第5話 1人の勇者
銀の鹿亭を出たレオンは、城門に向かって歩き始めた。
荷物は軽かったが、心は不思議と軽やかだった。
「待て!レオン!」
振り向くと、町の広場に大勢の民衆が集まっていた。彼らはレオンの追放を知ると、駆けつけてきたのだった。
「勇者様、私たちはあなたを支持します!」
「あんなパーティー、もういいんです!」
「私たちと一緒にいてください!」
レオンは民衆の熱気に押されそうになりながら、ゆっくりと首を振った。
「ありがとう。でも、私は旅を続ける」
彼は高らかに宣言した。
「だが、これからは『勇者パーティ』の勇者ではなく、『民衆の勇者』としてだ。支援も後援もないかもしれない。でも、これこそが私が求めていた旅路だ」
その時、広場の片隅から、見知らぬ3人の人物が近づいてきた。
1人は傷だらけの鎧を着た戦士のガレス、1人は古びた杖を持った老魔術師のアーサー、そして1人は片目の猟師のキースだった。
「レオン・クロフォードか」
片目の猟師キースが口を開いた。
「俺たちは、お前の辺境の村での行動を見た。そして、お前が追放されたことも知っている」
老魔術師アーサーが続けた。
「俺たちにはパーティなんて呼べないほどの人数だ。装備も貧相、報酬も保証できない。でも一つだけ約束できることがある」
戦士ガレスが最後に言った。
「それは、お前の『助けを必要としている人々の元へ行く旅』に、最後まで付き合うってことだ」
レオンは3人を見つめ、そして広場に集まった民衆を見回した。
彼の胸には、久しぶりに温かいものが込み上げてきた。
「……よろしく頼む」
彼はそう言い、新たな仲間たちと共に城門へと歩き出した。
背後では、民衆の歓声が響いていた。
前方には、未知の旅路が広がっていた。
勇者パーティから追放された勇者。
しかし、真の勇者の旅は、今ようやく始まろうとしていた。




