第3話 魔法鑑定
すっかり遅くなってしまったのでSSっぽくなってしまいました。
短いながらも定期更新を意識して投稿しておきます。
来客は概ね予想通りというか、俺に来客というと思い当たるのがこの人しか居ないであろうキャロルさんだった。
彼女は以前俺を動かす際に、色々調べてみたが結局動かせなかった。帰り際に動いたら連絡をと言っていたので、連絡をしてみたら来たという訳だ。
「それで助言通りに、魔力を通わせたら動いたのですが……。今回はどういった御用件でしょうか?」
「ただの好奇心というものです。前回訪問した際に、色々と調べてみたのですがわからない事が多かったので」
「実は先日、戦闘能力を見る為に傭兵団と戦って貰ったのです」
「ほぅ、それでどうなりましたか?」
元の世界での剣術をイメージした、という事等はさすがに伏せた。ウォームアップ的な物を見て、全員の戦意が無くなったので団長と戦い勝利したなどと簡単に伝えた。
「素晴らしい!魔法人形であるにも関わらず、身体能力も高いという事ですね!」
彼女は興奮を抑えきれず、目を爛々と輝かせ身を乗り出してそう言った。
「魔法人形にも関わらずという事は、魔法が使えると?」
「その通りです。製作者の持つ能力が、大きく影響はします。ですが、魔力で動く人形に魔法を使えない物は過去に存在しておりません。えっと、それで彼の名前は?」
「「あっ……」」
そういえば、まだ名乗っていなかったし命名された訳でもなかった。今まで聞いた名前では、昔の名前と違和感があり過ぎるので変えた方が良いだろう。
「そうですね、記憶は残っていないのですがリョウという名前がしっくりきますね」
龍ヶ崎の龍、リュウの読み方を変えただけなのだが実際に小さい頃に呼ばれた事もある名前だった。
「それではリョウさんにはまず、魔法の適正という物を見させていただきます。自分の魔力の、存在もしくは容量の様なものは感じられますか?」
「これが魔力というのかはわからないですが、何かあるというのだけはわかります」
「それではちょっと失礼して……」
彼女は何かを詠唱し終わると、文字通り目の色が緑色に変化していた。そして、そのまま少し視線を外しながらも訝し気な表情になった。
「これは何でしょう、魔力量が見えませんね。以前の起動前に確認した際には、完全に0でしたのに……」
どうやら先程詠唱したものは、その人の能力を見る為の魔法だったらしい。
「見えないとは、無いとは違うという事でしょうか?」
「はい。今のは鑑定系に分類される魔法でして、見たい物に特化して情報を得る為の魔法だったのです。それで以前の0とは違い、存在は確認出来ても量が見えない状態です。それと属性に関しても、見たことが無い状態でしたね」
鑑定自体がどういうものか、まだよくわからないが要はステータスが術者にわかりやすいように見えるという事らしい。
「今のままですと、良いのか悪いのかすらよくわからないのでとりあえず保持属性を調べてみましょう」
彼女はそう言うと、黒ずんだ銀色というような色で魔法陣の描かれた1枚の紙と水の様に透明な液体を取り出しテーブルに置いた。その液体を、魔法陣に1滴垂らすと白紙の様になった。
「では、この魔法陣に両手をかざして魔力を込めてみて下さい。何かを放出するイメージとでも言いますか、先程の体内に感じるものを外に向ける感じですね」
魔力を込めると、属性に沿った色になるらしい。
火属性持ちが赤、水属性持ちだと青、風属性持ちは緑、土属性持ちなら橙といった感じになる。複数所持すると色が混じり明るくなったり、白い靄の様な状態になるようだ。
早速魔力を通してみると・・・。
眩く虹色に輝きだし、周囲を幻想的な空間が支配する。数秒間、静寂が訪れた後に魔法陣が砕け輝いていたスクロールが破れて普通の部屋の状態に戻った。
「これは一体……?」
「随分と綺麗な光でしたね」
彼女は一瞬困惑したような表情を作り、すぐさまぶつぶつと物思いに耽っていた。
エリスは、先程の光景を思い出しながらうっとりとしている。
俺はというと、女神に願った魔法の才能というものが無双レベルだったのではと内心喜んでいた。
「思い出しました。過去に伝説級の、全属性を使いこなしていた大魔導士が先程と同様の光を放ったと」
喜んでいたところに、過去に同じ様な事があったらしい。前例が無い程の、チート主人公を期待していたのに残念である。
「しかし、魔力が計り知れず資質も全属性となると少し大変な事になるかも知れませんね……」
ボソッと呟く、キャロルの台詞が耳に届いた。疑問に思い、何が大変なのかと尋ねてみると彼女は呆れたように説明し始めた。
まず過去の前例の者が、伝説に残るような偉業を成し遂げた事がキャロルですら思い出せてしまった事。魔法を研究している者たちからすると、悩む事も無くその才能に目を付ける。国家間の問題に、巻き込まれるのが考える必要もなく理解できる。平和に暮らすなら、人の目を気にしながら魔法を使う必要すら出てくる訳だ。勿論それは、俺個人だけの問題ではない。エリスを始めとする、この領地の人間にすら危害が及ぶ恐れすらあるのだ。
「何か方法は無いのでしょうか?」
暫く考えた後に、彼女は悩みながら答えた。
「魔法学校に行く事をお勧めします」
苦肉の策というものでしかないと説明をする。まずは、魔力のコントロールを身に着けたうえで他者のレベルを学ぶというのだ。
人の目があるところでは、人並み程度の魔法に加減する術を学ぶ。たくさん魔法が使えるけど、威力はそこそこの普通の人という事で押し通せば何とかなるかもしれないという事だった。
「リョウ、すぐにでも入学したい?」
エリスが不安そうに、呟くように問いかけて来た。エリスからすると、魔物の森のボス退治をしようとしていたのだから魔法学園への入学となると開拓が遅れてしまうという事だろうか。
「俺を動かしてくれたのは、エリス様なのですからエリス様に従いますよ」
エリスの表情が、みるみる内に明るくなり何度も「そうよね」と言いながら手を握って来た。どうやら、先程の回答は望んでいた答えだったらしい。
「という事で私は、リョウと傭兵団のメンバーで魔物の森を開放したいと思っています」
「やはりそうなりますか。これ程の逸材が、手の内に転がり込んで来た訳ですし当然でしょう」
とはいえ、魔物と戦った経験など皆無なので数日間は肩慣らし的に戦った方が良いだろうとキャロルは言う。いきなりボスを狙い、戦闘に慣れないままボス以外の雑魚に数で押し切られる事も珍しくないとの事だ。更に言うと、仲間になるメンバーの戦力も知っておくべきだろうと言う。
「それでは、私も魔物の森開放というかリョウさんに同行する事にしますね」
キャロルが突然、仲間になる宣言をしていた。俺もエリスも、唖然としながら彼女を見ていると……。
「これ程素晴らしい研究対象なんて、滅多に出会えないのですからご一緒させて頂きますからね!」
連れて行って貰えないなら、言いふらして戦争にでも送り出してやるなどと脅していた。半ば強引に、明日からの予定を提案しつつ仲間アピールをしていた。
とりあえず明日は、魔物の森の入口近辺で俺とエリスとキャロルの3人で様子を見ようという事になり今日は解散となった。
俺は一人、先程から気になっていた鑑定魔法について調べながらゆっくりするのだった。