3.妖精との出会い
女だからとやらせてもらえなかった公務以外の知識、国史。また、戦術、魔術。これを今のうちからこなすしか無い。
家庭教師は雇えないし、情報もなしに独学でやるのもきつい。
あぁ!地下図書室で本を探せばいいのか!あそこには誰も寄りつかないし、禁じられた魔術本もしまってあるらしい。それに何があるか気になるし…。
そう思った私は、侍女達の目を盗んで地下図書室に忍び込んだ。
「ここが、地下図書室…?」
重い扉を母の書室から盗んだ鍵で開ける。
そこには、本棚がたくさん積み上げられており、羽が生えた本が飛び回っていた。そして、埃っぽい空気のせいで何度か咳き込む。
本の背を見て魔術関係らしい本を探す。
「あれ、これはなんだろう?」
一つだけ、とりわけ分厚くてボロボロの本を見つけた。背には何語かわからない言葉が書いており、謎の木簡のようなものが掛かっている。
私は気になり、本を開いてみるとどこからか煙が出てきて私を囲み出した。そしてどんどん形を持ち始め、12歳くらいの少年の姿になった。
「ふーん、こんなおチビが僕の主なんだね」
不機嫌を装っているか、少し嬉しそうに弾んでいる少年の声。
カラスの濡羽色の様な艶のある黒髪に黒曜石のような瞳。とても美しい少年だなぁと思って見つめていると、
「なんでそんなに見つめてくるの?」
とジト目で見つめてきた。
「えっと、あなたはどなたでしょう?」
「僕は名も無き魔導書の精霊だよ。」
昔から存在している魔導書には精霊が現れると聞いたことはあるが、本当だったとは。