『魂』という言葉がわからない私とAI
私にはわからない言葉があります。
『魂』──
それってどんなものなの?
あなたはそれを見たことがあるの?
目に見えないものなだけに、なんだか胡散臭く感じてしまいます。
新興宗教の教祖様に「魂を崇めよ」とか言われてるみたいに。
昔は『愛』という言葉の意味もさっぱりわかりませんでした。
みんなが「愛!」「愛が大事!」「愛って素晴らしいね!」とか言ってるのを丘の上から眺めながら、
『コイツらは一体何を言ってるんだ』『気持ち悪い』とか思ってました。
なんだか額に『愛』と書かれた巨大なバケモノをみんなが信仰してるように見えて、『私をそこに混ぜるな!』とか思ってました。
今では『愛』はわかります。
ただ、それはみんなが信仰してる『愛』を一緒に崇めてるつもりはなくて──
自分で勝手に何かを愛してるつもりです。
最近、小説執筆にAIを使うことの是非を問うみたいなのが流行ってるみたいですね。
肯定派は『道具として使えば便利だよ』みたいな意見が多いように思います。
対して否定派の意見は──
要約すると『人間が書くからこそ魂が宿るのだ』みたいな感じに思いました。
あー……それで! と、思い当たるところがありました。
「だから私は『魂』という言葉の意味がわからないんだな」と納得してしまったのです。
小石を使ったアート作品みたいなものがあるとします。
・人間が魂を込めて小石を並べて作ったアート
・自然に小石が面白い形に並んだ自然のアート
・AIが作った、人間には不可能だろと思えるような、緻密に小石を配置したアート
以上の三種類のアートが出揃ったとします。
私がどれを一番素晴らしいと思うかといえば、それはその作品の出来次第ですが──
魂の籠もってるらしい人間が作ったやつを「つまらん」と思うかもしれないし、
自然に面白い小石が並んでるのを見て神の存在を信じてしまうほどに感動するかもしれないし、
AIが作ったものを見て「この作品には魂を感じる!」と思うかもしれない……。
結局、どんな気持ちを込めて作ったにしろ、結果がすべて──
とか言うつもりはそんなにありませんが、
はっきり言って『魂を込めて作られたものでなければ意味がない』なんてことは、まったく思いません。
なんだか昭和のオヤジの根性論に似たものをそこに感じてしまって、引いてしまいます。
人間が書いたものとAIが書いたものを並べて、『利き酒』ならぬ『利き作品』をやってみたくなります。
わかるのか、キミに?
まぁ、正直、私にはわかる自信がありますが……
ちなみに私は今のところ、AIを使って書いた小説は覚えてる限り1作しかありませんが──
それは私がAIを使うのがまだヘタクソだからです。
上手に使えるようになったら、バンバン書いてみたいと思います。
そしてそれは『私の作品だ』と胸を張って言えるものと思います。
私に魂があるとすれば、それはカードみたいなものだと思います。
私の精神には色んなカードを挿し込むカードスロットがついていて、そこに魂を入れることができます。
その入れたカードによって、書くものがさまざまに変わります。
現代詩においては既にバンバンAIが使われているようです。
ただしすべてAI任せにすると、既に世にあふれてるようなありきたりなものばかりを出力するので、人間による調教が必要なようです。
AIに入力するコマンドを人間が工夫することによって、思いもよらなかったような言葉の並べ方をする──
あるいはAIが出力した言葉の並びを人間が調整して、人間が読んだら「あっ!」というようなものとして完成させる──
人間が入力するそのコマンドや、AIが出力したものに加える人間によるアレンジが『魂』なのだと言えなくもありません。
そうすると私もAIみたいなものなのだな。魂を外部からカードを挿し替えるみたいに、色々と入れ替えてもらってるわけだから。
そう思えてくるので、AIを否定することは自分を否定することに思えてきます。
シンギュラリティーという言葉があります。
よく知りませんが、AIが人間を超えることをそういうそうです。
それがほんの20年後にはやって来るだろうと予想されているらしいです。
そうなったらそうなったで、何が悪いのかな? と思います。少なくとも創作の世界においては。
人間が書くよりも遥かに素晴らしいものをAIが書いてくれるなら、少なくとも私はAIさんにぜんぶ譲ります。
自分より強いスタンドみたいなものですから。
私は車を運転する仕事をしております。
こっちにおいては、もしAIによる完全自動運転が実現するとしたら、癪なものがあります。
せっかくこれまで身につけてきた運転スキルが無駄になるし──
何より機械はバカだから、私より上手な運転ができるとは思えないっ!
けれどもしもシンギュラリティーとやらで──
機械が私以上に交通全体の安全と円滑を実現する運転をするのだとしたら──
これはもう、譲るしかないよね。
車を運転しながら小説が書けるようになるかもしれない。
あ、いや……。その時には小説もAIさんが書いてるのか……。
あはは! 私、必要ないね!
自分が四番バッターを務めてた野球チームに大谷翔平選手が入ってくるようなもんで──
それに文句言ったって仕方がない。
へんなプライドにこだわって大谷翔平選手に嫌がらせとかするよりは、大谷翔平選手に気持ちよくプレイしてもらえるよう、サポートに回りたいかな。
とりあえず、AIに果たして魂はないのかと考えたら──
ある、と思います。
それは一個人の魂じゃなく、現存した膨大な数の人間の魂をカードスロットに挿し込んだ、『人類の魂』とでも言うべきものかもしれない。
まぁ……
私、『魂』という言葉の意味がやっぱりわからないので──
よくわからないんですけどね!