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ウイニングショット  作者: 中村鉄也
第1章~改革前夜、「英雄」たちの大集合~
7/15

閑話休題〜改革への「再開発」、着工〜

 健一たちの入団テストを終えた翌日、杉山監督の姿はフェニックスの球団事務所が入る、紀伊建設の本社ビルにあった。いわゆる「オーナー報告」というやつで、シーズンの戦いぶりと来季への展望を現オーナーと代行の美穂へ語った。


「監督、この1年老体に鞭打ってようやってくれましたなあ〜」

「いえいえ、監督業は好きな仕事ですから苦ではありませんでした。こちらこそオーナーが快方に向かうような報告ができず申し訳ありません」


 現オーナーと杉山監督は来年に傘寿を迎える高校の同級生であったが、年齢を感じさせない健脚でスラリと立つ杉山監督とは対照的に、美穂の押す車椅子にてほっそりとした身体を預けていた。生粋の野球好きであり、球団誕生以来オーナー業に粉骨砕身し深い愛情でチームを見守ってきたが、数年前に大病を患い自力歩行が厳しくなるなどその地位に居続けられるのは誰の目に見ても明らかだった。


「せやけど倅も薄情なもんや。『何の取り柄もないチームら持っててもしゃーない』とすっかり球団をお荷物扱いや。せやさかい、孫の美穂に後継ぎ任せないかんことになってしもうたわ…あと5年はワシが引っ張りたいんやけどなあ…」

「オーナー、ご心配には及びません。美穂さんはあなたの球団愛をよく受け継いでおられる。次代に相応しいと思いますよ」

「そない言うてくれて助かりますわ」


 こうして和やかに進んだ会談後、記者会見にて来シーズンから美穂が新オーナーの地位に就くことが正式に決まった。そしていよいよ杉山監督の改革が本格的に進むことになった。



 その第一弾が、戦力の再編…戦力外通告だった。


 この日、10人以上の選手がスーツ姿で球団事務所に訪れたが、待ち構えていたマスコミたちは戸惑っていた。なにせ、二軍でくすぶっている中堅どころだけでなく、開幕戦のスタメンに名を連ねた主力メンバーも含まれていたからだ。


「…正直、ショックです。なんでだろ…」


 マスコミの囲み取材に応じたのは小山。一番打者としてセンターを守っていたが、まるで釈放された芸能人のように憔悴しきった表情でぽつりぽつりと語った。他にも、二番セカンドでプレーした水野、五番ライトに入っていた山内、六番レフトで起用された小松、七番サードの浜田も入っていた。特に小山と山内はシーズン最終戦にも出場していた。そして最大の衝撃が、そのメンバーに高野が入ってたことだった。


「いや~、僕今年FA権持ってるんでその下交渉かなと…そしたら監督がいらしてましてねえ。はっきり言われましたよ。『もう使う気ないので出て行ってください』ってねえ」


 苦笑いで饒舌に応じた高野だったが、目には怒りのようなものが宿っていた。


「この10年、打線を引っ張ってたって自負はあります。今年も三割打ちましたからね。何が気に入らなかったんでしょうねえ…。それとも、経営が厳しいんでしょうかねえ…。まあ、オーナーのお孫さんが新オーナーってことは、よっぽどここのトップが貧乏くじ扱いってことなんですかね~」


 そう笑いながら、彼は早足で去っていった。



「ずいぶんと大ナタを振るわれましたね」

 窓から囲み取材の様子を見ていた美穂は、杉山監督に言う。対して、杉山監督は笑みをたたえながら、それでいて冷たく言い放った。


「いくら打てようが気のないプレーをするような連中はいても邪魔なだけ。金がかかるなら払うだけ無駄です。まあ、再開発において古い家屋を撤去しただけですよ。今後のドラフトや補強が勝負ですよ」


 新生・和歌山フェニックスは動き出したばかり…。

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