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百合っぽい学園物  作者: 森野彼方
澄城 雅
7/22

腹が減っては馬鹿話も出来ぬ。3

結論から言えば、私は無様な屍を晒すことになる。


「雅先輩は目立ちますからねえ」


「ふむ。それは立場からかな?」


「まあ、まず始まりはそこだったんでしょうね。生徒会長なんて役職についていれば嫌でも矢面に立つ訳ですから、知名度は決して低くはなりませんし」


「しかし知名度だけでモテたりはしないだろう。曲がりなりにもここは女子校ではないか」


桜の言葉は尤もではあるが、しかしそれだけで納得出来るものではなかった。加えて、始まりという単語が気にかかり、まるで急かすように先を促してしまう。


「そこはそうでしょうね。しかし女子校だからこそ、ということもありますよ」


謎かけのようだと眉をひそめるも、少し引っ掛かる部分があった。


「異性がいない環境だからこそ、か。つまりは他に異性がいれば違った訳だね?」


「そこはその殿方次第でしょうとも」


私の問いに、桜はニヤリと笑う。察するに、正解にはほぼ手が届いたようなものなのだろう。


「ふむ。異性がいないからこそ同性から人気が出て、しかし異性がいればそうはならない、か。……性格か容姿。まさかと思うが、そのどちらかに異性の影を重ねられている、といったところかな?」


「その要素が高ければ高いほど人気が出やすい、と仮定すればですけど。雅先輩はスレンダーでスタイルの凹凸も少ないですし、容姿は中性的と思えば問題にはならないでしょう。性格は口調なんかで多少ですけど察しはつきますから。共学だったりすれば違ったと思いますよ」


「確かに私が女の子らしい、だなんて口が裂けても言えないだろうさ」


納得出来るだけの論理と根拠に、私は皮肉の一つも返せやしなかった。


「全寮制なんて閉鎖した環境とはいえ、恋愛観が世間とそう狂う筈もない。仮に同性を好むなら、確かにより異性を連想させる人間が好まれるのは道理だろうね。そんなのが生徒会長なんて目立つことをしていれば、そりゃあ人気も出やすいだろうさ」


もしそれがただの強がりだろうと、皮肉の一つでも返せたのならば、まだ少しばかりは守られたものが有ったのかも知れない。私の口から漏れ出たそれは、およそ無様な負け惜しみでしか無かった。


「成る程。私は体の良い代替品として打ってつけという訳だ」


胸の奥深く、自分ですら手の届かない場所で、何かが熱を失いながら荒れ始めるのを感じる。


「代替品であるのが嫌でこんな檻の中に飛び込んだのに、そこでも私は代替品を続けさせられていた訳か。随分と滑稽な話もあったものじゃないか……」


事実を追及して残されたのは醜悪なまでに無様な屍だった。


いっそのこと、本当に息の根を止めて打ち捨てられれば、果たしてどれだけ救われたのだろう。

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