透
宇津井宗介が霧切よしきを呼ぶときの名称がバラバラな理由
「…」
「どうかしたっすか、よしきさん?」
「………推しが闇営業してた」
「…残念っすね」
オン・オフの切り替えがわかりにくいので、ふざけるべきか真面目になるべきか、めんどくさいので思ったままの言葉を口にしてる。
霧島はなんて呼ばれようと気にしない。
私は可愛くなりたかった。
でも周りは私に綺麗さと美しさを求めてきた。
大人って酷いよね。
勝手に価値を決めつけてさ、好きな物と嫌いな物を与えられてさ、永遠にスタイル維持の為に食事制限されて、スケジュールを敷き詰められて…
私の青春は他人に決められた、面白みのないスッカスカの空白。仕事の合間、睡眠前の時間が私の青春だった。
この娘たちは穢れを知らない。
自分の意思で選択して、運命を導く。
私にはできない。
憧れのあの娘たちは、私を尊敬するのだろう。
私が観るあの娘たちは、軽蔑されるだろう。
理不尽だ。
だからさ、私ワガママなんだよねー。
他人って、ホント要らないっつうか、邪魔でさ。
ファンサービス?うざいっての。
勝手に推してるなら、私も勝手していいじゃん。
好きとか嫌いとか、知らねーし。
私の人生にアンタはただのモブ。
マジどうでもいい。
私のキョーミをアンタらに教える気ないし、アンタらのキョーミなんか耳障り。
っていうか、眼が汚れるんだよねー………
見えなくなればいいのに
2024/4/16 pm8:00
「よしきさん。これからコイツらに何させる気ですか?」
「とりあえず能力強化だ。特に植野、お前は身体能力で【暗】を補いすぎてる。逆に使え」
「………はい」
「東は基礎の基礎。宇津井から護身術を習って、体力をつけろ」
「わかりました、霧島さん」
「植野。我々と行動する以上、余計なことはするな。お前が起こしたトラブルを、我々は干渉しないし止めもしない。全てお前の責任だ」
「テメエのケツは、テメエで拭けって話だ。だから東君も、その件についてもう終わり。話さないし、関わらない。オッケー?」
『…はい』
「了承できたならさっそく、東に手伝ってもらいたいことがある」
「…僕にですか?」
「安心しとけ。俺もよしきさんも居る」
「…」
「決行日は今週の日曜21日だ。わかってると思うが植野、来るなよ?」
「ガキ扱いすんな」
「ふっ…今日はもう休め。東、後日宇津井から詳しい話を聞かせる。いいな?」
「…はいっ!」
「それならもう、今日は解散っすね。おつかれっしたー」
2024/4/20 pm 1:12 運動公園にて
予備校が終わったあと、宇津井さんと一緒に体を動かしていた。
「…それくらいできれば、経験者以外は圧倒できるな。飲み込み早いね〜、東君」
「すみません、宇津井さん」
「どうした?」
「明日決行日ですよね?」
「そうだぞ」
「…まだ何も教えられてませんが?」
「そうだな」
「教えてくださいよ!?明日なんですよ!!?」
「焦んなって。リラックスリラックス…」
「できませんよ!?」
「まぁまぁ…軽く外周走るぞ」
そう言って宇津井さんは走り出す。
僕は置いていかれないように並走する。
「内容はな…」
「へっ!?今ですか?」
「そりゃそうだろ。真昼間に男同士でコソコソしてたら怪しいと思わないか?」
「そうですね…」
「んじゃ改めて…やるのは世人調査だ」
「世人調査?」
「世人じゃないか調べるってだけだ。そうじゃないならそのまま解散。でも、世人だったら…」
「だったら?」
「そっからは俺とよしきさんが動く」
「…人殺しだった場合、どうするんですか?」
「今回に限り、その線は無いかな…」
「え?」
「調査対象はコイツだ」
宇津井さんはスマホを取り出して、写真を見せてきた。
「この人って…!?」
「女性アイドル会社TDFKのトップグループ、西園寺47のセンター『秋雨愛美』コイツを含む少人数のイベントが、明日ショッピングモールで行われる」
「僕はそこで何を?」
「秋雨愛美の握手会に参加する」
「…」
「不服か?」
「一応、何故か訊いてみていいですか?」
「ポカさせない為だろ?初めての仕事なのに無茶させねーよ。秋雨にかる〜く握手して喋るだけでいい。できるか?」
「…それくらいなら」
「んじゃ、ここで解散な?」
「もうですか?」
「やることやったし、教えるもん教えたから帰るわ。明日、遅れるなよ?」
「わかりました…」
宇津井さんはそのまま帰ってしまった。
秋雨愛美さん…4年前デビューしたアイドル。
とても17才とは思えない美貌で一世を風靡した。歳を重ねるごとにその美貌は増していき、男性よりも女性ファンが募る、いわゆる王子様系アイドルへと進化していった。
現在21歳。グループのリーダーで、ソロ活動もしていて、ミュージカルの主演として抜擢されたこともある。
今、人気No. 1アイドルの彼女が世人の可能性がある?
信じられないが、そこを調査するのだろう。
「ん?」
誰かに見られている気がする………?
気のせいだろうか?
思えばここ数日、後を追いかけられているというか、監視されているというか…霧島さんだろうか?
いや、霧島さんではない誰かに見られている?
もしかしたら敵対勢力!?
…違うな。宇津井さんの話だと、情報を扱う世人は相手方には居ないと言っていた…誰なんだ?
万が一の為に、用心しておこう………
2024/4/21 pm1:58 ショッピングモール内
宇津井さんと合流し、改めて今回の内容を確認。
ひとりのファンとしてイベントを楽しみ、握手をして軽く会話するだけ。
何もなければ、そのまま解散。しかし世人だとわかった場合、宇津井さんと霧島さんが動く。
タイムスケジュールは
13:00 対談・ライブ
14:00 握手会
うちわを作ってみたけど、浮いてないかな?変じゃないかな?伊達メガネをかけて変装したとはいえ、逆に目立ってないかなぁ〜?
「…はい、西園寺47の皆様でした!このあと握手会を開きますので、ファンの方々は列にお並びの上お待ちください………」
ゾロゾロと動くファン達に流される僕。
(おい、大丈夫か?)
(大丈夫じゃないです。さっきから足踏まれまくりです!)
(我慢しろ…よしきさん、そっちはどうです?)
(今のところ何もない。東、秋雨の列にちゃんと並べよ?)
(わかってます…)
(俺も同じステージ内で視認してっからな?慌てんなよ?)
(…あい)
う〜ん。すれ違う人達にいろいろ言われた。マナーがどうこうとか、服装がなってないとか…知らないよ。今日初めて来たんだもん…
まぁ、文句を言ってる場合ではないが、やっぱり秋雨さんの列は凄かった。他の人に比べて人数が多い。
「それでは握手会を開始いたしまーす!ファンの皆さん、割り込みや押したりなさらず、ひとりひとりお待ちくださーい!」
始まった!どんな感じなんだろう?
「秋雨さま!私、ずっとお慕いしてて…」
「そうなんだ、知らないけど。次」
え〜!?そんなそっけないの!!?
「今日めっちゃ話してくれたねー!やったじゃん!」
「この日を記念日にしよう。そうしよう!」
…塩対応が普通なのか?
僕の前に居たおよそ50人居たであろうファンは、あっという間に消えていき…
(そろそろ出番だ。東君、普通のファンとして行けよ?)
(わかってます今…)
(東、後方にナイフを持った男が居る。見えるか?)
(えっ!?)
思わず振り返る。
だけど、そんな男は見えなかった。
「お待たせしました〜。券を拝見しますね〜」
「あぁ…はい」
「…確かに確認しました。それではどうぞ!」
係員に流され、秋雨愛美と対面する。
「えと………」
しまった!緊張して頭真っ白だ!!!
「…見ない顔だね」
「えぁ…はい。初めて来ました…」
「握手、しないの?」
「ご、ごめんなさい!します…」
手を差し出して握手…と思いきや、手を引っ張られ顔と顔が近くなる。
「ねぇ、さっき何で後ろ見たの?」
「えっ…と〜、友達に呼ばれた気がして…」
なんだ?なんなんだ!!?
バッシャーン…
「す、すみませーん!」
「何やってんだ!さっさと片せ!」
「た、ただいま〜…」
スタッフがペットボトルを落として、少し視線が逸れる。
「………あっそ」
「へ…はい…」
手を離され、顔の距離が離れる。
「あんた、可愛い顔してんね」
「へっ!?」
「じゃあね」
「はい、お疲れ様でした〜。こちらからお帰りください…」
促されるまま、その場から離れる。
(大丈夫か?周りから凄い睨まれてるぞ?)
(わけわかんないっす…)
(東、宇津井、とりあえず合流するぞ)
(うっす)
(あの…さっきの男はどうなったんですか?)
(それについて詳しく話す。早く来い)
(わ、わかりました…)
2024/4/21 pm2:16
「ここならいいな…」
人の居ない非常階段付近で合流する。
「すみません。さっき何があったんですか?」
「俺もステージ側に居たとはいえ、一瞬すぎてわかんなかったっす。詳しく教えてください、よしきさん」
「まず、これを見ろ」
霧島さんはスマホを見せる。SNSの書き込みだった。
秋雨ふざけんな!ぜってー殺してやる!!!
「…過激なファンっすね」
「コイツが犯行予告していた。今日のイベントにな」
「そんな!普通、そんなことされたら中止とかに…」
「そうだな。だが、このツイートはすぐ消えたんだ。数分後にな…」
「…このアカウント、そもそも存在してないっすね?垢BANですか?」
「違う。SNS上には確かに存在する」
「え?…どういうことですか?」
「…世人ってことですか。秋雨愛美は」
「そういうことになるな」
「…能力で何かしたってわけですか?」
「そうだ。そして俺が見た光景を話す」
14:03
犯行予告した男が会場に入る
14:06
ナイフを取り出して叫ぶ
「秋雨愛美!お前を殺してやる!!!」
この時、東の後ろ側に居たので振り向かせるが、視認できず。周りの人間も気づかない。
男も動揺する。
「なんだ!?どうして誰も見ないんだ!!?ここにいんだぞ!?」
ナイフを振り回すが、誰も傷つかない。
14:09
スタッフがミスしたタイミングで、男は消滅。完璧に見えなくなった。
ありえない…人が消滅する?そんなことができるのか?
「……厄介な能力っすね。時間経過で強制退場って訳ですか…」
「恐らく、秋雨愛美が視認した時点で能力が発動。そして、能力をかけられた側は『見えてない』ということに固執すると消滅…なのかもな」
「…もしかして、厄介なファンはそうやって消してたってことですか?」
「東君?」
あの眼は違う。人殺しの眼なんかじゃなかった!あの眼は…
ピンポンパンポーン…
「◯◯市からお越しの『東英志くん』ご家族が5階、サポートセンターでお待ちです。繰り返します…」
…どういうことだ?
「東君。親に伝えたのか?」
「伝えましたけど…来るとは聞いてません」
「…東、宇津井。一緒に行くんだ」
「罠…ってことですか?」
「そんなことするわけ…!」
「行ってみなければわからない。用心しろ」
「東君…とりあえず行ってみよう。な?」
「…はい」
僕と宇津井さんはサポートセンターへ移動する。
2024/4/21 pm2:39
「いいか?怪しまれない為に東君だけ行かせる。何かあったら能力を使え。惜しむな!最後の最後、信じれるのは自分だ。いいな?」
宇津井さんにそう言われたけど、僕は彼女に暴力を振るえるだろうか?
あの時見た眼は、薄暗い濁った眼。
ステージで話したり、歌ってた時にはわからない、顔を合わせた時にしかわからない眼。
アイツとは違う。赤と白が淀んだ眼じゃない。僕を見て、少しだけキラキラさせたような…
「すみません。放送聞いて来た、東英志ですけど…」
「東英志さん。念のため、本人確認できる物を見せて頂けますか?」
「学生証なら…」
サポートセンターの人に学生証を見せた。
「…はい、間違えありませんね。突き当たり奥の部屋にご家族がお待ちです」
「ありがとうございます…」
宇津井さんは後ろをつけているはずだ。そのまま行こう。
特に広告が貼られていない白い空間。
薄らと黒いふちがドアを指し示す。
この先に秋雨愛美が居るのか?それとも…
僕はドアを開けた。
「…誰も居ない?」
その空間はテーブルとイスが置いてあるだけ。
部屋を見渡しても誰も居ない。
ドアが閉まる。
「…!?」
瞬間、後ろから抱きつかれる。
「怖がらずに来たね〜。偉いぞー」
「あ…秋雨さん!?」
彼女は僕の髪の毛に顔を埋めて深呼吸している。
「なっ!?何を…」
「スゥー………うん、体動かしてる男子だ。体育5でしょ?」
「そう…ですけど!は、離してください!」
「ダメダメ〜。せっかく見つけた可愛い子なのに〜…」
「何が目的で…」
「見えるんでしょ?東くん?」
耳元で囁く。
「私、変わった能力持ってるんだ。キミは、私が能力を使う前に気づいたんだよね?キミも実は特別なんでしょう?」
彼女に耳を噛まれる。
「ぅわっ!!?」
なんとか振り解き、地面に倒れる。
「あっはは。ウブだねー東くん?めっちゃ可愛い」
「ど、どうして名前を!?」
「今時、本名フルネームで応募しないよ〜?」
ケラケラ笑いながら握手券を見せられる。裏には僕が書いた名前…
「今回が初めてだもんね?次からは気をつけてね?悪い大人、いっぱいいるんだよ?」
息が詰まる。
彼女は僕に覆い被さるように身体を近づける。
「学生だから仕方ないかー。大丈夫、怖いことしないよ?可愛い可愛いしたいだけだから…」
「…ひとつ、いいですか?」
「なーに?」
「消えた人…どうしたんですか?」
「関係ないよ。東くんは気にしなくて、ダイジョーブ…」
ちょっと待って!?ここここ、これって……!!!
「顔真っ赤。可愛いね東くん?」
「や、やめてください…」
「どうしよ………」
彼女は止まり、立ち上がる。
「誰?」
彼女の視線は僕から見て、左方向の部屋の隅。誰も存在しない。
彼女はその隅へ近づく…
「…」
「…」
お互いが何も喋らない。
ドンっ!!!
ドアが吹っ飛んで、人が入って来た。
「宇津井さん!!」
彼女は音に反応して振り返る。
そして、見えなくなる宇津井さん…
(クソっ!奇襲しても、俺の【運】を貫通すんのかよ!?)
秋雨愛美 能力【透】
視認した物を見えなくする。人間を透明化させることができる。
犯行予告をした男は消滅した訳ではなく、承認欲求が高まって自暴自棄になり自殺。あの場に男の死体はある。
が「見えていない」ということを考えれば考えるほど、透明化を解くことができなくなる。そうなった場合、本人も透明化を解くことができなくなる。
「…野蛮なお友達ね」
「秋雨愛美さん!能力を解いてください!」
(悪い!東君が場を凌いでくれ!)
宇津井の声は届かない。
「嫌よ。メリットがないもの」
「くっ…!」
「騒ぎになったらめんどくさいわ。早く出ましょう?」
「待ってください!宇津井さんを戻してください。僕は…」
(東君?どうするんだ?)
「僕の能力は【光】です。僕を消せますか?」
東は体全体を発光して、部屋を光で包んだ。
「ウッ………」
「何も見えねぇ…どうなってんだ?」
「でかした。東」
光が消えると、霧島が秋雨を裸絞で落としていた。
「宇津井さん、大丈夫ですか?」
「平気だ。ちゃんと見えてるんだろう?」
「はいっ!視認できます」
「…よしきさん、これからどうします?」
「目を覚まし次第だな…その前に扉直せ」
「う…うっす」
「僕は…?」
「東はもう帰っていい。心配するな、殺しはしない」
不安そうな東君。
「お前が居なかったら、俺は死んでたかもしれん。助かったよ、東君」
「…はい」
東君が感じているものは罪悪感なんだろうか?
部屋から出るまで、目線は秋雨愛美に向けたままだった。
「…よしきさんの命令っすね?さっきの」
「あぁ…」
「しかし面倒なことになったっすね。人気アイドルが世人だなんて………」
「…」
「どうかしました?」
「いや、さっきから何かに見られている」
「アイツらっすか?」
「違う、反応は2つ。1人は東に、もう1人は俺だ」
「何者っすか?」
「わからん。別組織かもしれないが、襲っては来ない。用心だけは怠るなよ?」
「…わかりました」
クソっ!次から次へと世人が増える一方だ!
何者なんだ【色】って奴は?
なんで世人を増やす?増やした所で、何も変わらん。人間が人間をするだけだ。
…いや、霧島みたいなヤツを増やしたいのか?
そんなことは駄目だ。アレはやっちゃいけない。
だがいずれ溢れてしまう。世人が増えるなら、隠し続けることは無理だ。
政治家を操るか、国民を騙すか…どちらにせよ、最悪の時代が訪れるかもしれない。
東君と主水を巻き込む訳には………
無理だ。
アイツらも世人になった以上、普通の生活には戻れん。
せめて若人らしく、危ない目には遭わせないよう心がけるしかないか…
ちっ…アレが霧島と宇津井か………
せっかく、秋雨の炎上スキャンダル撮れると思ったのによぉ〜、電子機器グチャグチャじゃんよ。厄介だなぁ…
それになんだあのガキ。オレんこと見てたよな?見える筈がねぇ…オレの能力は最強なんだからよ。
でも、あのガキ調べようとしたら霧島が邪魔すんだろうなぁ〜…やめとこ。別のネタで金稼ぐかー。
それにガキ追ってた奴、何者だ?気配があんのに、姿が見えねぇ…秋雨とは違う能力か?
…やめだやめだ。こんなのに頭使いすぎると馬鹿になる。
ひたすら楽して稼ぐのがオレのモットー。
いつかネタにさせて貰うぜ「霧島よしき」さんよぉ〜。
2024/4/21 ???
「起きたな?」
「…」
「悪いが目隠しをさせているよ。まだ、キミの能力について理解していないからね」
「私を絞めた男か。最低ね」
「なんとでも言え。訊きたいことは2つ…」
「…」
「その能力は天性のモノか?それとも与えられたか?」
「…知らない。いつの間にかできるようになってた」
「【色】を知っているか?」
「…なにそれ?」
「………そうか」
「私をどうする気?」
「どうもしない。来る日にまた呼ぶだけだ」
「呼んでも来ないよ。東くんじゃない限り」
「東もいずれ来るさ」
「…何がしたいのアンタ?」
「国だ」
「国?」
「世人だけの国の建国。同志は北海道に集まっている」
「…冗談でしょ?」
「…」
「イかれてるわ」
「オマエは、この日本を変えれるとおもっているか?」
「…」
「腐った人間に改革は無理だ。世人はそれに従うのも間違っている…なら、新しい国を創ればいい。世人だけの国をな…」
「でも、上手くいってないんでしょ?」
「日本という国を脅かす不謹慎な世人も居る。この力は承れしモノ。裏切りは許されない」
「誰を裏切ってるわけ?天皇とでも言うつもり?」
「…」
「マジ?」
「オマエなら、いつか逢えるかもな立場が更に上がればな…」
「待ちなさいよ!天皇が世人を知ってるなら、何で今まで隠してたのよ!?」
「簡単だ。天皇様こそ特別な世人だからだ」
「…本気で言ってる?」
「信じなくて結構。いずれ分かる日が来る…」
「なら、アンタが言ってる独立も、反逆じゃないの?」
「…」
「くっ!?苦しい…」
「誰も帝には近づくことは許されぬ。理解したか?」
「わ…わかった、わよ…」
「…」
「げほっ…げほっ………」
「もう用はない。帰れ」
「帰れって、アンタが拘束…」
「此処は現実ではない」
2024/4/21 pm3:26
「お疲れ様でした〜、秋雨さん」
「…えっ?」
気がつくと楽屋だった。
「途中抜けた時、すんごい大変でしたよ!…割と直ぐに戻って来て良かったけど…」
「…」
「まぁまぁ、無事何事もなく終われて良かったです。ご機会があれば、また宜しくお願いします!」
『お疲れ様でしたー』
「珍しいね、愛美がぼーっとしてるなんて」
「…ちょっとね」
「そういえば、若い子がちょっかい出してなかった?愛美に」
「逆よ逆。愛美がちょっかい出したのよ…どしたん?なんか気になったんか?」
「…別に」
「隠さなくていいじゃんよー。一目惚れか?惚気なんか???」
「しつこい」
「辞めなって。どーせ、失礼なファンでしょ?わからせたんだって…」
東英志くんか………キラキラしてて可愛かったなぁ。
そして…光の戦士なんだぁ〜。ヒーローが好きなのかな?めちゃくちゃ可愛いじゃん!
あ〜、見てみたい!あの顔が笑った顔が!!!
追っかけしちゃうからな、東くん。キミは私の推しなんだから…
もっと仲良くなったら英志って呼び捨てしてもいいかも。また真っ赤になるんだろーなぁ〜。
楽しみに待ってるぞ、東くん。
秋雨愛美が東英志を気に入った理由
すまっしゅ!リチャラティークラブに出てくる運動部の男の子、ツバサくんに似ていたからである。
ツバサくんは男の子でありながら、ヒロインポジションで誘拐されたり、敵に襲われたりと不幸な男の子。
主人公たちに尊厳を破壊されたり、踏んだり蹴ったりな男の子でシリーズ屈指の可哀想枠。
ファンの中では、一番エロい子ではないかと論争がしばしば見受けられる。男女問わず、人気なキャラクター。
2024/4/21 pm5:03 東自宅
「ただいまー」
色んな意味で凄い1日だった…
「おかえりなさーい。どうだった英志?人気アイドルの裏方お手伝いは?」
「うーん…大変、しか思いつかないなぁ…」
「はじめてのアルバイトだもんねー。早くステージに立つ英志が見たいわ〜」
「気が早いよ母さん…」
「父さん知ってるぞ!今日会ったアイドルって、西園寺47だったんだろ?気に入った子は居たか?」
「そんなこと…」
あんた、可愛い顔してんね
気に入られたって感じだよなぁ…
「お父さん!アイドルと俳優のカップルなんて、ベタ過ぎますよ!」
「わからんぞ母さん。ひょっとしたら、実は恋仲かもしれんからなぁ〜?父さんと母さんみたいにな!ワッハッハ」
恋仲?そんなわけ…そんなわけ…そんなわけ……?
抱きしめられる
髪の匂い嗅がれる
恋人繋ぎ
恋愛ビンゴ揃ってますぜ!!!旦那ぁ!
「…」
「英志?えっ…違うよな?その顔…まさか……!?」
「きゃー!?お父さん!もち米買って来て!!!赤飯炊くわよぉ〜」
「嘘だよな英志?父さん、そんな勝ち組になってしまったのか?父さんを笑っているのか?なぁ!?何か言ってくれよ!惨めだろぅ!!?」
「…落ち着いて、父さん母さん」
彼女の眼。
彼女が宇津井さんを見た眼は、興味を失った眼。
彼女は人殺しではない。
見たくないモノを見てないだけ。
僕はどうすればいいのだろうか?
困ってるみんなを助けたい。
彼女も世人になって困ってるかもしれない。
でも、全員救うのにはリスクがある。
強欲を願えば、必ず悲劇は来る。
僕のチカラで変えることができるなら僕は………
一方その頃、植野主水
「なぁ倫子?超能力が使えたらどうしたい?」
「えぇ〜…家事全般自動でやって貰うかなー」
「…そういうのじゃなくてさ」
「ってか、超能力とか実在しないじゃん!夢見過ぎじゃない主水くん?」
「…」
「なんで可哀想な目で見てくるわけ?なんか言えゴラァ!」
最後までご愛読いただきありがとうございます。
東英志くんは、ただのイケメンではなく、可愛い系イケメンってことです。最近の変身系主人公みたいですね!
ではまた次回