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私立陣屋学園能力科  作者: みやもと なまにく
1章 自然科学部
1/51

プロローグ

はじめまして! なまにくと申します。

なるべく早く更新していく予定です。

お付き合いくださいますよう、よろしくお願いします。


プロローグ


 アキトは痛みを我慢しながら声のする方に顔を向け、(うつ)ろな目で男を見た。ポニーテールの男はボロボロに引き裂かれた白衣を(まと)い、疲れきった顔で足を引き摺りながらアキトに近付いてくる。


 「おまえ……誰……」


 「ハハ……君に自己紹介するのはかれこれ何回目だろうね……君はもう知っているはずだよ。悔しいけれど、僕の能力もまだまだだね。心的拒絶(ファイアウォール)を突破するのにこんなにも手間取るなんてね……君の過去を追体験するつもりが、チラ見しか出来ないとは……悪いが僕の精神が持ちそうに無いから手短に話す」


 「お前は……誰……だと聞いている」


 男はアキトの質問には答えずに、苦しそうな顔で続けて語った。


 「アキト、思い出せ。これは記憶だ。君が今体験している事は全て既に終わった過去だ。戻る事も、変える事も出来ない。君の両親が亡くなった事も、家が燃えた事も変える事の出来ない過ぎ去った過去だ。君は……受け入れなければならない。過去を、現実をありのままに、逃げずに、受け止めなければならない。いつまでこの時間に(とど)まるつもりだ? 悲劇のヒーローにでもなったつもりか?」


 「お前に……お前に何がわかる……」


 「分からないよ。君がどう思おうが知った事じゃない。だが、どんなに自分を責めても、どんな能力をもってしても、過去は変えられないと言っている。アキト、これは事故だ。不幸な事故だったんだ。君に責任など無いし、君を責める者など居ない。それは亡くなった君の両親であってもだよ」


 「うるさい……うるさい! 俺が! 俺が殺した! ゲホッ……俺が……能力で……!」


 「罪悪感に押しつぶされるな! 乗り越えるんだ! 自分の(から)に閉じ(こも)っても何の意味もない。君の両親はそんな事望んでなんか居ない。両親の死を無駄にするな」


 「お前に言われたくは無い! 俺が……俺は……もう……」


 「やめろ! 自閉(じへい)するな! 僕の話を聞け! 戻って来れなくなるぞ!」


 「俺が……殺した……俺が……殺し……俺……殺……」



 壊れたスピーカーのようにブツブツとうめき声を上げながら、アキトは深く深く潜るように内へ内へ、そっと心を閉ざそうとしていた。





本編も直ぐに投稿予定です!

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