第15話 深森の森の勝利
聖域の歪みが消え、空気が澄み渡る。
紫色に染まっていた空は、本来の深緑の森の空に戻った。
商会の男たちのほとんどは、暴れた根によって倒されていた。
残った者たちも戦意を失い、逃げ出そうとしている。
「止めろ」
レオンが言ったが、ガレスが彼の腕を押さえた。
「待て、レオン。彼らを生かしておけ。王国の枢機卿が関与している証言者としてだ」
レオンはうなずいた。
彼は剣を鞘に収め、聖域を見渡した。
荒らされた土地は、すぐには元に戻らない。
消えていった精霊たちも、もう戻ってこない。
しかし、これ以上の犠牲は止められた。
「これで終わりではない」
アーサーが重い口調で言った。
「ローレンツィア商会はまだ存続している。背後にいる枢機卿も、黙ってはいないだろう」
「行こう」
レオンが言った。
「真実を明らかにするために。歪められた正義を正すために」
4人は聖域を後にした。
背後では、深緑の森が静かに息づき始めていた。
傷は深いが、森は生きている。
そして新しい命が、いつか芽吹く日を待っている。
森を出ると、遠くに王国の都の尖塔が霞んで見えた。
次の戦場は、あそこだ。
権力と陰謀が渦巻く、光と影の都で。
緑の森の精霊たちが最後に彼に伝えた言葉を、レオンは胸に刻んでいた。
『真の勇気は、権力に従うことではなく、弱き者を守ることにある』
「これで終わりではない」
アーサーの言葉が、冷たい風に乗って響いた。
アーサーが続けた。
彼の声には、長年の経験からくる確信が込められていた。
ローレンツィア商会――表向きは貿易商会だが、その実態は王国の闇を支配する巨大な犯罪組織だった。そしてその背後には、聖教会の高位聖職者である枢機卿がついている。
「次は王国の都か。厄介なことになりそうだな」
キースが呟いた。
彼の声には、危険を察知する猟師特有の緊張が漂っていた。
都はローレンツィア商会の本拠地であり、枢機卿の権力が最も強い場所だ。
4人がそこへ向かうことは、蜂の巣を突くようなものだった。




