10月31日、玄関先にて
初作品です。甘めに見てもらえると助かります。
「トリックオアトリート、ですよ玲くん」
登校する準備も大体済ませて朝ご飯を食べようとすると、チャイムが鳴った。
こんな早くに誰だとドアを開けると、そこには最愛の彼女がいた。
「……トリックオアトリート、だな」
そういえば今日ってハロウィンか。今の今まで完全に忘れていた。
「ふふ、その間の空き方はやはり忘れていましたよね?」
一瞬で見抜かれてしまった。いや流石にばれるか。なんなら顔に書いてあったかもしれない。
「ばれたか」
「まあ玲くんちょっとずぼらなところがありますからね」
「ちょっとで済むか分からないけどな」
「でも家はそんなに散らかっていないようですし、まあ大丈夫ですよ」
「ならいいか」
リビングや廊下が綺麗なだけで自分の部屋はもう少し散らかっているのだが、それは黙っておく。
「それより」
「何でしょうか」
「お菓子をくれないといたずらしちゃいます」
「いたずら」
「いたずらです」
「いたずらというと?」
「えっと…… そうですね」
どうやら悩んでいるご様子。
まあいつも温厚でいたずらなんてほとんどしないし仕方ないだろう。
しかし悩んでいる様子もかわいいのでもう少し様子を見てみる。
「えっと、玲くんが席を離れている間にシャーペンの芯をちょっと取っちゃいます」
あまりにもかわいいいたずらを提示されて少し笑ってしまう。
「なるほど、ちょっとだけ困るな」
「ええ、ちょっとだけ困っちゃいます」
まあ少しのシャーペンの芯で笑顔が見れるなら安いものだ。
「なのでお菓子を下さい」
「んー、ちょっと待ってて」
お菓子とかあったかな?一応冷蔵庫の中を見てみる。
……ない。やはりちゃんとカレンダーを見ておくべきだった。
仕方ないがとりあえず玄関まで戻って伝えるか。
「ごめん何もなかった」
「そうですか……」
と言ってとても残念そうな顔をする。うっ、罪悪感が。
「放課後また買ってくるからそれで妥協してくれ」
「……なら一緒について行ってもいいですか?」
と言って今度はとてもわくわくした笑顔を浮かべる。こんな笑顔見たら断れるわけがないだろう。いや元から断る気なんてないのだが。
「それは全然いいけど」
「やったぁ……!放課後楽しみにしておきます」
眩しい。笑顔がとても眩しい。今お菓子があったらこの笑顔が見られなかったと考えるとお菓子がなくてよかったのかもしれない。
「じゃあまた学校で。朝ごはんも食べ終わってないようですしね」
「そういえばそうだった。じゃあまたな」
「はい、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
気持ち長めに手を振ってからドアを閉める。
冷めているはずの目玉焼きがちょっとだけ温かく感じられた。




