唐突で意味不明なこの世界
見渡す限りの草原。暖かい風は俺の体を包み込んでゆく。だが、俺の額には大粒の汗。一言物申したい。
「ここどこだよおおおおおおおおお‼︎」
空に向かって叫んだ。
「今回間違えていたところはよく復習しておくように」
やってきたよ、この季節が。相も変わらず俺のテストは全教科平均点以下。もはや俺に学力という面で生きる道は無いのだろうか。
「柊悠馬は後で職員室に来い。話がある」
「へーい・・・・」
周りの目は俺をあざ笑っているように感じる。クラスでの俺の居場所は無いのだろうか? 友達? そんなものは都市伝説だ。さて、面倒くさいけど職員室に行きますか。
「お前、ちゃんと勉強はしてるのか? 分からないところがあるなら先生が教えてやるから」
「まぁ、人並みにはしてると思うんですけど・・・・」
少し嘘をついた。俺は元から妄想するのが大好きで、例えば学校のみんなを巨大隕石から守ったり、突然俺に不思議な力が備わったりだとか。そんなことあるはず無いのだが。そういうわけで勉強をしてる時もそういった妄想にふけってしまって勉強に手がつかないことがしばしばある。ちなみに最近の流行は別世界に行く話だ。
「困ったことがあったら先生に聞けよ?」
「はい、わざわざありがとうございました。失礼します」
俺は職員室を後にした。
「大体勉強で人生が決まるってのが嫌な話なんだよなぁ」
帰り道で呟いた。だって勉強が出来たところで俺に出来ることなんてそうはない。なら、俺にしか出来ないことで何か大きなことをしてみたい。
「駄目だ、楽しい事でも考えてよ」
いつもの様に妄想にふける。
「君の願い叶えてあげようか」
ふと誰かの声が耳に届く。見回してみたが誰もいない。
「こっちだよ、こっち」
声の方向に目を向けると電柱の上に仮面を付けた少年? 少女? が立っていた。
「おいおい、そんなとこに立ってたら危ないぞー」
いたずら好きな子供なのだろうか。正直気味が悪い。
「クスクス、危なくなるのは君の方だよ? ・・・・あぁ君なら大丈夫か、だって頭の中でいつも冒険してるもんね」
「なんでお前がそんなこと知ってんだよ⁉︎」
何こいつ、怖⁉︎ やばい、早いうちに逃げとこ。
「そんな君に素敵な世界へご招待! いってらっしゃ〜い」
俺の足元に魔法陣が出来る。何これちょっとワクワクするんですけど。
「なんだこれ! 光で包まれる・・・・⁉︎」
思わず目を瞑る。まじでこれ目を開けたら異世界に行ってるとかそんなオチか⁉︎ やっべ、ワクワクしてきた!
目を開けるとそこは広い広い草原。暖かい風。どうやら本当に異世界に来てしまった様だ。
「本当に来ちゃったのか・・・・」
まあ最初はどっかの村に行くもんだろ、普通は。とりあえず村を探しにでも行くかな。
ーーーーーー冒頭に戻る
やばい、まじでやばい。あれから何時間か歩いたけど一向に建物が見える気配はない。
「こりゃ死んだな・・・・」
草原に倒れこむ。太陽が俺を照らす様でまぶたの裏は赤く輝いていた。と、思ったらまぶたの裏が黒に染まる。目を開けるとそこには深くフードを被った少女がいた。
「・・・・大丈夫?」
赤い目をした綺麗な瞳。見てたら吸い込まれそうだ。だが今はそんなことより、
「助けてください」
相手が年下だとか関係ない。俺は恥を捨てて助けを求めた。
「・・・・とりあえず、私の村にでも来なよ・・来たいならだけど」
「行きます」
俺はフラフラと立ち上がりながらも、少女の後をついていった。