18.夢
最後にイラスト載せました
168番は夢を見ていた。
輪郭がぼやけ、向こうの景色が見える程に透けた女性の姿が見える。
その女性はいつも168番の夢の中で一際存在感を放っていた。
そんな女性は何時も沢山の人に囲まれている。
168番は正確に数えた事はないけど、恐らく100人以上がいる。
それに皆子供だ、様々な種族の。
彼等が子供だと分かったのは皆168番と同じように言葉が幼いせいだ。
そんな子供達に囲まれた女性は夢の中なのに何時も寝ている。
お寝坊さんだと168番は思った。
そんな夢を168番は何時も見ていた。
夢の中だけが168番の心が休まる場所だった。
起きればまた、実験が始まる。
注射は嫌いだ。沢山の大人が168番に痛い事をする。
やめてって言ってもやめてくれない。いやだと言っても聞いてくれない。
誰も168番の話を聞いてくれない。
実験が終わって眠りにつく時間だけが168番の好きな時間だ。
そんな夢の中で変化が起こった。女性が話出したのだ。
それでも、女性は眠ったままだ。
寝たまま喋るなんて面白いなと168番は思った。
何を話しているのだろうと聞いてみても良く分からない。
でも、その内に何を喋っているのか分かった。
それは皆の名前だった。
理由は分からないけど、『168番目の貴方はナタリーがいいかしら?』と
自分に聞かれたのだと分かった。だから、 いいよ と168番は答えた。
その日から168番の名前はナタリーになった。
そして、ナタリーは女性が自分のお母さんなんだと分かった。
それからは毎日ママに沢山話しかけた。
でもママと会話する事は出来なかった。
どんなに話しかけてもママは答えてくれない。
それに、女性をママと呼ぶといつも否定的な感情が伝わってくる。
どうしてなの?女性がママである確信がナタリーにはあるのに。
なんでいつもママは否定するの?
そこで目が醒めた。
そして、左の目が見えなくなっている事にナタリーは気付いた。
いや、左目は無くなっていた。
その日からナタリーは夢を見る事が出来なくなった。
どんなに寝てももうあの夢を見る事が出来なくなってしまった。
大好きな時間を奪われたナタリーは悲しくなっていっぱい泣いた。
2年が過ぎた時ナタリーは別の場所に移された。
何回目かの移動の時そこで奇跡が起きた。
見えなくなった左目が見える様になったのだ。
そして夢の中でまたママと会うことが出来た。
それにお話も出来るようになった。
でも、女性をママと呼んでも話せなかった時のように違うと否定される。
どうして?『ママはナタリーのママでしょ?』って聞いても否定される。
ママと話していると、突然変化が起こった。
いつも透けていたママの身体が徐々にハッキリと見える様になった。
話せるようになり、姿をハッキリと見る事が出来る様になった。
なのに、ママは突然ナタリーの前から消えた。
ナタリーは不安になったけど、直ぐに大丈夫だと分かった。
それは夢の外からママの声が聞こえたからだ。
不思議な話だけど、ナタリーは寝ているのにママの声が聞こえる。
何やら難しい話をしていたけど、実験の話になると少しだけナタリーにも分かる話が出た。
その日はそれ以降ナタリーの夢にママは出て来なかった。
次の日、貴族の少年に呼ばれ再度ママと話し合いが行われた。
難しい話はナタリーには分からない。
それでも、『——私が言いたいのはね、母親扱いするなって事よ!ナタリーも私の事をママ何て呼んで――私はあの子の母親になったつもりなんて無いのよ!』
そうハッキリと声に出して言われた言葉が頭の中に響いた。
ナタリーにはママしかいないのに。
それに、やっとお話出来る様になったのに、何故、何故、何故
気付いた時には夢から醒め声をあげ泣いていた。
でも、眠りは直ぐに訪れた。
再び眠りにつくとママは夢の中にいた。
だけど、ママは前のように静かに眠っている。
ナタリーは嬉しくなって、ママのそばでいつまでも目覚めが来ない事を祈った。
オマケでナタリー側も少し書いてみました
後AIで設定入れた画像作成してみたので雰囲気こんな感じで。




