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百合っぽい学園物  作者: 森野彼方
澄城 雅
13/22

朝焼けを君と。

習慣というものはなかなか侮れないもので、夜更かししようと慣れない他人の部屋で寝泊まりしようと関係なしに、いつも通りの起床時間に私は目を覚ました。


睡魔がまるで泥のようにまとわりついて、僅かに動作が緩慢になるものの、それでも惰性に負けぬよう体を起こし大きく伸びをする。


朝というには幾らか早く、けれど夜というにはあまりに遅い黎明。曙光は射せども部屋はまだ薄暗く、いささか見通しが悪い。


桜に気遣い照明を点けず、自室とは違う位置に置かれた机に足をぶつけたりしながらも、長居をする理由もないので部屋を後にした。


寝間着で歩き回れば寮母さんに見つかった際に小言を言われるかとは思うものの、着替えは部屋にしかない。下手に入れば寝ている因幡を起こしてしまうかも知れないので、どこかで時間を潰す必要がある。


どうするにも当てはなく、気の向くままにさ迷えば、意図せず食堂で人影を見つけた。


「あ、おはようございます。えっと、……姉さん」


「おはよう。随分と早起きなのだね」


見つけたのは他ならぬ因幡だった。


見れば既に制服に身を包み、身嗜みも整えているあたり、私はあまり意味のない気を回したということが分かる。


「あまり眠れなかったのかな?」


まず気にかかったのはそこで、疲れてやしないかと顔を覗き込んだ。


慣れない寮生活の一日目を終えたにしては、疲労の影はないように見える。


「お母さんのお弁当を作るのに、いつもこれくらいの時間には起きてたんです。だから自然と目が開いちゃいました」


「そうか。私はてっきり春に起こされたのかと思ったよ」


「真田先輩でしたら、私が起きた時にはもういませんでしたよ」


行き合わなかったことを考えると、剣道場にでも向かったか。部屋にまだいくつか荷物も残っていたし、胴着にでも着替えたのだろう。


私は給湯器で因幡の分と合わせて二杯お茶を汲んでから、その対面へと腰を下ろした。


「ありがとうございます。姉さんこそどうしたんですか?」


「習慣でね。因幡と違って用はないんだが、いつもこの時間くらいには起きるようにしているんだ」


ちなみにいつもはランニングで汗を流すことにしている。因幡が寝ているだろうと思ったから今日はやらないことにした、なんて事実は当て付けのようになりそうだから口にはしない。


互いに話題を探るようにしながら人気のない食堂でお茶を啜る。


私としては、何とも新鮮な朝の迎え方だった。

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