第11話 歪みの木の実
作業員たちが恐怖に震えながら集まってきた。
その中の一人、傷ついた監督らしき男がレオンの前にひざまずいた。
「あ、ありがとうございます……あなた方は、王国の騎士ですか?」
レオンはゆっくりと首を振った。
「いいえ。私たちは……民衆の勇者です」
男の目に驚きの色が走った。
「でも、あなたの戦い方は……まるで……」
「かつての勇者レオン様に似ている、と言いたいのでしょう?」
キースが冷たく言った。
「それが正解だ。だが、今の彼は、王宮の勇者ではない」
レオンは作業員たちを見回した。
「ここで何が起こっている?ローレンツィア商会は、森で何をしている?」
監督はうつむいた。
「……命令です。通常の三倍のペースで伐採を進めろと。新しい種類の魔物の素材が高値で取引されていると聞きましたが……まさか、このような魔物が現れるとは」
アーサーが鋭く問いただした。
「新しい種類の魔物の素材?詳細を話せ」
「は、はい……黒い市場で、『歪みの木の実』というものが高値で取引されているそうです。それを手に入れるために、森の奥深くの聖域にまで手を出すように命令が下りました。一週間前のことです。それからすぐに、魔物の出現が始まったのです」
レオンとアーサーが視線を交わした。
すべてがつながり始めていた。
「聖域を冒涜したのだ」
アーサーが怒りを込めて言った。
「深緑の森の心臓部——古来より、森の精霊が最も濃く宿る場所だ。そこで何かを奪えば、精霊たちが怒り狂うのも無理はない」
「だが、ただの怒りではない」
キースが指摘した。
「あの魔物たち……彼らは単に怒っているだけじゃない。苦しんでいる。何者かによって歪められ、道具にされている」
レオンは深く息を吸った。
「ローレンツィア商会は、単なる木材会社ではない。彼らは意図的に森の精霊を歪め、魔物化させている。そして、その素材を闇市場で売りさばいている」
ガレスが拳を握りしめた。
「畜生……人間の欲望のために、森そのものを傷つけるとはな」
その時、森の奥から、不気味に光る緑のオーラがゆらめきながら立ち上るのが見えた。それはゆっくりと、不規則な鼓動を打ち始め、まるで傷ついた巨大な心臓のようだった。
アーサーが顔を上げた。
「あれは……森の心臓そのものが侵食され始めている」
レオンは剣を鞘に収め、仲間たちを見回した。
「私たちの戦いは、もう魔物退治ではない。森を蝕む病そのものと戦うことだ。そして、それをもたらした者たちと」




