表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『雨はまだ、君の名前を知らない』  作者: 臥亜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/11

「雨が止む前に」

世界が崩れていく音は、

案外、静かだ。

 

塔が崩れ、

空が割れ、

怪物が塵になっていく。

 

でも彼はまだ迷っている。

 

優しいから。

怖がりだから。

 

透は、わたしを見ている。

 

選びたくない顔で。

 

ああ、本当に。

最後まで、そうなんだ。

 

わたしは傘を閉じる。

この世界で最後の雨が、髪を濡らす。

 

「帰りなよ」

わたしは笑う。

うまく笑えているといいけれど。

 

「私を選ばないで」

 

その言葉は、本当だ。

 

彼がここに残れば、

わたしは続く。

 

でも、それは彼の始まりじゃない。

 

わたしは知っている。

あの日のブレーキ音の瞬間。

彼は、ほんの一瞬。

 

前に出ようとした。

 

それで十分だ。

 

だから今度は、

ちゃんと最後まで。

 

ねえ、透。

 

あなたは優しくなんかない。

 

強いんだよ。

 

選ぶことを、怖がるくらいに。

 

空が割れる。

光が差す。

 

彼の手が、わたしの手を離す。

 

痛くない。

 

わたしは最初から、

触れられる存在じゃなかったから。

 

でも。

 

もし、目を覚ましたら。

 

傘を持って。

 

雨の中を歩いて。

 

ちゃんと、濡れて。

 

それでも前に進んで。

 

それが、あなたの物語。

 

わたしは、ここまで。

 

さよなら。

 

 

――ああ。

やっと、雨が止む。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ