第13話 歪みの木の実の木
戦いが終わると、アーサーが魔物の残骸の傍らに跪いた。
アーサーの手が微かに震えている。
「若い精霊だ……百年も経っていない。無理やり歪められ、苦痛の中で暴走させられている」
キースが周囲を見回した。
「商会の連中は、ここを通り抜けてさらに奥へ進んだようだ。荷車の跡が続いている」
4人は痕跡を追ってさらに進んだ。
やがて、彼らは森の聖域と呼ばれる場所にたどり着いた。
そこは荒らされていた。
聖なる泉は濁り、周囲の神聖な木々は切り倒され、地面には深い轍が刻まれていた。
そして中央には、異様な光を放つ小さな苗木が植えられていた。
「これが……『歪みの木の実』の木か」
ガレスが低い声で言った。
苗木の周囲には、無数の精霊の光が囚われていた。
それらは檻の中で暴れるように飛び回り、その苦痛が周囲の空間を歪ませている。
アーサーが杖を強く握りしめた。
「許しがたい……精霊を生きたまま封じ、その苦痛から『実』を結ばせる。こんな邪法が……」
「動きがある」
キースが警告する。
聖域の向こう側から、鎧をまとった男たちが現れた。彼らの鎧には、ローレンツィア商会の紋章——交差した斧と秤——が刻まれていた。
「ここは商会の所有地だ」
先頭の男が威圧的に言った。
「許可なく立ち入る者は、魔物と見なして処分する」
レオンが一歩前に出た。
「お前たちが、森を荒らし、精霊を歪めたのか」
男は冷たく笑った。
「ビジネスだ。需要があれば供給するだけ。『歪みの木の実』は、闇魔法の素材として飛ぶように売れる。王国の貴族たちでさえ、こぞって買い求める」
「王国の……貴族?」
レオンの声に緊張が走った。
男はさらに笑みを深めた。
「そうだ。我々の後ろ盾は、王国の枢機卿ルドルフ様だ。お前たちのような田舎者の勇者ごっこが、何ができるという?」
その瞬間、レオンはすべてを理解した。
通常の3倍のペースでの伐採命令。
新種の魔物の出現。
すべてはつながっていた。
商会は枢機卿の庇護の下、禁断の魔法素材を生産するために森の聖域を冒涜した。
その結果、歪められた精霊たちが魔物と化し、周囲を襲い始めた。
そして王国は、その魔物討伐のために『勇者パーティ』を派遣する——表向きは。
しかし真の目的は、魔物討伐を口実に森をさらに調査し、『歪みの木の実』の生産地を隠蔽することだった。
レオンをパーティから追放した真の理由も、これだったのかもしれない。
彼が真相に気づくことを恐れて。
「民衆の勇者として」
レオンが剣を構えた。
「お前たちの悪事を止める」
商会の男たちが一斉に襲いかかる。
彼らは単なる商人の護衛ではない。
訓練された戦士たちだった。
戦いが再開された。
ガレスが大斧を振るい、キースの矢が飛び、アーサーの魔法が光る。
そしてレオンは、かつてないほどの決意を込めて戦った。
これは王国のための戦いではない。
森の精霊のため、この地に住む人々のため、歪められた正義を取り戻すための戦いだ。




