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1.ナルシストを拗らせた子供お兄さんが異世界に転生する

よろしくお願いします。

 自分の感情を見つめ直すきっかけがいつだったのかハッキリと覚えていない。


だけど、『お前ナルシストじゃん』と友達に笑われて、あぁそうなんだ、そうだったんだと腑に落ちた時、俺は自分の内面を表に出す事を辞めた。


 俺の短い人生の中で悶々としながら過ごした時間は表には現れず少しくすぶりながらも心の中に小さな痛みを伴いながらやがて大きく膨らんでいく。小さい頃の俺にはそれが承認欲求だという事が分からなかった。


 それをひた隠しにしながら友人とも呼べない相手に本心を隠し軽薄な笑みを携え、仲間外れにされたくないという思いで過ごしていた時間は俺の心を次第に蝕み、限界を迎えていたのかもしれない。




 最初に自覚を得た時から3年後、中学3年の夏に差し掛かったある夏の日、俺は思い切って今まで自制していた事に手を伸ばしてみる事にした。


 俺が、自分の心に背く事を辞めたのはこの時だったのだろう。


 まず手っ取り早く相手に褒めてもらうには何にがいいかと考え、夏休みの宿題を過去最速で終わらせた。


 それから海あり県だった事とサーフスポットが近くにあった事で、近所のおじさんに頼んでサーフィンを教えてもらった。だってサーフィンってカッコいいだろう?


 一度行動を起こすと、俺の承認欲求は際限なく膨れ上がっていくのを実感した。それからは自分がカッコいいと思って貰えるような事を必死で覚えることに精を出した。


 勉強も大事だが、俺には「○○君てピアノ弾けるんだ」という言葉の方が大事だった。俺は周りにナルシストだと悟られないよう慎重に、自分の言動の端々に気を配りながら生活を続けた。




 頭の出来も俺の欲求に応えてくれるように悪くなく、高校受験は私立に特待生で入学することが出来た。奨学金のおかげで浮いた金を、両親に頼んで習い事に費やしてもらった。


 ほかの皆が部活動を必死に取り組み、勉強をしているのを横目に、ピアノコンクールに出る訳でもなく、英語教室に通って国際留学学科に入るわけでも無いのに俺は自分が誰かに黄色い悲鳴や感嘆の声を上げてもらうためだけに時間を使っていた。


 その結果俺は特待生の地位を維持したままに高校生にしては沢山の技能を身に着ける事ができた。それでもなお収まる気配のない俺の欲求。


 それを誰にも悟られること無く只々周囲に笑顔を振りまく。何故なら、少しでも鼻にかけたような態度や言動をとれば、俺がナルシストだと思われてしまうから。


 そんな生活を1年続けた辺りで大半の人は満足して少しずつ大人になり現実と向き合い成長していくものだと思う。だけど俺にはそんな事を考える気がはなから無かった。


 その原因は分かっている。それは自分の肉体スペックの高さにあった。どれだけ身体に負荷をかけようとも1日毎に身体能力を増していく身体。際限のない食欲に支えられて次第に大きくなっていく身体、俺はひょっとしたら天才なのでは、なんて思った時期もあったけど何の事はないただ、”成長期”が人より少し遅かっただけだ。


 それでも元々168㎝だった身長がこの1年で11㎝も伸びた事が素直に嬉しかった。両親が両方ともに高身長だったのを見れば当たり前の事なんだが。


 そんな俺には最近ちょっとしたマイブームが到来していた。それはズバリ異世界小説である。異世界で現代知識を使い無双する物語。特に現代知識で金儲けをしたり人々にもてはやされている場面などを見てニヤニヤしている。


 ただ主人公の色恋などには全く興味が無く全部読み飛ばしている。


 それからというもの、何故か自分もいつか異世界に行けるのではなどと思ってしまったのが運の尽き。


 今まで以上の自分磨きに加え、異世界で使えそうな情報収集が趣味となり、自分の将来など全く考える事なく高校生活を終えてしまった。


 高校最後の年には、童貞は恥ずかしいという理由だけでプロの女性相手に本番をお願いして初体験も済ませた。それからは今まで愛想を振りまくに留めていた女性たちにセフレのような付き合いをしてもらったりもした。


 完全にクズの自覚があるが、最終的に俺の中では性欲よりも承認欲求の方が勝った事でその関係も半年で終わりを迎えた。


 


 有名大学に入学し交換留学などを経験しながら日本以外の国に行くことを楽しみにしていた俺だけど、ハッキリいって海外は肌に合わなかった。


 なんの事はない、ただ自分よりすごい奴がいたってだけだ。俺は日本では運がいいことに自分よりハッキリ優れていると思える相手に今まで通った学校で会った事がないだけの所詮井の中の蛙だったとういうだけの話。


 ”今思えば俺はここでも大人になる事が出来なかった。”


 だけど当時の俺はその経験は決して無駄ではないと感じ今まで以上に自分磨きに力を入れていった。本当なんでここで現実と向き合わなかったんだと今でも思う。


 


 だからその事件が起こった時に俺は真っ先に飛び出し誰かを庇って死んだ。


 何がどうなってそうなったのか、事件の詳細を何回思い出そうとしても上手くいかない。



 あぁ、そういえば異世界には死んだあとしっかりと転生する事ができた。異世界転生とは輪廻転生のことやったんやーーーーなどとアホな事を思いながら回想を終えるとメイドがおしめを変えに来た。


「アル坊ちゃん、オムツ変えましょうね~♪」


「アイ!」


「今日もいっぱい出ましたね~♪」


 この状況、前世の肉体であったならば耐え難い事だったと思うのだが、幸いなことに今は完全に赤子であるため全く俺の精神に影響を与えていない。


 まぁそんな事は置いといて、俺も異世界小説の転生者同様に赤子の頃から魔力を感じ取り魔力量ゴリ押しチートを身に着けるんや!と張切り全身で魔力を感じられるように意識を集中させ、、、、、




 スヤ~~~~




 睡魔には抗えんかった。

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― 新着の感想 ―
ナルシストというのは物語の主人公としては、一般的に好感がもてないマイナス要素だけど、 それをどう良い感じにもっていくのかという感じですかね
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