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『雨はまだ、君の名前を知らない』  作者: 臥亜


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10/11

「名前のない雨」 

雨は、まだ落ちきっていない。

 

雫は宙に浮いたまま、

行き先を決められずにいる。

 

この世界は、彼の迷いでできている。

だから、崩れるときも静かだ。

 

透は、きっと目を覚ます。

 

もう、わかる。

彼は選んだ。

 

わたしじゃない。

自分を。

 

それでいい。

それがいい。

 

あの日。

ブレーキ音が鳴った瞬間。

わたしは考えるより先に、体が動いた。

 

彼が前に出ようとしたのが見えたから。

 

ほんの一歩。

ほんの少し。

 

でも、それは確かに“選ぼうとした”動きだった。

 

それだけで、十分だった。

 

わたしは傘を持っていた。

透明な傘。

 

彼は持っていなかった。

 

だから、差し出した。

 

傘は雨を防ぐものじゃない。

覚悟を形にするものだ。

 

透。

 

あなたはもう、雨を怖がらない。

 

だから、わたしはここまで。

 

名前を呼ばれなくてもいい。

存在を覚えていなくてもいい。

 

でももし、目を覚ましたら。

 

ちゃんと、濡れて。

 

ちゃんと、傷ついて。

 

ちゃんと、生きて。

 

それが、あなたの“名前”。

 

雨が落ちる。

 

世界が、やっと重さを持つ。

 

わたしは、溶ける。

 

消えるんじゃない。

 

還るだけ。

 

まだ名前のなかった雨の中へ。

 

 

――さよなら。

 

透。

 

 

 

雫が、地面に触れる。

 

そして、音が生まれる。

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