逆
金城ツカサ 13才 誕生日 3月31日
好きなもの
お父さんとお母さん
スーパーヒーロー大作戦
嫌いなもの
好きなものを馬鹿にするヤツ
いつ死んでもおかしくない体が、5年前、急に回復の兆しが見えた。
奇跡とも言えるこのことの実態を、本人は親に話せずにいる。
本当に強い主人公とはなんだろうか?
最強の力を持っている。
圧倒的カリスマ。
違う。
心だ。
強い心が主人公の証だ。
昔ながらの根性論だって笑われるかな?
でも、僕はそう思ってる。
心が成長しなければ、強さは意味を持たない。もっと言えば、心がそのままであれば、その程度の人格だと思う。
父さん母さんは僕の為に毎日頑張ってる。
その頑張りを僕は台無しにしてはいけない。僕が弱気になってはダメなんだ。
「ねぇねぇ、あの子って動けないの?」
「そうよ。でもね、ずっと治そうって頑張ってるのよ?」
「へー………」
生まれてからずっと、外に出たことがない。
先天性の心疾患で、チューブを繋いでなければ満足に呼吸ができない。
「なぁなぁ!一緒にゲームしない?」
名前の知らない少年は、暇さえあれば僕の病室に遊びに来た。
「せっかくデカいテレビあるんだからさぁー、この画面でゲームやったらいいよな!」
この時はまだ、言葉を発することはできなかった。
「でもよー、2人してゲームするんだから、一緒に楽しめるゲームがいいよなぁ〜…今度、母ちゃんに買って貰うよ!それまで、今あるゲームで我慢してくれよな?」
僕は少年がゲームをやる姿が好きだった。
勇者になって敵をやっつけたり、建物を建築したり、牧場を経営したり…色んなゲームを観せてくれた。
「なあ見ろよ!母ちゃんが新しいゲーム買ってくれたんだ!『スーパーヒーロー大作戦Go!』色んなヒーローやロボットが出てきて、オレたちが命令して動かすゲームなんだって!ちょー面白そうじゃない!?さっそく一緒にやろうぜ!!!」
戦略シミュレーション。自分と敵のターンがあり、キャラクターを動かして闘わせるゲーム。
勝利条件は敵の殲滅だったり、防衛戦だったりとさまざま。若い僕らには少し難しいゲームだった。
「えぇ〜!?第一話なのに、圧倒的不利じゃん!どうすればいいんだ…?」
「…」
「えっ?半壊した施設の中で戦えばいいのか?…わかった。相手が近づいたら、倒す方向ね。やってみるよ!」
「…」
「ゲッ!?更に敵が増えて、囲まれちゃった!…でも、なんかボーナスでダメージ減少と回避率がアップしてるっぽい…?全然余裕かも!」
「…」
「あっ!やる気ゲージMAXで主人公の必殺技見れるぞ!使ってみるか!」
デレッテレデレッテーデレッテレッテデレッテー
この数…凌いでみせるッ!!!
いけっ!ファングッ!!!
てやっ!
はぁぁぁっ!!!
龍よ、切り裂けッ!
今だっ!二神龍虎流奥義ッ!!!!!
ランページ・ヘヴンエンエーフ!!!
チェストぉぉぉぉおおおおお!!!!!
「そんなボコボコにしなくたって〜」
ドカーン Critical 1145364ダメージ
二神龍虎に、敵うものなしっ!!!
「かっ…カッケェェェ!!!なあ!見たかよ!?しょーじき、コズミックマンたちしかキョーミなかったけどさ!めちゃくちゃいいじゃん!」
この日、僕は色んなキャラクターを知る。
ギャラクティカ
コスモエバース
鏡戦士パラレル
ユニバースポリス ザ・サン
コズミックマンシリーズ
マスク英雄シリーズ
陸戦機兵リゼルヴァ
陸戦機兵リゼルヴァ23
空戦機兵アンノウン
空戦機兵ゴースト
空戦機兵クリア
海戦機兵ガレオン
海戦機兵アルマダ
海戦機兵トラファルガー
潜水機兵ディープ
対宇宙外生命体対策機兵イース
WKSオリジナル
僕と少年は、ほぼ毎日このゲームをやった。
「やっぱ、ギャラクティカかっこいいよな!大宇宙破壊光線!!!このポーズかっけぇよな!イェーイ!」
僕が戦略を立てて、少年が動かす。
「う〜ん…誰を強化しよっかなぁ〜…みんな強いから、均等に育てたいよなー。そう思わない?」
僕と少年は、2人で最強だった。
「なぁ?…オレがロボットになっても、友達だよな?…いやさ、機兵カッケェじゃん?ちょっと憧れてさー…続きやろうぜ!」
このゲームをクリアした後、少年は来なくなった。
ある日、少年の母親らしき人が尋ねてきた。
「ナースから聞いて来たのだけど…君があの子と遊んでくれてた子だったのね?…あの子から、伝言を頼まれたの。ゲーム機あげてねって…貰ってくれる?」
少年が動かしていたゲーム機を僕は譲り受けた。
誕生日の日。
「おめでとう、ツカサ」
「9才の誕生日、おめでとう」
「同じ病院の子に、ゲーム機譲って貰ったんだって?ふふっ、ありがたいなぁ…」
「ねぇ、ツカサ?欲しいゲームあるの?」
「…」
一生懸命に手を動かした。
す
ー
は
゜
ー
ひ
ー
ろ
ー
た
゛
い
さ
く
せ
ん
「…ぁ」
た
゛
め
?
「………くっ…!そうだな、父さんと母さんで代わりばんこだし、週に1・2回しかできないけど、大丈夫か?」
「…ぐすっ………待っててね、ツカサ。お母さん、すぐ買ってきて…あげるから。うぅ…」
この誕生日、初めて父さんと母さんが嬉し涙を流した日だった。
そして、初めて僕が何かを欲しがった日でもあった。
「なぁ、アイツ。ずっとゲームばっかりやってるよな?」
「ゲームばっかやって、頭悪そうだもんな。あと、気持ち悪い。なんだよ、あのチューブ…ベッドから生えてんのかな?」
「おい…こっち見てるって!早く外出ようぜ…」
「うわぁ…キモキモ…」
僕がスーパーヒーロー大作戦をやって身についたこと…分析能力。
何らかの理由で入院したAくんとBくん。Bくんはこのあと、足を怪我するだろう。引きずって歩いてるのが見えた。Aくんは…時間の使い方を知らないんだ。体を動かすことだけが、取り柄なんだろうな。可哀想に…
学校に行けない僕の為に、母さんは新聞紙と参考書を持ってきてくれた。僕が暇な時はこれに勤しむ。
「なぁ、ツカサ。ゲームだけだと、出てる作品のことよくわからないんじゃないか?観たいとは思わないか?」
「…み…だい」
「…そうか。今度、レンタルショップで借りてくるよ。何がいい?やっぱ、コズミックマンのやつか?」
「…じ…がう」
キャラクターに指を指した。
潜水機兵ディープ OVA全3巻
海戦機兵の外伝作品。
海底都市アトランティスで発見された機兵ディープ。それをめぐって人類同士と海底人の争いが描かれる。
主人公機は海中専門の旧式、伊号零壱を操り戦場に赴く。機兵シリーズでは異例の、主人公がタイトルの機兵に乗らずに終わる作品である。
スーパーヒーロー大作戦では、ディープに乗った主人公が見れるが、一部のファンからは伊号零壱に乗ってる方が強いのでは?と議論されている。
「はじめまして金城ツカサくん。新しい担当医の志島ナツです。よろしくね?」
「よろしく、お願いします」
「えっと〜…へー。リハビリ前は、頑張って勉強してたんだ。やるじゃん!」
「母さんは、みんなより、頭いいって、言ってくれます」
「その通りだと思うよ。他の子と比べて、時間の使い方上手だとアタシは思うよ?」
「お世辞、ですか?」
「お世辞じゃないよー………」
「どうしました?」
「ツカサくんって呼んでいい?」
「…はい」
「ツカサくんはさ…特別な力って存在すると思う?」
「特別な、力?」
「世人って言うんだけど、興味ある?」
「………あります」
2024/4/16 pm8:16
「どうした植野?まだ帰らないのか?」
「帰っても、アンタは監視するだろ?霧島さん…」
「要件は?」
「俺があんな奴に劣ってるだと?」
「くだらない。それだけか?」
「………俺とあの馬鹿で何をさせようとしてる?」
「…1人、保護して欲しい世人がいる」
「保護?」
「名は牧野千児。有名人だ。知ってるだろ?」
「知らん」
「テレビぐらい見ろ。売れっ子マジシャンだ」
「そいつがどうかしたのか?親にでも殺されそうなのか?」
「いや、親は…」
「…?」
「牧野が使う能力は、我々3人じゃどうにもできない。だが、お前と東なら…どうにかなるかもな…」
「ちょっと待った。3人?2人組じゃないのか?」
「お前より強い世人はこっちには居る」
「…誰だよ?」
「訳ありでな。そうだな…19日夕方、またここに来い。合わせてやる」
「…わかった」
「もう帰れ。中学生は門限過ぎてるだろ?」
「………あの馬鹿は、役に立たねーよ」
「…」
「役立たずはお前だ。植野主水…」
2024/4/16 pm9:03
「ただいま」
靴箱を見て、妹が帰ってきてないことに気づく。
テレビの音が鳴ってるから、お袋はリビングに居る。
「ただいま、母さん」
「…ん」
「…また、カップ麺食べて…冷蔵庫に作り置きのごはんあったでしょ?」
「私だって、料理はするんだよ…」
「もう…」
冷蔵庫からお袋の昼夜ごはんを取り出し、レンジで温める。
「みきは、帰ってきたのかい?」
「まだだよ…友達の家かもね…」
「そうか…」
タバコに火を点ける。
「なぁ…」
こちらを見たが、すぐにムスッと顔をしかめて…
「なんでもない」
お袋とは会話というか、お袋が勝手な憶測で言葉を漏らさないようにしている。親父と仲良かったから、余計に空白が空いてる。
妹は、昔のお袋がかっこよくて憧れていた。
車椅子に座るお袋を見てからは、親父に反抗して我流でかっこよさという物に縋りついているのだろうか?まともな会話がないから、わからない。
2024/4/19 pm5:48 国立病院
「ほんとに大丈夫、ツカサくん?」
「平気です、ナツさん。霧島さんの頼みなんですよね?」
「そうだけど…遠慮したっていいんだよ?」
「今日は気分のいい日だから、丁度よかったんですよ」
「…リハビリよりキツイんだよ?」
「大丈夫ですって!軽く、デモンストレーションするだけですから…」
僕は車椅子に乗って、ナツさんに押してもらって地下へ降りていく。
「新しい仲間って、どんな人達なんです?」
「うーん…簡単に言えば、覚悟したら逃げないマンと、孤高の頭脳派物理マンかなぁ〜」
「ふふっ…よくわかんないですよ」
「ツカサくんなら、見たらわかるんじゃない?」
「どうかなぁ…世人は初見殺しじゃないですか」
「それもそうだねー」
早く来すぎてしまっただろうか?
わざわざ部活を休んでまで、来る必要があっただろうか?
俺より強い世人…所詮は人間。人を殺す方法を知ってる俺にとって、一部を除いてほぼ素人。能力にはデメリットがある。そこを突いていけば、あの馬鹿にだって………
「あり?主水くんじゃないっすかー。早いねぇ」
「お疲れ様です、ナツさん…」
ナツさんの前に、車椅子に乗った痩せ細った男。
「彼は?」
「…なるほど。頭脳系か」
「そうそう。彼が植野主水くん」
「…世人なのか?」
まさか、こんなやつが世人とは…残酷だな。
「主水くんはね、影の中を移動したり、暗い所に武器を仕舞ったり引き出したりできるんだよ」
「ふ〜ん…弱そうだね」
「…なに?」
「いかにも場数踏んで来ましたよーって雰囲気だしてるけど、世人に関してさっぱりなのに、知ったかしてるガキなんだね。僕より2つ上なのに…」
「なん…だと…!?」
「わー、子供っぽい喧嘩。お姉さん、嫌いじゃなくてよ?」
「安心してよ。センス皆無なキミの為に、先輩の僕が、能力の使い方をレクチャーしてあげるよ」
「…口先だけじゃないってこと、証明しろよな?」
「キミもだよ」
「は?」
「殺してみなよ。僕を」
なんだ?このプレッシャーは?
俺が死ぬ予見?
こんな…弱そうなヤツに俺が負ける?
臆病風に吹かれたか!意気地なしめ!
あの馬鹿に軽くやられただけじゃないか!
俺は…俺は………!!!
「わりぃわりぃ。東君が走るの遅くてよー…」
「違いますよ!宇津井さんが、枷30kg付けて外周!って言って、早々に何か思い出して、どっか行こうとしてましたよね?呼ばれてたんなら、素直にそう言ってくれればいいのに…」
「はいはい。悪ぅございましたよー」
「久しぶりです。宇津井さん」
「えっ!?金城君?体調大丈夫なのか!?」
「今日、気分良い日なんで」
「そうか…たまには体動かさなきゃだな。紹介が遅れた。俺たちの仲間の、金城ツカサだ。こっちは東英志」
「金城ツカサです。宜しくお願いします」
「…東英志です。凄い、世人なんですね!こちらこそ、よろしくお願いします!」
俺には自己紹介無しかよ…
馬鹿と金城は、強く握手する。
「キミが東英志さんか。ギャラクティカの必殺技を叫んでるって、ナツさんが言ってたよ?」
「英志でいいよ。ツカサくんもギャラクティカ好きなの?」
「ううん。スーパーヒーロー大作戦で知ってる程度しか…」
「スパヒロやってるんだ!すご…初代からゲキムズで、買わなくなったんだよなぁ…」
「今のシリーズは比較的優しくなった方だから、やっても良いと思うよ?」
「う〜ん…友達の家でプレイしてるの見たから…でも、あのロボット好きだったなぁ〜。えっと…武装が3種類で漢字の…」
「伊号零壱?」
「そうそう!OVA観たんだけどさ、全部泣けるよね〜。人間と海底人は分かり合えないって…」
「すっごいわかる。僕、潜水機兵ディープ大好きなんだよね」
「ほんと!?それならさ…」
和気藹々と会話してる。
「ガキかよ…」
「オマエの方がな」
宇津井さんが耳打ちしてくる。
「はぁ?どこが?」
「今わかんなくても、いつか分かるんだよ。分かった時、早く気づけば良かったって後悔すんだよ」
「あんなのを?死んでも嫌だね」
「お堅いねー。脳みそコンクリートかよ」
宇津井さんが手を叩く。
「よしっ。それじゃあそろそろ、金城君の能力テスト…というか、能力調整だな。東君、受けを頼む」
「…俺じゃなくていいのかよ?」
「主水が?無理無理。オマエだと即死ぬのがオチだぜ」
「…」
「ちょっと待ってください…それって僕、大丈夫なんですか?」
「万が一の為のアタシがおるんやで?」
「…メス置いてください、ナツさん」
「護身術軽く覚えたろ?パイセンに勝つ気持ちで臨んでみなって!」
「そうか…ツカサくんの方が先輩か…」
「あんま気にしなくて大丈夫だよ?」
「ほら、移動するぞ」
「僕が押すよ、ツカサくん」
「ありがとう、英志くん」
…俺が死ぬほどの能力?
見だ。見ができる。
対策を立てれるなら、チャンスがあるはずだ。
チャンス?弱腰なのか俺は…?
「おい…ビビってんのか?」
「………誰が」
「いいか、金城君。1回だけだ。1回だけ能力を使うことを許す。いいな?」
「わかってます」
金城は杖を使わず、車椅子から降りて立ち上がった。
「英志くん、20メートルくらい離れてくれるかな?」
「わかったよ」
「東君、反撃できないと思ったら、防御に徹しろ。いいな?」
「はいっ!」
ヨロヨロと、小さく歩く金城。遠距離型なのに、立たないといけないのか?
「いつでもいいよー!」
馬鹿が大声で叫ぶ。
金城は深呼吸をして、呼吸を整える。
「…行くよ」
目で合図して、馬鹿は構える。
「ひっっっさぁぁぁああああつッッッ!!!」
地面を抉り取る踏み出し。
ダン!ダン!ダン!と音を立てて跳躍。
「流星、キィィィイイイイックゥ!!!!!」
ただの飛び蹴り。
なのに、目の前であの場に居合わせた自分が、回避する動きが見えない。たかが飛び蹴り。モーションが見えてしまえば、100%回避できる蹴り。身体が震える…死ぬという恐怖か?
「うわっ!?」
防御の意味をなさない音を鳴らし、土煙上げて勢いよく壁にぶち当たる東。
怒涛の音が耳を狂うように響かせる。
「東君、生きてる?」
「…腕折れたぁ…助けて」
「主水、肩貸しに行くぞ」
「…はい」
「主水オマエ、金城に色々言われたろ?」
「…」
「先入観があんだよ、オマエには。ただの人間相手なら、その技術力で優ってるさ。だがな、俺たちは世人だ。能力使ってなんぼだ。手数少ないオマエに、世人を倒すビジョンなんて、浮かばなくて当然なんだよ」
「………はい」
「ヘーキか、東君?」
「どこも平気じゃないっす。粉砕骨折した音が鳴りましたぁ〜」
「そんぐらい喋れるなら平気そうだな。可愛い後輩の為に、手加減したのか?金城君?」
「そんな芸当、僕にはできませんよ…」
「ツカサくん、今の必殺技って、マスク英雄レオレイの技だよね?」
「流石!よく知ってるね!」
「どんな技なんだ?東君」
「普通、マスク英雄たちって、弱った敵にトドメの一撃で英雄キックするんですけど、レオレイの場合、避けられても意味ないんですよ」
「どういうことだ?」
「100%命中するんです。反転できるんで」
「重力に逆らうことができるんです。正式名称が、反転重力多段流星キック」
「ふーん…ヒーローも物騒な技使うんだな」
「偏見ですよ、宇津井さん。マスク英雄の中で、最終回前に主人公が死ぬ作品なんですよ」
「すっごいネタバレ!?未視聴に優しくないファンだなぁ…」
「大丈夫です、宇津井さん。全然ネタバレじゃないんで!」
「意味のないネタバレってなんだよ…こっちは、ギャラクティカ観るのに精一杯だってのによー」
「それなら、ツカサくんと話してた、潜水機兵ディープおすすめですよ?全3巻で4時間半ですし」
「おっ、それなら1日で観れそうだな」
「あっ…でもプレミアなっちゃって、レンタルは難しいかもです。サブスクにあるっちゃあるんですけど…」
「いくらすんだ?」
「安くて8万ですねー」
「…」
「うわっ、また値段上がったんだー」
「そうなんだよね。VHSの移植だけど、おまけがおまけじゃないんだよね…」
「うん、わかる。あの頃の作画って、書き込み凄いよね。ロボットの圧が強くてさ…」
「英志くん、まだまだだなぁ〜。圧といえば、陸戦機兵でしょ。あれって………」
なんだかんだ無駄話で、東の折れた腕は治り、ナツさんは泣きながら愚痴を言うのであった。
「これだから、オタクの長話は…」
金城ツカサ 世人【逆】
自身がピンチになればなるほど、身体能力が上がる。
できないことをやることで、それが実現する。
そもそも身体が死に近いので、フィジカルはトップクラス。しかし、体そのものを強化する訳ではなく、火事場の馬鹿力を無理矢理上乗せしているので、能力を使いすぎると死に至る。
能力を1回使うことを本人は「バッテリー」と言い、使うとその3時間後、24時間のインターバルが挟む。
ツカサは親から頂いた命を、敵を屠る為に、死ぬ為に能力を使う。
「ねぇ、南くん。どうして潜水機兵ディープの続編は作られなかったの?」
「それはですなぁ〜東どの、未だに様々な考察スレが飛び交っておりますが、主人公アオをディープと共にアトランティスに幽閉しているのではないかと思われるのです。旧式で戦果を挙げたアオに対して、上の人間達は恐れたのでしょう…和平についても、悪役の戦艦を投槍で1発仕留めたのも要因です。なんと言っても、ラスボスである海底人が誇るディープの猛攻を、投槍3・魚雷2・超振動電熱槍だけで防ぐ荒技…民草監督のやりたい放題です。あれほど旧式を操るパイロットは存在しませんからねぇ…故に、海底都市に置き去りにした方が、今後の作品に影響しないと思ったのでしょうね。海戦機兵の戦いが、アオが下からちょっかい出すだけで終わってしまいますからね」
「ふーん。でもさ、それなら宇宙のSFも書けそうじゃない?」
「そうはいきませんよー。巨匠ステイパティ監督のスターシップ。アレと対等なのが、丸宮のギャラクティカなんですから。宇宙を題材とした作品は、この2つに苛まれて、結果的に伸び悩んで落ちる運命なんです!丸宮に越された民草は『宇宙を譲る代わりに地球は俺のもんだ。文句あんなら、ロボット造形してみろ、ばーか』余りにも有名な言葉ですよねぇ…怒った丸宮が大バズりする怪獣戦争映画を創るとも知らずに…いやー、歴史って面白いですなぁ〜」
「そうだね。南くんオススメの今やってるロボット作品って何?」
「そうですなぁ…アメリカ作、怪獣vsロボットは面白いのですが、いかんせん宗教色が強くなりますし…ロボットはカッコいいのですが…丸宮さんが出した、白黒時代のリスペクト作品…は、ロボットより怪獣メインか…歌姫航空は、賛否ありますし…今のムーンセルが作る機兵シリーズは…監督がやらかしてるし…無難に異世界勇者ロボがいいかもですねぇ…」
「今やってる、異世界勇者ロボってなんだっけ?」
「愛爆発マサルですね」
「…思い出した。タイトル詐欺で話題になったよね」
「そうです。自分、第1話で吐きました。グロと鬱が混ざり合って最強でした。色んな意味で」
愛爆発マサル 令和勇者シリーズ3代目
2024年1月28日深夜放送
冒頭5分、主人公らしき人物とヒロインらしき人物が、キャッキャウフフしているほのぼの系と思わせて、クリーチャーに【自主規制】を【自主規制】するシーンが流れて、当時のネットは大混乱。
紹介PVにもその雰囲気はなく、突然の鬱展開に海外リアクターは絶叫。
エンディングに、コンプラギリギリを攻めることで有名なあの原作者の名前が解放され、皆「あっ、察し」で落ち着く。
現在1クール終わったばかりだが、視聴者のライフポイントはほぼゼロ。続編制作中の予告に視聴者は「許してやれよ」「主人公が何したってんだ」「ヒロインを爆発させて勝ち取る平和は地獄だろ」「勇者って何?」と盛り上がりを見せている。
最後までご愛読いただきありがとうございます。
もう1人の仲間、金城ツカサくんが登場しました。
はたして植野主水は成長できるのか?
次回まで寝て待て