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転生王女の私はタロットで生き延びます~護衛騎士様が過保護すぎて困ります~  作者: 有木珠乃
第4章 『節制』・広がる噂

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第17話 占いの結果に……

「質問の内容なんだけど、さっきミサはお相手についてって言っていたわよね」


 まずはミサのことを知っているけれど、実際にどこまで占ってほしいのか、までは知らない。そこは本人のみぞ知るところ、というものだからだ。


「直接タロットカードに、彼氏はできますか? と聞くことはできるけれど、どんな人とか、どこで出会うか、までは難しいと思うの」

「そうなんですか……」


 やっぱり、ミサが聞きたいのは、そこの部分なのね。


 私は沈み込んでいるミサに向かって手を伸ばし、笑顔を向けた。


「大丈夫。ミサの次の恋の展開を教えてください、と聞けば、相手像や出会い方とか、抽象的になるかもしれないけど、カードが教えてくれると思うわ」

「本当ですか?」

「そこは……実際に引いてみないと、ね。さすがの私も断言はできないわ」


 ミサの期待の眼差しを受けて、気持ちが推し負けそうになった。すると、テーブルにカイルが近づいてくる。


「俺も、その……近くで見てもよろしいでしょうか」

「私は構わないけど……」

「大丈夫です! それよりも、お願いします」

「分かったわ」


 ちょっと、いやかなり緊張する場面になってしまったような気がした。けれど急かしているミサを見ていたら、私の緊張など、すぐに掻き消えた。


 占いって、どこの世界でも気になるものよね。ましてや恋愛なら、尚更だわ。


「前は大アルカナだけを使ったけれど、今回はタロットカード七十八枚全部を使うわ。その方が色々な読み方ができるから。あと、展開するのは三枚。ミサから見て、左から現状、アドバイス。そして最後は近い未来の展望で見ていくわね」


 私は両手でタロットカードを包み込み、心の中でミサの次の恋の展開を教えてください、と念じた。また、正位置のみを採用することも忘れずに。

 そしてカードの裏面を叩き、トランプのようにカットする。それから三つの山を作り、一つにまとめると、次はカードの上から六枚取り、そのまま横に置いた。


 七枚目は裏面のまま、ミサの前に置いていく。

 前回は一枚だったから深く考えなかったけど、対面式なんだから、ミサに向けて右から置くのが当たり前よね。私からは逆さになるけど、正位置で、とお願いしているから大丈夫。読み間違えることはない。


 私は手を伸ばして、一枚目を捲った。


「ミサの現状は、ペンタクルの三。これは技術力のカードだから、まさに今のミサの立ち位置ね。つまり、今は気になっている人がいない、ということかしら。それとも、職場に気になる人がいる、とか?」


 思わずカイルを見ると、ミサが慌てて手を横に振って否定した。


「た、確かに好きな相手はいませんが、ヴァレンティア卿を選ぶことは、絶対にありません!」

「そうなの? 素敵だと思うけれど」

「……だからこそです」


 どういう意味? と聞く前に、カイルから「次のカードに移った方が……」と指摘されてしまった。ミサを見ると、同意するように頷かれ、私は真ん中のカードを捲る。


「アドバイスはペンタクルのナイト。普通に読むと、勤勉や現実性のカードだから、ミサの仕事に対する姿勢を、好ましいと見ている人がいるのかもしれないわね。でもナイトだから、騎士という可能性もあるわ」

「姫様。この王宮にはヴァレンティア卿の他に、たくさんの騎士様がいます」

「そうね。これについては、あとで深掘りしてみましょうか」


 どのような相手ですか? とかね。もしかしたら、カイルの知っている人かもしれないし、そうだったら、ミサに紹介できるのではないかしら。


「最後は展望ね。ワンドの十かぁ」

「どうしたのですか?」

「うーん。このカードは重圧を意味するの。見て、十本の棒を重そうに持っているでしょう? だからたとえ恋が成就しても、その先に色々な責任や期待がついてくると思うの。真面目なミサのことだから、すべてを受け止めてしまうかもしれないけど、無理はしないようにね」

「……姫様付きの侍女ですから、お付き合いともなれば、やはりそう……なりますよね」


 確かに、ミサの立場を考えるとそうかもしれない。友達みたいに結婚して王宮を出る、なんてなったら、ミサはどうするのだろうか。

 このワンドの十のように、たくさんのものを抱え込みそうだわ。


「さぁ、気を取り直して、さっき後回しにしてしまった、お相手について聞いてみましょう。このペンタクルのナイトが、どのような方なのか、をね」


 私は再びカードに尋ねて、一枚のカードを引いた。すると……。


「えっ、キャッ! これは凄い!」

「姫様?」

「ごめんなさい、良いカードが出てきたものだから、思わずはしゃいでしまったの」

「そんなに、ですか?」


 ミサだけでなく、カイルも驚いた声を出した。それもそうだろう。騎士の誰かかも、と読んだのだから。それを踏まえた上で、このカードだ。


「ペンタクルのエース。これは実力を意味するカードなの。さらにペンタクルは、絵柄を見て分かるように、金貨だから地位や財産も意味している。つまり……」

「騎士団長レベルの人物、ということですか」

「おそらくね。アドバイスでペンタクルのナイトが出ていたんだもの。すでに出会っているんだとしたら、アプローチをするのもいいかもしれないわ。見て、ペンタクルのナイトもエースも、ワンドの十の方を見ている。この背中を見ているのよ。ミサの重荷を軽くしたい、と思っているのかもしれないわ」


 あぁ、そうか。こんな風にも読めるのね。いつも自分のことばかりだったから、あまり深掘りしなかったけれど。


「あとはそうね。ペンタクルのナイトは黒い馬に乗っているから、そういう人……いるかしら」

「はい。ちょうど俺の直属の上司に……」

「ヴァレンティア卿……その方って、先日、姫様のお部屋を訪ねてきた方ですよね」

「あぁ」

「え、何々。何かあったの?」


 私はあの時、チラッとしか見ていなかったけれど、確かにイケメンに見えた。カイルよりも騎士らしくて、騎士団長と言われたら、納得するほどの風貌と貫禄を備えた人物だった。


「厨房から戻って来る時に、廊下でお会いしまして。このカードを届けに来たことなど、色々と教えてくださったんです。あと、クラリーチェ殿下の動向に気をつけるように、とも忠告を受けました」

「……それで遅かったのね」

「はい。その前から、困っているところを助けていただいたり、色々と教えていただいたりしてくれていたのですが……あれって、そういうことだったんですかー?」

「よく分からないけど、おそらくね。さり気なくミサにアプローチしていたんじゃないかしら。このペンタクルのナイトが騎士団長なら、ありえそうね。恋愛は奥手のようだから」

「分かりました。私、アプローチしてみます!」


 ミサはそう言うと立ち上がり、部屋から出て行ってしまった。


「もしかして、俺をリュシアナ様の護衛に推薦してくれたのも……ミサ殿がいたから、か?」


 カイルもまた、この結果に驚いたのだろう。私が傍にいるのにもかかわらず、そんな呟きをした。

 お読みいただきありがとうございました。

 今回の占いも私が引かせていただきました。

 最初の三枚を引いた時、とりあえず読んだのをそのまま書くか、といった感じで書いていったら……まさかのペンタクルのエースに、このまま採用した次第です。

 リュシアナのように、思わずはしゃいでしまいました。

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