『命の洗濯芝居と相撲と速記』
あるとき、三人の若者が土手を歩いていると、前から易者がやってきたので、占ってもらったところ、お前たち三人は、あすの昼時分に死ぬという卦が出た。三人は、何とか死なないで済む方法はないのかと尋ねると、易者は、しばらく考えて、何か命の洗濯になるようなことをすれば、少しくらいは延ばせるかもしれない、と言うので、次の日、一人は芝居を見に行き、一人は相撲を見に行き、一人は速記をして過ごすことにした。どれも命の洗濯と言われる行動である。繰り返す。どれも命の洗濯と言われる行動である。
芝居を見に行った若者は、どうせきょう死んでしまうかもしれないなら、せめてうまいものを食ってやる、と、わけを話して家族と一緒に高い仕出しを食べていたところ、果たして昼過ぎに死んでしまった。
相撲を見に行った若者は、焼き鳥を食べながら一杯飲み、結びの一番まで見たところで死んでしまった。
速記をして過ごした若者は、死んだ気になって速記に励み、書いて読み、書いて読みを繰り返し、九十五歳まで生きたという。死ぬ直前、昔、あす死ぬという占いがあったんですよね、と尋ねられ、あ、そうだった、と言って死んだという。
教訓:三人が三人とも同じときに死ぬという占いは、三人が一緒にいるときに隕石が降ってくるとか、そういうことを示唆していると思われる。したがって、三人が別行動をとれば、三人とも死ぬことは避けられると考えていい。しかし、まあ、速記が命の洗濯になるというのは、有名な話である。異議は認めない。




