敵
主人公たちの身長
東英志 174cm
植野主水 178cm
宇津井宗介 181cm
霧島よしき 177cm
あれ以降、トラブル無しで淡々と依頼をこなす。
調べる。
受ける。
殺す。
調べる。
受ける。
殺す。
調べる。
受ける。
殺す。
小道具を新調して、仕事がよりスピーディーになる。
調べる。
受ける。
殺す。
調べる。
受ける。
殺す。
調べる。
受ける。
殺す。
2週間に1回のペース。多い日は、1日で6人ほど手をかけただろうか…?
重要なのは殺した人数じゃない。
救った数だ。
屈辱を味わった日を忘れさせる為に、俺は依頼をこなす。
そんなある日、40代くらいの男性に声をかけられた。
あの日の2人組とは違う、男女に………
2024/4/1 エイプリルフール
「君、我々と一緒に新世界を創らないか?」
2024/4/1 pm8:56 某スタジアム
宇津井宗介は情報を元に、女性アナウンサー「田町絵梨香」と接触。
「失礼しまーす。どーも、田町アナ」
「だ、誰ですか!?あなた!?」
「ただの記者ですって。今、フリーなんでしょ?お話、聞かせてくださいよ〜」
「何も喋りません!出てってください!!!」
「そんなこと言わないでよ〜………あんた、人殺しなんだからさ」
「!!」
宇津井は田町の首を押さえる。
「浮気相手を軽い気持ちでポンポン殺しちゃあ…バレるでしょうに?」
「………なら、アンタも死ねッ!!!」
田町絵梨香の世人【熱】
対象の物質(人も含む)を熱膨張させて破裂させる。
1LDK内なら対象に近づかなくても、相手の熱を感知して破裂させることができる。
熱膨張の速さは対象の距離と比例する。
「…!」
「もう遅いッ!そのまま…」
「あっ」
宇津井の【運】が発動。
首を押さえてた力がクリティカルを起こし、田町の首を皮膚同士の真空で抉り取った。
「あっちゃぁ〜………」
返り血を拭き取りながらスマホを取り出し、電話を掛ける。
「…もしもし〜?掃除屋頼むわ……いや、しゃーないだろ?手加減できないんだならよー…頭は無事だよ、ナツ。存分に解剖してくれ…え?培養液?ある訳無いだろ!?そんなん持ってたら、即サツに捕まるだろーが!!…はぁ!?質が下がるだぁ!!?そんくらい、テメエでなんとかしろよな!俺の仕事を増やすな!!!」
ぶっきらぼうに電話を切る。
「………こんなんばっかだと、調査どころか殺人してるだけだなぁ…俺」
そんな悩みを抱えていると、霧島から連絡がくる。
「どうしました、よしきさん?………えっ!?植野のヤツがアイツらと接触!!?わかりました、すぐ向かいます!…わかってます。奴らには渡しません、植野をただの復讐殺人鬼にさせません…」
2024/4/1 pm9:03 某雑居ビル
依頼内容
息子は、ホストのただのボーイだったんです。それが…ナンバーワンだかなんだか知らないけど、紅魔ってヤツに脅されて借金して…ずっと、バックにブラックコメディアン直属のカラーカードが居るって言ってたみたいです………ほら、いつだか爆破テロ紛いがあったじゃないですか…あれ、カラーカードのスカーレットグレイスがやってたらしいって…そんな危険な奴らが居るって言われたら、抵抗できずに………お願いします。紅魔を殺してください。息子が、あんな残忍な姿で見つかったんです。同じくらい、酷い目に合わせてください…
カラーカードの情報
ブラックコメディアンに憧れて集まった半グレ集団。
それぞれのカラーに合わせて犯罪を行う。例えば、サンダースピリットを挙げると、電気に関連した犯罪をする。
因みにだが、爆破テロを起こしたスカーレットグレイスのボスは、本人が1人の時に何者かと通話途中で爆発に巻き込まれて死亡している。
ブラックコメディアンの情報
組織ではなく、ひとりの人物を指す。
カラーカードの事件現場でそれを彷彿とさせるカードが置かれている。
警察にとって、ブラックコメディアン自身の傘下団体が起こしたことをわざと教えているとしか考えられない。まるで、この事象を楽しんで観ているのではないかと思われる。
カラーカードのボス達は、誰もブラックコメディアンの正体を知らない。
紅魔自身はただのホストだった。
おそらく、ホラ吹きなんだろう。
殺す人物をよく知ろうとするのは、本当にどうでもいいことだ。
お気に入りのホテルで、お気に入りの未成年と危ない火遊びが好きらしい…反吐が出る。
最近、能力が上がったと思う。
扉越しでも影になる場所が有れば侵入できるし、防犯カメラレンズをいちいち暗くしていたが、明かり自体を覆うことができるようになった為、どこぞのホラー映画みたいな演出ができる。
恐怖の演出として効果的だった。
「な、なんで…オレんとこに…」
「…」
女を置いて逃げる紅魔。
俺は薬物をしていないか確認して、警察に位置情報を送り通報する。
「あ、アイツだ!復讐代行だぁ!!?こ、殺せ!」
屈強な男2体。問題ない。
ホームセンターで買った農具鋏を取り出し、男Aの首目掛け投擲。不意を突かれた状態なので、安易に投擲を躱せない。鋏が刺さる。
困惑しながらも俺をなんとかしようとする男Bの攻撃を躱し、男Aに刺さった鋏を抜いて男Bの背後を取り、頸椎に鋏を落とす。先に男Bが絶命。
男Aは首を押さえて出血を止めようとする。この時、大抵迷う。この名前も知らぬ人物は、仕方なくこの勤めをしていたか、望んで勤めていたか…知る必要がないはずだ。ただ一言…
「許すな、俺を」
もう一度首を刺して、絶命させた。
命の危険を感じた人間がとる行動、1同じ建物内で息を潜めて隠れるか、2安全と思える場所まで逃げるか…紅魔は後者。エレベーターで下まで降りて、ホテル外へと走る。
本人は逃げ切れると思いこんでいた。自分の足元の影に俺が居ると知らずに………
右折左折を繰り返し、明かりの灯ってないビルへ駆け込む。
息を整えて安堵する…あぁ、今コイツは助かったとでも思い込んでいるんだろうな。浅はかな知能だ。今すぐ死ねっ!!
「がっ…!!!な、なんで………?」
糸の強度を知っていれば、創意工夫でそれよりも強くできる。首を絞める。足に引っ掛ける…様々なことに応用できる。
窒息死という1番くだらなくて、苦しみを味わえてよかったなオマエ。この上なく無様だ。
首吊り自殺の死亡要因は、長時間の酸素供給不可。又は頸椎の骨折。ただ首を絞めただけでは確実に死は訪れない。ショックによる気絶で助かったケースも無くはない。確実に仕留めるのだ。
………瞳孔が開いたままだ。死んだな。さっさとこの場から逃げよう。
「待ちたまえ」
馬鹿なっ!?この場に誰も居なかったはずだ…
「落ち着きたまえ。会話だけだ。君と話がしたい…」
気配が2人…隠れているのは誰だ…?息遣いを読み取れ………女だと?
「しかしながら、素晴らしい五感だな。若さ故…否、日頃の鍛練のおかげだな?」
「…目的はなんだ?」
「ご愛想だな。ならば、単刀直入に言う」
固唾を飲む。
「君、我々と一緒に新世界を創らないか?」
「は?」
「いやね、エイプリルフールではないんだよ?我々、世人が創る新しい日本を改革しようじゃないか?」
「断る」
「判断が早いねー。でも、今日は声掛けだけだから。今度また、スカウトしに行くからね?…死体の方は心配しないで?私が片しておくから…迷わず家に帰っていいよ?」
「…」
胡散臭い。だが前回の2人組同様、下手に動けば拘束されるかもしれない…一旦引くか。
「また会えることを楽しみにしてるよー」
俺は夜の闇夜に消える。
2024/4/1 pm9:56
ちょっとしたトラブルはあったものの、今日も自宅に帰ることができた。
玄関のドアノブに手を伸ばす。
「おい、テメエ…」
聞いたことのある声。
「…あの時、蹴り入れた人か」
「冷や汗かかねーとは立派な強心臓だと褒めたいが、おいたが過ぎるんじゃねーか?」
「何を今更…」
「家族にバレてないとでも?」
「…」
「まっ、個人的なことだ。俺は関わらんよ…だがな、今日会った奴のことは信用するな」
「アンタのことも信用してませんけど?」
「うるせー。よしきさんを信用しろっての!揚げ足取ってんじゃねー」
「…脅しですか?」
「そうだ、脅しだ。お前は気づいてないが、あの人は常日頃からお前を見てる。忘れるなよ?お前を助けるのは、俺たちだからな?」
そう言って彼は立ち退いた。
そうか、能力で俺を監視していたのか…だからなんだ?俺は復讐代行を辞める気などない。今まで通りのパターンで、やり続けるんだ。
調べる。
受ける。
殺す。
たった、それだけじゃないか。
繰り返せ、己の義を………
2024/4/16 pm0:53 学校校門前
「おっす〜、主水くん。まだ帰んないんだ」
「倫子か…お疲れ。家帰っても仕方ないんだよな…」
「そうだよねー。この時期にインフルなんてさー…部活もできないし、何処にも寄れないよねー」
新生活と共にやってきた病魔。何も考えてない奴らは、ラッキーぐらいにしかならんだろう…
「コラっ!さっさと帰りなさい」
「わかってますって!行こ?主水くん」
「…あぁ」
倫子と2人で帰るのは久しぶりだった。
「部活以外で話すの久々だね?」
「そうだな…ゴタついてたし…」
「でもさ、キレ良くなってない?前よりもさ…殺気が強いって、サボり魔が言ってたよ?」
「そりゃ遅れを取りたくないからね…殺気は気のせいじゃない?」
「そうかなー?先生との稽古で…あっ、ネコちゃん!!!」
黒ぶち猫を見つけてはしゃぐ倫子。と同時に、1通のDMが届く。
(この人は確か、社内恋愛で恋人が遠くに飛ばされて、そのまま上司にセクハラされて心身共にダメになってしまった人か…名前は堂島さん、か…)
「倫子すまん。スーパーで買い物してから帰るわ」
「いいよー。このぶち助と遊んで帰る。ここか?ここがええんか?スケベめ。おっほっほー!」
堂島さんと連絡を取り、待ち合わせ場所へ向かう。
2024/4/16 pm1:17 喫茶店裏路地
制服から私服に着替え、顔を隠す。
「復讐代行…さん、ですか?」
「!!」
「も、もしかして、不味かった…ですかね?」
「…堂島さん、ですか?」
「は、はいっ!…あっ、お、大きな声出したら…怪しまれ、ますよね?す、すみません…」
いかにも営業マンの服装をした男だった。鈍臭くて、額に汗を浮かべている。
「…外では誰かに聞かれるかもしれません。中へ移りましょう」
「ま、待ってください」
堂島さんは俺を引き留めた。
「その前に…教えてくれませんか?」
「…依頼料ですか?それは」
「貴方の金額いくらです?」
堂島さんはアタッシュケースを開いて敷き詰められた万札を見せてきた。
「…どういうつもりですか?」
「なーに、キミは1億の価値がある人間か、確かめたくてね…」
「騙したな?」
堂島は硬貨を指で飛ばす。
硬貨は自分に当たらず、足元に落ちた………
「何っ!!?」
刹那、足元は奈落になって落ちそうになる。
「改めまして、こんにちは。ボクは堂島奏。体験した通り、世人だよ。能力は【買】ボクらの仲間になるなら助けるよ?」
金具を付けた糸を投げて、糸を引っ掛けて落ちないように必死に捕まる。
「咄嗟の判断凄いね〜。でもさ、この糸を買ってしまったら、キミはどうなるんだろうねー?」
「やれよ」
「え?」
「オマエ程度、殺せもしない奴なんかに屈しはしない。どうする?取引か、拷問か?」
「このガキ…!」
「…」
正直ピンチだ。下半身は地面の下にある…このまま落ちた場合、水中に落ちるのと同じ可能性が大。蓋されて強制窒息死。これ以上煽ってはいけない…
「わかった、解除する。ボクはこれ以上何もしない。それでいいなら、ボクの手を取ってくれるかい?」
「…」
「頼むよ。お互い、傷つけ合わずに済むならいいだろ?」
右手で糸を掴み、左手を伸ばす。
本当に触れていいのか?
その時、糸が切れる。否、切られた。
後方に引きづり上げられた。
「間に合ってよかったぜ」
「キミは…?」
「ただのステゴロ記者。コイツの保護観察だ」
「誰が」
「昼間のテメエじゃ、上手く動けんだろ?任せとけって」
「チッ…」
「逃げんなよ?お前らを探すのにどれだけ…」
「頼んだ。横浜」
頭上から落ちてくる何かに反応が遅れた。
「アンタ、避けろっ!?」
間に合わなかった。
脳天直下、横浜と呼ばれた男は彼の頭を椅子で叩きつけた。
「アンタじゃねー…」
「嘘だろ!?」
「俺の名は、宇津井宗介ってんだ。覚えとけ」
横浜の腕を払い、手にしてた椅子を手放した。
「…」
「動けるデブは嫌いじゃねー。テメエの相手は俺だ、こんちくしょう…」
横浜は一旦、堂島の側まで引いた。
「予定外が起き過ぎたが、男倒してガキ攫うぞ、横浜」
「おい、2on2だ。やること、わかってるな?【暗】」
「…あぁ」
俺の了承を得ると同時に宇津井は横浜に襲いかかる。
堂島からアタッシュケースを受け取り、防御する横浜。
(そんなもんで、防げるかよ!)
目黒流躰道応用、通打!!!
(なんだと!?)
横浜はアタッシュケースで防ぎ、そのまま反撃を繰り出す。
打即避
先程の脳天狙い攻撃と違って、回避する宇津井。
(…わかったぜ。テメエが持ってるもんに、バフかける系かよ…道理でさっきの威力がおかしいって気づけたぜ…デブなのに知性タイプのアタッカーか。アイツら、そんなのも仲間にしてたとはな…)
横浜庄司の世人【用】
自身が認識して使用する物は、本人が使うに限り質量と抵抗は0になる。
使用する物は、本人が手放さない限り壊れない。
物を使って攻撃した場合、そのダメージは倍になる。
本人の体重×本人のパワー×物の質量×空気抵抗
(なら、それより速く攻撃するまで…!!!)
俺は予備の糸を取り出し、堂島の首元目掛けて投げる。
「その手を喰らうとでも?」
安易に避けられるが、目的は別。
今は昼過ぎ。太陽は真上にある。建物の屋根と今居る場所の距離、ざっと20メートル。糸が屋根の影と重なった瞬間…
「なっ!?消え…」
移動の推進力を利用した、回し蹴り。やったことはないので防がれる。
「くっ…!横浜ぁ!!」
アタッシュケースを持った横浜が、呼ばれると同時に振りかぶり、攻撃のモーションをとる。
「テメエの相手は俺だろうが!!!」
合わせて堂島を躱した宇津井が、横浜の正面に立つ。
(目潰し!?)
宇津井は親指を立て、横浜の左眼を攻撃する。
咄嗟に防ぐ横浜。
「守りやがったな?」
宇津井流躰道、反転桜!!!
攻撃の手を止め、そこを軸として体を弧を描く様に回転。相手の中心線を脚で払い、後方へ吹っ飛ばす技。
ゴミ箱を巻き込みながら、壁にぶつかる横浜。
物音聞いて寄ってくる一般人。
「な、何してるんだ!」
「逃げるが勝ちだ!行くぞ!!!」
「ちぃ…クソっ!」
堂島は逃げる宇津井を追いかけようとしたが、目的の植野が必ずしも付いてくるとは考えなかった。そもそも、影に隠れられては本末転倒なので、植野主水誘拐は失敗した。
「アイツも逃げ切れたかな?」
「ここに居る」
自分の影にピトッと張りついてやがった。
「なっ…!?変態かテメエ…」
「変態じゃないし、アイツでもない。植野主水だ」
「そうかよ。で?こっち側に来るってことでいいのか?」
「一時的、避難先として厄介になる」
「可愛くねーなー。肩の力抜けって」
「…」
「あっそ。追われてないか確かめたら、適当に時間潰しした後、国立病院に行く」
「国立病院?」
「テメエもちゃんと検査すんだよ。身体がどうなってるかな…」
2024/4/16 pm5:32 国立病院にて
「遅いよー、ここは何でも屋じゃないんだからね!」
「すまんすまん。ほら、話してた【暗】のやつ連れてきた」
「植野主水です。宜しくお願いします」
「ほう?ほーほーほー…」
ナツは全身を軽く調べる。
「植野主水くん、頭開いてもいい?」
「えっ?」
「馬鹿野郎!ドン引きじゃねーか!」
「…いいですよ」
「だろ?全く…はぁ!?マジ!!?」
「やったー!じゃあ、手術しよ手術〜」
「待て待て!なんでだ主水?」
「だって、自分もわかんないですよ?何処が変化したなんて…考えられるのは脳じゃないですか」
「へー、そう考えてたんだ〜。でも違うよ。脳に何らかが干渉した訳でも、脳の構造が変わった訳でもないからね!」
「…なら、頭開く必要ないだろ」
「あっ!しまった!?」
「ナツ…いい加減にしろって!…それより、東君はどうしてる?」
「んー?彼ね〜…凄いよ?ほんと」
「東?誰です?」
「よしきさんが見つけた中で、1番ヤバい世人だ…キャパオーバーで失神したのか?」
「そうじゃないよ〜?自分でここまで来たんだよー。ふらふらだったけど…まぁ、とある協力者が映像撮ってたから観てみ〜」
俺はそこで初めて東英志が戦ってるところを観た。
「…昨日発現して、今日でここまでか…成長速度が速いな」
昨日、発現だと!?
「そうだよね〜。手加減してるとはいえ、どれも殺傷能力が高い。霧島さんが危険視するのも納得だよねー」
霧島がコイツを危険視?俺よりも…?
初めて会った日を思い出す。
「単純だな」
単純?俺が?コイツより………?
「ん?どうした、主水」
「…別に」
「ともかく、検査するよー植野主水くん。しばらく英志くんは起きないから、やることやろう!」
「頭開くのは無しな」
「頭がダメなら、下から…」
「駄目に決まってるだろ!!」
「ちぇー」
2024/4/16 pm6:48
「東英志くーん。色々調べさせて貰いましたよ〜」
「うわあ!?」
「最低な起こし方だな…平気か?東君?」
「宇津井さん…ナツさん…そっか、病院か。僕は平気です。あの人は…?」
「今調べてる。要望通り、よくやったな東君」
「いえ…」
自分より背の高い子と目が合う。
「彼は?」
「紹介する。新しく参加することになった植野主水だ」
「仮だがな…」
この子、なんか違う。
「どうした?東君」
僕は立ち上がり、彼に寄る。
「…なんだよ」
「人殺しの眼だ」
「はぁ?」
「無理矢理じゃない。進んで殺しをしたな?」
「だからなんだ?お前だって、人殺したんだろう?世人になってさあ…」
「ちょっとちょっと!?やめなよ2人とも〜」
「ごめんなさい、ナツさん。でもやめません。彼はただの快楽殺人者だ」
(へぇ〜。鋭いねー東君。直感でそこまで見抜くか…さて、主水はどうする?ガキらしく駄々こねるか?)
「俺は義によって人々を助けてる。お前にとやかく言われる筋合いはない」
「人を殺すのが義ならば、法律はなんだ?君がやってるのは身勝手な正義だ!」
「法律が人を救うなら何人見捨ててきた!?そんなもんが有るから、人間は不平等なんだ!!!」
「不平等だからこそ助け合うべきじゃないか!!!君の価値観で人を殺す義理はない!!!」
「偽善者め!」
「頭が良くても行動が野蛮なら、人は付いて来ない。欲まみれの独裁者だ…」
先に植野が手を出した。
「なんだテメエ?俺より優ってるとでも?」
「やめろ主水。小部屋を散らかすなら、相応しい場所があるぞ」
「えっ!?止めないの!?宇津井くん」
「こういうのは、殴り合った方が早いんだよ。あと、親には連絡済みだ。存分に殴り合え」
2人は能力検証場へ移動した………
2024/4/16 pm7:02
眩しい光が、2人を照らす。
光が大きければ、影も大きくなる。
「んで、さっき手出したからそっちから…」
「大宇宙破壊光線」
譲ったのも束の間、ヤツはド派手な光線を放ってきた。
(殺す気かよ、アイツ…!?)
「随分と余裕そうだったから、この程度の攻撃避けれるでしょ?」
「…舐めやがって」
「めちゃくちゃ殺す気じゃないですかー!?止めてくださいよ宇津井くん!」
「へいきへーき。東君は殺す気はないから、安心して見てられるよ」
「何言ってんですかー!?死んだらどうするんですか!?」
「解剖でもすりゃいいじゃん」
「…」
「納得すな」
およそ東英志の能力は、拘束なんぞ無意味だ。投擲武器かそれとも………いや、アレは使いたくない。こんなヤツの為なんかに…
「運命断罪輪」
手首から輪を出し、2つの歯車はヤツの周りを浮遊する。
「かかって来ないなら、こっちから行くよ」
あの輪は殺傷能力は無い。恐るるに足らず。
アイスピックを構え、距離を詰めるコースを確認する。
所詮、素人。懐に入られたら、どうにも出来ないはずだ。
早馬の如く距離を詰める。
途中1つの歯車が飛んできたが、容易に避けることができた。
懐に入り、アイスピックを振り上げ…
「違う。わざと外したんだ!」
「切断される!?」
振り上げた腕が固定される。
見ると歯車が俺の腕を掴んでいた。
「運命断罪輪の本来の使い方は拘束だ。ぬかったな」
ヤツが不利な状況なのに、何で圧倒されてるんだ?
「能力を使わないのか?それとも、追い詰められて能力が使えないのか?」
「こいつ…!」
なんだ?馬鹿にされてるのか?この俺が?
「お前は何もわからない!!!力も!俺のことも!!」
無理矢理に腕の関節を外し、歯車から逃れてヤツの影に乗り込む。
「消えた!?」
使いたくなかった。だが、コイツを殺す為なら使ってやる!真剣を…
「そこまでだ!!!」
「霧島さん!」
「東、それ以上能力を使うな。明日に響く…植野もやめろ。能力の使い方は東が上回っている。わかったな?」
「………はい」
「なら休め。奇襲されたのに体を酷使するな」
『わかりました』
「わーい。霧島さんだぁ!…どしたの宇津井くん?」
「…なぁ?アイツはどうしてる?」
「彼?もうしばらくしたら、復帰できるかもねー」
「復帰か…」
「嫌なの?」
「違う。アイツも規格外だが、身体が身体だからな…」
「そのおかげで、能力がパワーアップしてるからね彼は」
「…能力の底上げは、お前なら出来るんじゃないか?」
「………不可能だねー」
「やけに自信がないな?」
「そんなことできるなら、霧島さんをどうにかできるけど?」
「…なるほどな」
最後までご愛読いただきありがとうございます。
ようやく合流した2人の主人公。
そして、【血】を操る世人陣営から来た堂島奏と横浜庄司。謎の女性。
彼らと本格的な闘争はいつになるやら…
待て次回