表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界は計画的に  作者: にゃおぞう
8/21

第7話 決戦準備

 昨日は、森よりも帰って来てからの方が大変だった気がする。

 キャロルさんは、事情を説明した段階でしぶしぶだが納得してくれた。

 問題はエリスで、置いてけぼりにされ単独で森に向かって偶々遭難していた人を助けただけだろうと騒いでいた。

 結局今日の、エリスの特訓に付き合う事で許して貰った。


 キャロルさんは、戦闘用の道具をチェックしたいとの事で今日は来なかった。

 一応最終調整という名目で、練兵所にエリスと来てみた。

 この数日だけで、アレックスさんには全く及ばないまでも他の傭兵達には良い勝負が出来るようになっていたようだ。

 魔法の才が、全く無い事に危機感を覚えたのか剣技の上達が早い気がする。

 飽くまでもそれは、技術が上達しているだけで単純な力が伸びている訳ではない。

 だからこそ、一般の傭兵達には単純な技術勝負になり戦闘になり得るのである。アレックスさんのように魔力で身体強化が出来る者達からすると相手にならないのだ。

 エリスは少女である。鍛え続けていたとしても、大人のそれも冒険者や傭兵の男性に力が勝る事は無い。

 ろくに運動もしていないような、その辺の村人よりは強いかもしれないが……。


 さて、今日の実験もとい特訓の協力だが他人の強化というやつだ。

 試さずに、魔物の森の攻略中ぶっつけ本番とかはしたくなかったので丁度良かったかもしれない。

 まずは、単純に筋力強化。

 エリス(少女)が、大剣を片手で持っているのは少し奇妙な光景だ。片手剣の様に、軽々と振り回せるようだ。

 筋力を強化しただけでは、上がった素早さには対応出来なかったようで壁に突進してしまった。

 試そうとは思っていなかったが、どうやら筋力強化は防御力も大幅に上がるようで怪我はしてなかった。

 どうやら、魔力を扱えない人であろうと強化は可能らしい。昨日自身にかけたような、身体・感覚等の全強化も大丈夫だろう。


 「これが身体強化ってものなのねぇ」


 「筋力だけを試しに強化してみたのですが、どうでしたか?」


 「そうね、確かに大きく踏み込もうとすると急に景色が変わったように感じるから戸惑っちゃうかな」


 「では、先程のモノよりも軽くですが全てを強化して俺と模擬戦と行きますか」


 強化する事だけを意識して、効果時間を考えずに強化した場合は大体5分くらいしか効果が無かったようだった。

 最初は、軽く感じる片手剣の扱いに少し慣れていなかった様に感じた。やはり、エリスは剣の才能があるようで効果が切れる前にその辺の冒険者並みに動けるようになっていた。

 10分くらいずつ休憩を取り、3時間程経過した頃には少し強めに強化してアレックスさんと同程度までには戦えるようになった。

 いよいよ、明日には魔物の森のエリアボス攻略が開始される予定だ。

 アレックスさん達、傭兵団の面々は今日は早めに切り上げて明日の準備に移るらしい。

 俺とエリスは、屋敷に戻り昼食を済ませた後に街で準備をしているキャロルさんと合流をした。


 「随分とたくさん買いましたね」


 「そうなのよ、準備不足を心配してたらこんな事に……」


 「こんなに持ってどうやって森で戦うんですか?」


 「今から宿に戻って、明日必要になりそうな物を厳選しましょう!」


 「「……」」


 取り敢えず、キャロルさんが宿泊している宿の部屋で整理することにしたのだが。


 「足の踏み場がほとんど無いのですが?」


 「これでも一部魔法の鞄から取り出してない状態なのよ」


 「まだあるんですか!?」


 俺とエリスは思った。


 この人大丈夫か?と……。


 しかし、キャロルさんもお金持ちだな。

 体力や魔力は勿論、毒や麻痺などの回復薬各種10本ずつ。

 まずこの時点で、魔力回復薬以外は大半が無駄になる。俺が回復出来るから半分でも多いだろう。

 更に無駄なのが矢弾だった。

 10本が1セットになった矢筒、実に50セット……。どんだけ乱射する気なんだこの人。もしくは、命中させる気が無いのかも疑うレベルだろ。

 テントは荷物になるがまだ良いとしよう。かまど用の煉瓦って、こんなに持って行くならいっその事パンなど持ち運べる食品を同じ量用意した方が効率が良いだろう。

 キャロルさんは、今までどうやって旅をしてきたのだろうか。


 「その魔法の鞄を少し見せて貰ってもよろしいでしょうか?」


 「良いけど何に使うの?置き場が無いからアイテムは取り出さないでね?」


 俺はキャロルさんから、魔法の鞄を受け取り鞄の構造を解析して返却した。

 そして要らないではなく、使っていない短剣を貰って加工する。

 見た感じ、刀身の外れた柄のような短剣になった。柄も勿論加工する。

 どうやら、既にある道具を加工して魔道具も簡単に作成出来たようだ。


 「キャロルさん、コレを使ってみて下さい。」


 俺が作ったのは、簡易倉庫とでも呼べば良いだろうか。

 手元に2種類の、ボタンの様な突起がありオンオフを切り替える。

 オンの状態で、縦に切るようにして動かすと空間に断裂が起きる。

 オフの状態で、断裂を切るように動かすと何事も無かったように空間が戻る。

 この断裂の中が倉庫という訳だ。

 暫く使わなそうな物を、この断裂に放り込んで閉じる。そして、この短剣の柄を魔法の鞄に仕舞えば終了だ。

 試作品ということもあり、断裂の中は急ごしらえの俺の土魔法で作った倉庫になっているがその内綺麗に仕上げて簡易宿泊施設なども作ってみたいところだ。

 それはさておき、エリスの仕上がりは上々であり道具類も解決した。

 いよいよ明日の打ち合わせだが、まずは前回皆で進んだ道を奥まで進んで行く話で進んでいる。

 最初の分かれ道で、傭兵団とは分かれる流れだ。

 王国より貸与されている、通信用の魔道具が存在していたのをエリスが思い出したので全員で同じルートを開拓する必要がなくなったのだ。

 特に揉める事も無く、明日の流れが組み終わった。

 解散後屋敷に戻り、夕食を済ませた。

 傭兵団への、通信魔道具の貸与と明日の流れは朝一にアレックスさんに説明する手筈になっている。

 段取りが、全て上手く行き過ぎているような気がしなくもない。

 明日は早いので、夜は早めに寝る事になった。


 一つ気になることがあった。

 そう、エリアボスはゴブリンだと言われていた。しかし、明らかに森に入って浅いエリアに居たバースさんを襲っていた集団の纏め役。

 あのやけに強い、他のゴブリンよりも大きな個体。あれがエリアボスだったのではないだろうか……。

 もしそうだとしたら、あのゴブリンよりも上位の存在が新しくエリアボスに就いたのではないのか。

 明日森の前で、少し本気を出してマップ検索などしてみようと思う。


 備えあれば患いなしというやつである。

 俺の魔法があれば大抵どうとでもなるだろう。

 そんな楽観視しながら、今日も部屋で眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ