5.うなれ俺の回復魔法
それから俺は手早く購入の手続きを行い、契約魔術で奴隷達と契約を行った。
主に制限することは俺に危害を加えない事だけで他に行動を縛るような契約は行わなかった。
レイモンドやミリヤからは逃亡を防止するための契約も行うべきだと忠告されたが今は意図的に無視した。
だって、治してやった後にめちゃくちゃいい条件を提示してから契約した方が感謝してくれそうじゃん。フッ、我ながら完璧な理論だぜ。
屋敷へ戻ると無駄にデカい我が家の横に立っている俺用のゲストハウスに奴隷全員を集め一番死にそうになっている6人目と7人目の奴隷から治療することに決めた。
「今からお前達の治療を行う、欠損も含めて全快させるので自分の順番が来るまでは各々に与えられた部屋で休んでいるように」
ザワザワと騒がしくなる部屋の中で奴隷たちの質問などはいったん全部無視し、召使の2人に指示を出した。
レイモンドは親父に報告に行ってしまった為、残りの2人のフットマンのパーシヴァルとミゲルに奴隷の移動の手伝いを頼んだ。
我が家の屋敷で俺が支持を出せる使用人は3人だけだが、他にも60人以上が屋敷で働いている為、ついでに手の空いたメイド達に必要最低限の世話などをしてくれるように頼んでおいた。
最初の二人を完璧に治すのに1ヶ月はかかりそうだったのでまずは、命を繋ぐ最低ラインを治すことに決め、全身に回復魔法をかける。
みるみる内に全身の裂傷や打撲の跡が治っていき、顔にも少し生気が戻ったように見える。この回復魔法は民間でも多く使用されており、魔法を収めた物達であれば比較的容易に使うことが出来る。
二人の男女を補助系統の透視魔法を使い内臓を観察してみた所、如何にも悪そうな箇所がいくつも見えた。
おまけに魔術師が施した術がまだいきていそうな箇所もなんか箇所かあったのを確認してから治療に入る事にした。
恐らく、今の俺の知識ではこの魔術を解除する事は出来ないと思われるので、完全に摘出してから再生する方法をとることに決めた。
それから少し考えて補助系統のチャーム魔法を使い、麻酔と同じような効果が得られる魔法を施してから開腹手術と併用して回復魔法を使うことにする。いきなり臓器を摘出したら発狂するだろうからね。
これから2人には何度も腹を掻っ捌かれる体験をしてもらわないといけないことに少し申し訳なさを感じながらも俺と7人の奴隷達との1ヶ月の生活が始まった。
1週間と少し後、ようやく魔術師が魔術を施した臓器の全摘出と回復が終わった。まぁ、変なのが1個残ってはいるけど。その後は飯をまともに食べれるように胃周りの臓器に回復魔法をかけながらまずは体力を回復してもらうことにした。
今日の治療はこれで終わりでもいいのだが、まだ時間と魔力にも猶予があるので、一番軽症なサハギン種の男性の腕を治すことに決めた。
「パーシー、サハギンの男性を読んできてくれないかな?」
かしこまりました。と恭しく頭を下げると使用人のパーシヴァルが部屋を出ていき、ややするとサハギン種の男性を連れて部屋に戻ってきた。
「アルフレッド様、アーヴィーさんをお連れ致しました」
「ご苦労、パーシー」
「アーヴィーさん?よろしく僕に会うのは2度目だよね質問したいことが沢山あると思うから治療しながら話をしようか」
「へい、私はアーヴィーと申します、アルフレッド坊ちゃま。聞きたいことは沢山ありますが、まずあのお話は本当なのでしょうか?」
「欠損部分の回復の事だよね?あれは本当だよ、それに今日読んだのは今から行おう余裕が出来たからなんだ」
「余裕、、、ですか?それはどういう」
「あぁ、勘違いしないで欲しいんだけどね、時間的な余裕だよ、僕はこう見えてもエアハート家の跡取り息子だから結構時間の猶予って少ないんだよね」
そういったエアハート家の跡取り息子のアルフレッドを見やってアーヴィーは違うそうじゃないと内心で突っ込みをいれた。『この貴族の少年はこの年で欠損部分を回復するほどの魔力を備えている事に何も疑問を持っていない、それはいくら少年が貴族の子だったとしても、あまりに無法だ。余裕が出来たと言われた時、俺は魔力に余裕が出来たのだと思った、だが実際はそうではなく時間の余裕が出来たのだと彼はいった、それは、はなから魔力量には疑問を抱いていなければ出てこない返答だろう?この年でこの魔力量、将来一体どれだけの量になるんだ?』アーヴィーは人知れず薄ら寒いものを感じながらも、なんとか気を取り直し謝罪の言葉を述べた後に質問を続けた。
「アルフレッド坊ちゃま、治療をしていただくこと大変嬉しく思います、再び両の手で水をかき分け、海を泳ぐことが出来ることは私の何よりの望みです。ですが、私は一体何年、いや何十年奉公をいたせばよろしいのでしょうか?」
一般に囁かれている欠損回復魔法の値段は各貴族家によってピンキリだ高いもので1億から安いものは100万まで幅広い値段が囁かれている。
質問を終えたアーヴィーは固く口を閉じ固唾を飲んでアルフレッドからの返答を待った。
「えぇと、レイモンドうちの値段設定ってどんなもんだっけ?」
「はいアルフレッド坊ちゃま、当家では基本1か所200万からとなっております」
「うーんと、なら今回は僕の練習も兼ねているから半額でもいいかな?」
「それは勿論でございます。ただし、アーヴィーさんには守秘義務を契約魔術で結んでいただく必要がございますが」
「だそうだよ、アーヴィンさん。奴隷になった時に出来た分と合わせて総額でも1000万くらいだと思うから、僕の今考えている仕事内容だとアーヴィンさんのお給料から天引きだとしても、まぁ大体3~5年くらいで返済できるんじゃないかな?」
アーヴィンからすれば破格の条件を告げたアルフレッド坊ちゃまは、虫も殺さないような優しい顔でニッコリ微笑んでいた。
先程アーヴィーが感じた薄ら寒さなどは頭の中から消えていた。
この後腕はちゃんと再生しました。感謝してもらう為についでに虫歯とかもサービスで治してあげたよ!やったね!