわりを飛び交う妖精? らしき物体を、交互に指差すが……。

 娘は出て行ってしまった。

「ちっ、しょーがねぇなぁ、ったくよぉ……」

 ぼりぼりと頭を掻きむしる詩人。

 目の前では、少年がようやく起き上がったところだ。

 と、

「も~、ようやく起きたのね! それじゃぁ、ちゅ~も~くっ!」

 きゅるりら~ん、と光の尾を引いて妖精が二人の間にしゃしゃり出る。

「ここから先はぁ、ボクに、お・ま・か・せッ! この街の施設をご案なーい! まずは、ここネ。こ・こ・はぁ……、武器屋だよ~ッ! きゃは♪」

「すまない、虫取り網をひとつ、頼む……!」

 少年。

「おぅ、これでイイか? こいつぁな、中ボスの魔法もはじき返す業物だぜ!」

 詩人さん。

「ちょいちょいちょいちょーい! なんの話してるのよぉアンタらはぁッ? てか、なんでそんなもんが武器屋にあるんさね~~~ッ?」

「うざい」

「だまれ」

「あだだだだッ! ちょっやめッ、ふたりしてボクを空きビンなんかに押し込まないでぇッ! 息、出来ないからああああッ!」

 ようせいさんの さけびが こだまする!


 つづく!

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