嘘の蟻塚
ずん、と胸に来る痛み
それは実際の痛みではないけれど、
鉛のように重くのし掛かってくる。
個人差はあれど、誰しもが経験する。
反論したい。実はそうではないと言ってやりたい。
でも相手の言っている事は何もかも正しい。否定は出来ない。
「頭」では、わかっている。
ただし「心」ではわからない。わかりたくない。
わかりたくないから、必死に否定する。
必死に言葉を探して、並べていく。
白蟻が土屑を運ぶように。
自分は間違っちゃいない、これでいいんだ、と相手を説得する。
必死に土屑を積み上げていく。塗り固めていく。
相手はわかったわかったと適当に言って、その場を去る。
束の間の満足感。
自分は何も間違っちゃいない。これが正しい。
積み上げた蟻塚を見上げて、密かにほくそえむ。
「心」の奥底ではそれが嘘だとわかっていても……。
ある日、蟻塚は崩れた。