希望に満ちたこの世界
ーーー鳥のさえずりが聞こえる。生命の息吹、新たな1日の始まり。そして、俺もーー
「やっと、朝になった・・・・」
何を隠そう、全裸である。もう一度言う、全裸である。生まれ落ちたままのこの姿は人間のファッションの最終点と言っても過言ではないだろう。木の葉の朝露をすすり立ち上がる。
「・・・・行くか」
本当は行きたくないが、行くしかない。スライムの集団にでもあったら間違いなく死ぬだろう。てかスライムって最弱モンスターじゃないの? 腹部の痛みを抑えながらも俺はアンリールへと向かった。
「おう、来たか・・・・ってなんだその格好⁉︎」
無理もない、俺の体は小さな葉で大事な部分を隠しているだけだ。女性に見られなかったのが幸いだった。
「あんな不味いもの飲ませやがって‼︎」
門番に食ってかかる。門番は驚いた顔で
「何言ってんだ? あれはポーション、不味くて当然だろう?」
「は? ポーション?」
門番はこくりと頷く。じゃあもしかして、俺はポーションを水だと勘違いして全部飲んじゃったってことか? もしあの時飲んでいなかったらスライムにやられた傷も治せたってこと?
「はぁ・・・・もういいよ、はやく登録してくれ」
「あ、ああ」
門番は手のひらを上に向けるとSFのような画面が出てくる。
「じゃあこれに必要事項を記入してくれ」
画面には名前、年齢、性別などありきたりの物など元の世界と同じようなものだった。ただ二つを除いて。
「ん? これは・・・・」
見慣れない項目があった。一つは「種族」もう一つは
「・・・・属性?」
俺が困ってるのに気付いたのか
「どうした? 何か分からないことでもあるのか?」
「この種族ってのと属性ってのがイマイチわからん」
門番は不思議な顔をすると
「そんなことも分からないとは珍しいな、いいか、「種族」ってのは三つに分けられる。「ヒト族」「魔族」「天使族」 まぁ魔族の中にも鬼や悪魔などがいるから一つの区切りとして考えてくれ」
ん? 待てよ?
「魔族や天使族も共存しているのか?」
「本当に何も知らないんだな、よく聞いとけよ、魔族や天使族の中にはいい奴もいれば悪い奴もいる。それはヒト族にも言えることだ。中にはハーフの奴もいる。まぁこの時代、種族の間などで争いは起きていないがな、だが万が一のこともある。その時のために俺たち門番がいるってわけだ」
この世界は中々に平和なようだ。いいな、こういうの。元の世界もこんな感じだったらいいのに。
「ーーーーおい、聞いてるか?」
「悪い、続けてくれ」
「属性について話すぞ? 属性ってのは生き物が生まれながらに持っているものだ。そして大まかに四つに分けられる。「火」「水」「風」「雷」そして「光」と「闇」だ。まぁ光と闇を持つ者はほとんどいない。とりあえずは四つだけ覚えておけばいい」
なんだかワクワクする話だ。俺の属性は何だろう? まぁ何になっても正直うれしい。
「俺の属性は何か分からないか?」
「今調べてやる」
門番は俺の頭の上に手をかざすと魔法陣が頭の上に浮かぶ
「・・・・妙だな」
「どうした? 何かあったのか?」
「属性が分からん、こんな事は門番をやっていて初めてだ。・・・・仕方がない、特別に通してやる」
「まじで⁉︎ はやく通してくれ!」
「待て、都市に入ったら中央の家に行け。大きいから分かるはずだ。そこに住んでいる者ならお前の属性も分かるだろう。属性が分かったらまたここに来い」
「わかった! ありがとう!」
「ちょっと待て! ・・・・行ってしまったか。あいつ葉っぱ一枚なのに大丈夫か?」
体が軽い。翼が生えたようだ、見ろ! 周りの奴らも俺に釘付けだ! 気のせいか視線が集まりすぎてる気がするが。
「何か俺についてるか?」
体を見る。
何もついてなかった。
「すんませんでしたぁぁぁぁぁ!」
何であの門番何も言ってくれなかったんだ! やはりあいつは悪魔に違いない!
「くそ‼︎ 後であいつを張り倒してやる‼︎」
そうだ、属性が分からなかったって事はもしかしたら最強の属性が俺に宿っているのかもしれない。いや、そうに違いない。そう考えたら希望が溢れてきた。
「見てろ‼︎ 俺はこの世界で最強になってやる‼︎」
俺は大きな家に駆け込んだ。
「すいません、服ありますか?」