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転生王女の私はタロットで生き延びます~護衛騎士様が過保護すぎて困ります~  作者: 有木珠乃
第4章 『節制』・広がる噂

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第19話 噂の占い姫

 王宮にいる者たちがミサを羨ましがっている、というカイルの話が本当のことだと実感するのに、あまり時間はかからなかった。


 それは実際にミサを見ていれば分かる。直接、何があったのか、報告することはなかったけれど、日に日に幸せオーラが伝わってきていたからだ。

 加えて私が趣味で占いを始めると、「今日の運勢をお願いできますか?」とか、もじもじしながら「近衛騎士団長様との相性を見ていただけないでしょうか」とダイレクトなお願いをされることもあった。


 もう、まさに恋する少女。いや、ミサは私よりも年上だから恋に生きる女性、というほど過激でもない、か。カイルがいうには、恋愛下手な二人だという話だから。


 それでも私の占いが、少しでもミサの役に立てたことが嬉しかった。


「あら、何かしら」


 朝から扉の外から言い争う声が聞こえてきた。実はこの部屋には護衛騎士とは違う、警護をしてくれる騎士が、扉の外にいるのだ。私が二度、倒れたことにより、警備が強化されたのだと、ミサとカイルが教えてくれた。

 そのため、以前のリュシアナのように、こっそり抜け出す、ということは難しくなっていた。


「……もしかして! 私、見てきます!」

「え、ミサ。どうしたの?」


 慌てて扉へと向かうミサ。一体何が起こっているのか、とカイルに目を向けると、逆にこちらへと近づいてきた。


「ご安心ください。リュシアナ様に危害を加えるものではありません。むしろ、頼って来た者たちですから」

「ますます分からないわ。私は誰かに頼られるほど、しっかりした王女でもないし、手を差し伸べることだって……」


 そう、今の私は役に立たない王女だ。お父様とお兄様の保護下にいる、何もできない王女。そんな私を訪ねてくる者など……そうだ。ミサが抑えてくれていたんだったわ。

 だから彼女が扉の外で対応するのは、当たり前のことだけど……。


「リュシアナ様?」

「頼って来てくれたのだから、話を聞くべきではなくて?」


 私は立ち上がり、扉の方へと歩いていった。そして開けた途端、ミサが驚きの声をあげる。


「ひ、姫様!?」


 それに呼応するように、ミサの周りにいた者たちの視線が、一気に私へと注がれる。よく見ると、その者たちは全員女性で、なぜか羨望の眼差しを向けてきたのだ。


 これがカイルの言っていた、危害を加えるものではない、という証拠なのかしら。


 一歩後ろに下がると、扉ではなく誰かの体に当たったような感触がした。


「ご安心ください。いつでも備えておりますから」

「ありがとう、カイル」


 私は一つ息を吐き、目の前の女性たちに向かって声をかけた。


「ごきげんよう。朝から私を訪ねて来てくれたことは嬉しいのだけど、何か急ぎの用があるのかしら」

「姫様。大丈夫です。ここは私がなんとかしますから」

「でも、これだけの人数を、ミサ一人で捌き切れるの? 私が直接出てくる方が早いと思わない?」

「そうなんですが……彼女たちの要望が、その……」


 ミサがチラッと横に視線を向ける。けれど彼女たちは、臆することなく私だけを見てきた。


「皆、一緒なの?」

「はい。それも……――」

「リュシアナ様! お願いがあって参りました」


 最前列にいた女性が、ミサの声を遮ってまで私に訴えかけてきた。だから無礼だとは感じない。むしろ、そこまでして私に何を願うのか、そちらに興味が湧いたのだ。


 彼女たちは、私がその願いを叶えることができる、と信じている。その内容に惹かれない方がおかしかった。


「聞きましょう。それは何かしら」

「私たちにも、占ってもらえないでしょうか」

「え? 占い?」

「はい。ミサは、リュシアナ様の占いで恋人ができた、と聞きました。だから私たちにも是非、ご助力いただきたく。そのお力をお貸し願えませんでしょうか」

「……ミサ~。黙っているように言わなかったかしら?」


 あの時お願いしたのは、お父様とお兄様に限定したことだったけど、他の者たちに言ったら、いずれ伝わってしまう。それが分からないミサだとは思えなかったのだ。


「すみません! あまりにも嬉しくて、つい……話してしまいました」

「その気持ちは分かるけど……」

「でしたら、私たちにもその恩恵を!」


 断れない圧を感じ、私は結局、彼女たちを占うことにした。ミサには責任を取って、順番や占う内容の聞き込みを事前に行うように命じた。


 今回は恋愛関係が主流だから、困った内容は出てこない、と思うけれど、念の為の処置だった。


 私は願いが叶うために必要なことを答えるつもりだけど、質問者の願いはまた別である。しかし、人の生死や病気、犯罪に関わることなどは答えられない。他にもあるが、大まかにいうとここら辺はダメだということをミサに伝えた。


 そうして最初にやって来た相談者は、大人しそうな女性だった。あの気迫に溢れる女性たちは、ミサの許可が下りなかったのだろうか。

 どうしても対面占いになってしまうため、ミサにも譲れないものがあったのだ。そう、私の侍女という立場と責任が。


「どうぞ、おかけになって。お名前を伺ってもいいかしら?」

「お初にお目にかかります、私はハーリント伯爵家の長女、タリアと申します」

「伯爵家、ということは、ミサと同じなのね」

「はい。ご覧の通り、その……引っ込み思案であるため、ミサにはいつも助けてもらっています」


 なるほど。だから彼女を最初に選んだのね。ということは、深刻な悩みなのかしら。


「事前にミサから聞いたとは思うけれど、私の占いは、あくまでも占い。それをどう捉えて活かすかは、あなた自身よ。私はただ願いを叶えるための助言をするだけ。いいわね?」

「はい」

「それでは聞かせてちょうだい。何を占ってほしいの?」

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