第6話 少女との再会そして真実の光
城門を出て小さな木彫りの人形をくれた少女の村に向かった。
数日後、獣道は開け、なだらかな丘陵地帯が現れた。そして、小さな集落が見えてきた――あの村だ。
かつてより少しばかり家が増え、畑が広がっているように見える。
平和そのものの風景だった。
村の入口で、レオンは少し足を止めた。
「あの……もしかして、レオンさんですか?」
振り向くと今ではたくましい農家の女性になっていた。
彼女はレオンを見つめ、そして彼の手の中の木彫りを見て、はっと思い出したように目を見開いた。
「……ずっと、お守りにしていてくれたんですか?」
レオンはうなずき、人形をそっと彼女に差し出した。
「あの時、君がくれたこの人形が、俺を何度も励ましてくれた。だから……『ありがとう』を言いに来たんだ」
女性の目に、涙が光った。
それは恐怖や悲しみの涙ではなく、忘れられていた純粋な感謝が、長い時を経て巡り逢った喜びの涙だった。
その夜、村では小さな宴が開かれた。
かつてレオンが救った村人たち、そしてその家族たちが集まった。
宴の終わり、女性は再びレオンの前に現れ、新たに彫ったという、もう一つの木彫りを手渡した。
それは、4人の旅人の姿をかたどったものだった。
「今度は、皆さんのお守りに。どうか、お気をつけて」
レオンはその温もりを胸に収め、仲間たちと共に、再び獣道の入り口に立った。
背後では、村の灯りが小さく温かく輝いている。
それから1ヶ月後。
アレクシア王都では、勇者パーティの華々しい凱旋報告会が行われていた。
彼らは「辺境の魔物集団を殲滅」と報告し、貴族たちから喝采を浴びていた。
しかし、その実態は、すでにレオンが退治した後の弱小魔物を掃討したに過ぎなかった。
一方、レオンと新たな仲間たちは、人知れず各地を巡り続けていた。
報酬は少なく、装備は貧相だったが、助けを求める者たちの元には必ず駆けつけた。
ある夜、キャンプファイヤーを囲みながら、老魔術師アーサーが呟いた。
「ふむ、面白い噂を聞いたよ。あの勇者パーティ、内部でかなり揉めているらしい」
片目の猟師キースが笑った。
「当然だろ。あいつら、本物の魔物に最近まともに遭遇してないらしいぜ。レオンがいなくなってから、戦闘データがガタ落ちだってさ」
戦士ガレスが重々しく言った。
「魔王討伐なんて、データや効率だけじゃ測れない。レオン、お前が選んだ道は間違っていなかった」
レオンはそっと胸の内ポケットに手をやった。
そこには二つの木彫りが収められていた──かつて少女がくれたものと、先月村で彼女から受け取った新しいもの。
レオンは揺らめく炎を見つめ、静かに答えた。
「私はただ、できることをしているだけだ。勇者である前に、1人の人間として。目の前の誰かを救えなければ、遠い魔王を討つ資格なんてないと思う」
その瞬間、遠くから慌ただしい馬の蹄の音が雷のように近づいてきた。
馬を汗だくで走らせた一人の伝令の青年が、レオンの前で馬から飛び降り、膝を突いた。
「レオン様! 悪い知らせです! 東方の鉱山町、グスタフが、大規模な魔物の群れに襲われています! 町は包囲され、逃げ場を失っています!」
伝令の青年の声は悲痛だった。
「王国軍は、隣接する貴族領との境界問題を理由に動きません! あの……勇者パーティも、『戦略的重要度が低い』として救援を拒否したとの報告が!」
青年は肩を震わせた。
「町には、女性も子供も……私の家族もいます。どうか……どうかお助けください!」
4人の空気が一瞬で張り詰めた。
キースが矢筒の確認を始め、アーサーは杖を握りしめた。
ガレスがゆっくりと立ち上がり、盾に手をかけた。
レオンの目に、かつてない決意の炎が灯った。
彼もゆっくりと立ち上がり、腰の、かつての輝きを失ったが、手入れの行き届いた剣の柄に触れた。
「行こう」




