表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

58/61

番外編15∶約束の夕刻と、罰の庭園

ジュリアは、ピナの叫び声のする庭園へと駆け出した。

息を切らしながら辿り着いた先――

そこにあった光景に、足が止まる。

衛兵に押さえつけられ、鞭を打たれているピナ。

その細い体が打たれるたびに跳ね、悲鳴が響く。

そして――それを見下ろす、父グラヴィスの姿。

「……え……」

信じられない光景に、思考が止まる。

だが次の瞬間、ジュリアははっと我に返り、駆け出した。

「父上!!なぜピナをこんな目にあわせるのですか!?やめてください!!」

その声に、グラヴィスがゆっくりと振り向く。

「……ジュリア」

そして、ふっと表情を緩めた。

「帰って来たんだね。無事で良かった」

そう言って、何事もなかったかのように優しく抱きしめる。

背後では、なおも――

パシン、と乾いた音が響く。

(なに……これ……)

温かいはずの腕の中で、ジュリアの背筋に冷たいものが走る。

(いつもの父上……なのに……どうして……)

グラヴィスはジュリアの肩に手を置き、静かに問いかけた。

「ジュリア……ベールはどうしたんだい?」

その間にも、ピナの悲鳴が続く。

ジュリアは首を振った。

「それより、やめさせてください!ピナが……!」

傍らに控えていたジェニエットも口を開く。

「グラヴィス様、おやめください。このままでは……」

だがグラヴィスは、わずかに眉を寄せただけだった。

「話を逸らしてはいけないよ、ジュリア」

穏やかな声。だが、その奥に冷たいものがある。

「君はこの国の宰相の娘であり……私の宝だ」

「その君を危険に晒した。職務を怠った者には、相応の罰が必要だ」

――パシンッ!!

鋭い音に、ジュリアの体がびくりと震える。

(違う……違うの……私が……)

「お願いです……やめてください……!」

涙が溢れ、声が震える。

「悪いのは……私です……!私が勝手に外へ……!」

その言葉に、グラヴィスは一瞬だけ目を細めた。

そして、ふっと息を吐く。

「……もう良い」

「そのメイドを手当てしてやれ」

鞭が止まる。

ピナの体が力なく崩れ落ちた。

ジュリアは思わず駆け寄ろうとする――が、

「ジュリア」

低い声に呼び止められ、足が止まる。

振り向くと、グラヴィスが静かにこちらを見ていた。

「これは、主である君の責任でもあるのだよ」

逃げ場のない言葉。

「これを機に、よく考えなさい」

そして、淡々と告げる。

「しばらく外出は禁止だ」

「……っ、そんな……!」

思わず声が漏れる。

(明日……約束したのに……)

だが、視界の端に映る――

血に濡れ、動かないピナの姿。

その瞬間、言葉は喉で凍りついた。

――何も、言えなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ