プロローグ
はじめまして! なまにくと申します。
なるべく早く更新していく予定です。
お付き合いくださいますよう、よろしくお願いします。
プロローグ
アキトは痛みを我慢しながら声のする方に顔を向け、虚ろな目で男を見た。ポニーテールの男はボロボロに引き裂かれた白衣を纏い、疲れきった顔で足を引き摺りながらアキトに近付いてくる。
「おまえ……誰……」
「ハハ……君に自己紹介するのはかれこれ何回目だろうね……君はもう知っているはずだよ。悔しいけれど、僕の能力もまだまだだね。心的拒絶を突破するのにこんなにも手間取るなんてね……君の過去を追体験するつもりが、チラ見しか出来ないとは……悪いが僕の精神が持ちそうに無いから手短に話す」
「お前は……誰……だと聞いている」
男はアキトの質問には答えずに、苦しそうな顔で続けて語った。
「アキト、思い出せ。これは記憶だ。君が今体験している事は全て既に終わった過去だ。戻る事も、変える事も出来ない。君の両親が亡くなった事も、家が燃えた事も変える事の出来ない過ぎ去った過去だ。君は……受け入れなければならない。過去を、現実をありのままに、逃げずに、受け止めなければならない。いつまでこの時間に留まるつもりだ? 悲劇のヒーローにでもなったつもりか?」
「お前に……お前に何がわかる……」
「分からないよ。君がどう思おうが知った事じゃない。だが、どんなに自分を責めても、どんな能力をもってしても、過去は変えられないと言っている。アキト、これは事故だ。不幸な事故だったんだ。君に責任など無いし、君を責める者など居ない。それは亡くなった君の両親であってもだよ」
「うるさい……うるさい! 俺が! 俺が殺した! ゲホッ……俺が……能力で……!」
「罪悪感に押しつぶされるな! 乗り越えるんだ! 自分の殻に閉じ篭っても何の意味もない。君の両親はそんな事望んでなんか居ない。両親の死を無駄にするな」
「お前に言われたくは無い! 俺が……俺は……もう……」
「やめろ! 自閉するな! 僕の話を聞け! 戻って来れなくなるぞ!」
「俺が……殺した……俺が……殺し……俺……殺……」
壊れたスピーカーのようにブツブツとうめき声を上げながら、アキトは深く深く潜るように内へ内へ、そっと心を閉ざそうとしていた。
本編も直ぐに投稿予定です!