第2話 見え始めた亀裂
思い返せば、亀裂は少しずつ広がっていた。
魔王討伐の旅が始まって3年。
最初は純粋だった使命が、次第に複雑な政治や利益に絡め取られていった。
王国貴族からの支援には見返りが求められ、商人ギルドからの援助には広告的な要素が含まれ、神殿からの後援には教義の宣伝が条件としてついてきた。
レオンは常に「民衆を救う」という初心を忘れなかった。
だが、パーティの他のメンバーは違った。
セレナは神殿での地位向上を、エルヴィンは貴族としての名声を、リリスは盗賊ギルド内での影響力を、それぞれ求め始めていた。
先月の出来事が決定的だった。
辺境の村が魔物に襲われているとの報告を受け、レオンは直ちに救援に向かうことを主張した。
しかし、パーティは同時期に入った「闇の森の秘宝探索」という高報酬任務を優先した。
「レオン、感情的に動いてはいけない」
セレナは冷静に説得した。
「秘宝を手に入れれば、より強力な装備が買える。それでより多くの人を救えるわ」
結局、パーティは秘宝探索を選び、辺境の村への救援は3日遅れた。
到着した時には、村の3分の1が焼け落ち、多くの犠牲者が出ていた。
レオンは無言で救助活動に従事したが、その夜、初めてパーティの宿舎を1人で出て、星空の下で一晩中座り込んだ。




