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異世界は計画的に  作者: にゃおぞう
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第5話 実験

 昨日は現地調査としての、魔物の森探索だったが鑑定魔法は及第点というところだろうか。

 攻撃魔法はというと、完全にオーバーキルというか木々が倒れて危険さえあった。

 やはりイメージだけでは、魔力量を上手に調整する事は出来ていなかったようだ。

 魔物の森開拓が終わり次第、魔法学校でそれらを含めて学ぼうとは思っているが開拓中に自爆とか目も当てられない。

 エリアボスの討伐へ向かう前に、ある程度の調整が出来る様にしなければならない。その為に、身近なところでキャロルさんに聞こうと思っている。

 キャロルさんは、昨日の魔核を売却したお金で冒険者がよく利用する宿泊施設に泊まったらしい。


 ここは以前の世界でいうところの、喫茶店のような場所である。例えるなら、以前モーニングセットを食した感じのお店だ。しかし、夜だけでなくバーの様な雰囲気のある場所も昼間から稼動している。

 そのお店の端の席にキャロルさんが居た。既に時刻は、もうすぐ昼という感じだが昼食ではなくコーヒーを飲んで落ち着いているようだった。


 「すみません、魔力操作についてご教授頂きたいのですが……」


 「それよ、それ!昨日は私達まで危なかったじゃないのよっ!」


 「本当に申し訳無かったです」


 「まぁ、きちんと学んだ訳では無いんでしょうし誰も怪我はしなかったので不問にしておきましょう」


 昨日のようなことが、二度と無いように教えてもらえる事になった。

 まずは、この街の中央辺りにある憩いスポットへとやって来た。噴水を中央として、周囲にはアクセサリーや飲食物の露店がある。

 その噴水を、参考にするのが一番わかりやすいらしい。


 「この水が魔力と考えて下さい。下に溜まっている水が、要は自身に蓄えられている魔力です。」


 この噴水、暫くはチョロチョロと循環しているだけなのだが3分に一回のみ2~3メートルくらいの高さまで吹き上がって弾けるのだ。吹き出し口には、浄化の魔法がかけられるらしく弾けた水は周囲の気温を下げるだけで害は無い。更には下の水溜まりが一定量になるまでは大気中の水分を微量ずつだが吸収する仕組みがあるとのことだ。

 実に凝ったシステムだが、元々魔法使いの魔力の流れを参考に作ったらしい。どおりでイメージし易い訳だ。

 さてイメージ出来たからといって、こんな街中で魔法を放つ訳にもいかないので森方面の街道まで移動した。


 「先程の噴水同様に、一般の魔法使いからすると魔力をそのまま放つ前に必要な量を溜める必要があります」


 そう言われてみると、噴水が大噴射する直前に一度水が弱まっていた。俺が納得していると、キャロルさんはただと付け加える。


 「昨日のリョウさんの魔法を見た限りでは、全く溜めがあったようには見えないのにあの威力だったので使う魔力を抑える事に集中しましょう」


 まずは水をイメージして、魔力の流れ出る基本量を見てみる事にした。


 「まずは水道から出る水の様に、魔力を水にして垂れ流してみて下さい。抑えるとか増やそうとせずに、そのままです」


 この世界の魔法には、イメージさえあれば発動は出来る。詠唱や魔法名を言う者も、中には居るのだがそれは精神集中とかイメージ固めという側面が強い。個人差はあるが、詠唱する事により威力増大や消費魔力減少などのメリットも見込めるらしい。


 「……リョウさん、あなたは一体何をしてるの?私を水浸しにして、あられもない姿を拝もうとでもしたのかしら!?」


 酷い言われようだったが、これは実際そう思われなくもない失態だ。精神集中した訳ではなく、ただ普通に水道の水をイメージして放出しただけだった。

 周囲が、一瞬で水浸しになってしまったがキャロルさんは咄嗟に風魔法で防いだようだった。

 違和感はあった、最初の鑑定魔法もイメージした物よりも情報が多く見るに堪えなかった。

 次は森での一件、キャロルさんの魔法を見てそのままをイメージしたのに過剰威力。

 それで今回の件、水道をイメージしてコレは滝と言っても過言じゃないレベル。

 俺の魔法は、下手をするとイメージ20割増しという状態だった。


 「自分のイメージとは違う?う~ん、普通は修業をして魔法をイメージに近付ける様に威力向上をするんだけど逆なんて聞いたこと無いわよ……」


 暫くうんうん唸っていたが、キャロルさん鞄からブロンズの指輪を取り出した。


 「ちょっと駄目元なんだけど、これを着けて魔法を使ってみてくれるかしら」


 元の知識では、どの指が何かとか意味があった気もするが覚えてないのでサイズに合った左手の小指に着けて魔法を使ってみる。

 まずは抑え気味に、水道の水から・・・ちょろちょろ。

 次に昨日の風魔法、風塊がイメージ通りの速度で飛んでいき地面の雑草が切り刻まれる。

 最後に全力の鑑定魔法。見たいものだけが見える、取捨選択も自在で実に使い易い。

 さすがはキャロルさん、こんな素晴らしい指輪を持っているとは。成功に、少し浮かれ気味だったが振り返ると驚愕の表情を浮かべフリーズしているキャロルさんの姿があった。


 「いやぁ、成功しましたよ。実に素晴らしい魔道具をお持ちなのですね。それで、何かありました?」


 「何かありましたかじゃねぇよ!あんたどんだけ規格外なんだよ……その指輪は、犯罪者用の魔法を完全に使用不能にする魔道具だ!!」


 今までの、どこかお淑やかな雰囲気のある言葉遣いが完全に崩壊していた。

 暫く喚き散らしていたが、次第に落ち着きを取り戻していった。


 「失礼致しました。まさか本当に、上手くいくとは思っていませんでしたが良かったですね」


 ありがとうと、感謝を述べながらふと思った。

 犯罪者用の指輪なら、外せないもしくは外すと何か制裁があるのでは無いかと……。


 「この指輪、外せないとか何かあったりしませんよね?」


 「特に何も無いですよ。本来であれば、魔法犯罪者がその指輪を着けた際監視の者が同行するんですよ。そして、指輪を外す素振りなど疑わしい行為をした者はどんな罪でも死罪に格上げされます」


 何もせずに、そのまま連行されれば犯罪行為の重さによってきちんと裁かれる。しかし、外そうとした時点で死罪確定となり指を折ったりして外せない様にされて連行されるらしい。

 二人以上の監視員が付き、罪の捏造が無いようにして執行官にしか死刑は行使出来ないと決められているらしい。大変デンジャラスな世界の様だった。


 さて指輪を貰い、魔法もいくつか試してみたが問題は無くイメージ通りだったので訓練という名の実験を終了した。

 一つ気を付けるのは、この指輪はなるべく人に見られない様にしなさいとの事だった。実際知っている者から見ると、犯罪者しか着けない物なので問題の種にしかならないらしい。

 結局安全の確保された場所では、指輪を外し魔法を使わない様にする事で対処するようにした。


 先程の噴水辺りの露店で、キャロルさんへのお礼にハンバーガーとホットドッグの中間のような妙な食べ物を奢って解散になった。

 屋敷に戻り、再び書斎にて魔法の勉強をした。イメージで何でも出来てしまうが、人前では一般的に知れ渡っている魔法を使う方が安全だからである。

 後日の、傭兵団との団体行動には俺がまだ魔法人形と知らない人すら参加するのだから。


 エリスが、王都から戻って来たのだが表情が暗い。

 今日俺と別行動だったのは、王都の魔法研究施設で潜在的な資質の有無や使えそうな魔法の確認を行う為だったそうだ。

 キャロルさんの使った、簡易的な物だと眠っていて訓練次第で現れるような資質までは見えないらしい。そして魔力量も、判別の幅が大きく無し・普通・多い・凄い多いみたいな判断しかできないそうだ。

 暗い表情からもわかる通り、エリスの魔法の才は皆無で魔力量も普通の人より少なかったらしい。


 「わたし、どうやらポンコツで使えないコだったみたい……」


 そう言いながら、より一層肩を落としていた。

 こんな時は、どうやって慰めれば良いのだろうか。

 この世界で、魔法の素質が皆無と言われるのは前の世界でどれほど自分を否定された意味を持つのかもわからない。しかし、エリスのこの落ち込み様を見る限りでは相当酷いものなのだろう。


 「エリス様、例えエリス様に魔法が使えなくとも俺を使えば良いだけではないですか?」


 「ありがとう。リョウは優しいね」


 エリスは、自分の力を見せて周囲を認めさせたかったので俺と一緒にではなく俺を駒として使うという考えはしていなかったらしい。

 もしかするとだが、この子の資質は女神に意図的に消されたのかもしれない。俺の起動には、純粋な魔力が必要だった。他の研究者や、魔法使い連中がいくら魔力を流したところで起動しなかったのは全員が何らかの資質を持っていたからではないだろうか。

 とりあえず、エリスも考えを改めてくれるようで多少前向きに戻ってくれた。


 「明日からは、剣や弓のような特訓でもしてみますか」


 「そうね、魔法は駄目だったけど戦闘が駄目ではないだろうしそうしましょうか」


 いつものエリスに戻った様に感じた。

 夕食後、与えられた自室でいくつか周囲に被害が及ばない様な魔法の練習をしてみた。

 まずは、照明の様な魔法で一般的にはライトと呼ばれている。それ自体は、完全に熱量を持っておらずただ明るくなるだけの魔法である。

 次に、クリーンと呼ばれる部屋や衣類などの掃除洗濯などを一瞬で行う便利魔法だ。イメージ次第では、衣類自体や置物などの非生物も消し去ってしまうらしく慣れていない人はやんわりと使用を禁止されているらしい。

 そして、実験に近かったがお湯を作り出してみた。水は出せる、火も出せるとなれば可能だろうとは思っていた。複合魔法と呼ばれる領域で、火と土でマグマのような物にしたり水と風で霧のようにしたり出来る。

 現在では、火と水や風と土といった反属性の資質を同時に持つ人間はほぼ居ないらしくお湯を出すという発想自体が無いようだった。

 食後に借りて来た、コップとティーポットといくつかの粉末。これは見た目も、匂いもコーヒーだったがこの世界ではお茶に分類される飲み物らしい。

 まずは、昼間の水を出すイメージに炎で熱するイメージを加えて出してみたがとても温い。

 イメージを変え、火を通すのではなくお湯その物のイメージで出してみた。前の世界の記憶、インスタントラーメンを茹でる感じのお湯をイメージし放出するととても熱かった。

 これはいけると、コップに粉末を入れポットへと放出したお湯を注いでみるとコーヒーが完成した。

 コーヒーを飲み干し、調理室でお湯を捨てコップとポットにクリーンをかけて戻しておいた。コーヒーの粉末の残りは頂いておいた。

 部屋に戻り、離れても残っていたライトを解除して眠りについた。

 どうやら、全属性が使えると何でも出来るようだったので明日からは楽しみで仕方なかった。

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