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3/6

sao = Die Morgendammerung 3 (ディエ モルゲンデンメルング/黎明)





?????

Haenschen klein ging allein in die weite Welt hinein.

ハェンツェンクライ、ギィオンライン、インディーバイトゥべンティーライン


Stock und Hu t steht ihm gut, ist ganz

wohlgemut,

ストゥッアドフォート、スティーティングート、イーイストディーズ、フォガムート


Aber Mutter weinet sehr, hat ja nun kein Haenschen mehr.

ドゥスティームッザァ、ヴァイネッツァ、ハッジャー、ヌーカン、ハェンツェン、ミアー


Wuensch dir Glueck,

sagt ihr Blick,

ウェンシュ、デー、グルーク、ザァークトイヤブレーク、、、、、



辿り着いたその場所は、不気味に歌う少女が1人

血塗れの泥沼と化していた

名はウォルフガング・シュライバー

横たわっている死者の数は、多数としか形容できない、正確に分からないのだ

なぜなら、一人残らずバラバラにされている、今このときも解体され、もとは人間であったはずの肉塊が増えていく

それを成しているのは、一人の少女だ、陽気に歌を口ずさみながら、およそ凄惨という表現が生易しい残虐行為を淡々と作業的に繰り返している

その光景、、、、常人ならば卒倒し、音と臭気だけでも幅吐するのは間違いない有様だったが、男は僅かに眉を顰めただけだった、不快に感じているのは確かだろうが、それは殺戮そのものに対してではない。この程度の事なら自分とて数限りなくやっている。気に食わないのは、自分以外の誰かが偉そうにそんな真似をやっているのが癪に障るという、社会常識からズレた自己中心思考

つまり、俺と被るなよ生意気だ

それが今、男の胸にある憤りの理屈だった

ゆえに



ヴィルヘルム

あぁ、その、なんだ、、、お楽しみのところ悪いんだけどよ、ちっとばかりてめぇに聞きたい事があるんだわ



言葉だけは友好的に、笑みを浮かべながら話しかける

鬼畜というものは獲物を前に、返ってリラックスしているものだ

殺意に躊躇がないのだから、ノリとしては飲み食いする事と変わらない



ヴィルヘルム

つーわけで、とりあえずこっち向きな、、てめえの親父は、礼儀云々を教えちゃくれなかったのかい?



ヴィルヘルムの問いに、呼ばれた少女は振り向いて、、、、、



シュライバー

親父?


ヴィルヘルム

おおよ、クソ外道のイカレ小娘でも、木の股から産まれたわけじゃあるめぇが、まあ、犬っころから産まれた可能性ならありそうだけどよ


シュライバー

ああ、犬ね、そういえば、ヤギとかロバとかを可愛がってた親父だったね


ヴィルヘルム

へえ、そりゃいい趣味で、、、、


シュライバー

うん、だからたぶん、僕も人間じゃないんだよ



こちらも同じく、まったくの自然体で微笑み返した

その点、確かに彼らは同種だと言えるのだろう

少女は親愛のこもった目で男を見つめ、ドレスの裾に手をやると、淑女が一礼するかのように優雅な所作で、スカートを捲り上げた



シュライバー

それから、小娘でもないんだなお兄さん、僕は人間じゃなくて、オスでもメスでもないのさ、ほら



そこに現れた光景、状況

少女と思われたモノの肉体は、少女どころか人のあるべきカタチから逸脱したものであり、誰もが目を背けるだろうそれを前に、しかし男は鼻で笑っただけだった



ヴィルヘルム

ヒュ〜、なんだおまえ、面白ぇ身体してやがんなぁ、抉られちまったのか、その穴っぽこはよ」


シュライバー

そうみたいだねえ、もう覚えてないけど



痛ましいだの、気持ち悪いだの、そんな感慨は双方共に持ち得ない

よくある事だと言わんばかりの男を前に、少女に擬態したモノは毒婦の媚態を示して見せた

そして、、、、



ヴィルヘルム

目障りなんだよ、てめぇ、俺と似たような髪の色しやがってパチモン野郎、、、、


ヴィルヘルム

お陰でいい迷惑だ、邪魔くせえから逝っとけ、ガキ


シュライバー

ぐはっ!



ごく当たり前に構えた銃で、威嚇もなしにいきなり発砲

轟音と同時に細い体躯は吹き飛んで、短い苦と共に血塗れの路地へと転がった

それを見届け、男は軽く肩をすくめる

先の警官たちを殺したときと同様に、殺人行為をやった瞬間に忘れたような態度だった



ヴィルヘルム

ったく、しょうもねぇ、近頃アホばっかり増えやがるぜ、こんな日はさっさと帰って、、、、



酒でも飲んで寝るにかぎる

そうぼやきながら踵を返した、そのときに



ヴィルヘルム

うォッ!



不意に背後から、唸りをあげて襲い来る投擲物(とつてきぶつ)

反射的に身をよじって躱したのは、先ほどまで少女が犠牲者たちを解体していた鉈だった

そして



シュライバー

なぁーにするんだよ、、、いきなり、、、


ヴィルヘルム

っ!?



撃たれた少女が立ち上がる先の銃撃を躱したわけでも、男が狙いを外したわけでも断じてない

確実に、命中している、一撃で絶命させるような急所に当たったわけではないようだが、それでもこれは有り得ない反撃だった



シュライバー

撃ったね、、、僕を撃ったね、殺そうとしたね、つまり殺されてもいいんだね!


シュライバー

僕は死なないし殺されない、男でも女でもないんだから子供も産めないし、孕ませないし、一代で終わるって事はつまり"完成"してるって事なんだよ!


シュライバー

だって下等な生き物ほどうじゃうじゃガキを産むじゃないか!、、、それをしないって事はねえー!


シュライバー

ねぇわかるでしょー、、、、僕は死なない!不死身なんだ、殺されてたまるかぁッ!



壊れた理屈を吐き散らし、泣き喚くように絶叫する様はまさに怪物

思考回路がすでに人間のものではなく、それに引きずられるかのように体機能までが常軌を逸したものへと変わっているのだ



シュライバー

イイイイィィィヤッハアアァァアアアッ!


ヴィルヘルム

なッ、、、、、、、んだよてめえはァッ!



銃を持つ相手に対し、何の警戒もせず真正面から飛び込んでくるなど狂っている

錯乱した者特有の蛮行だと片付けるのは簡単だが、これはそんなものではない

自分は死なない、死ぬはずがない、全身全霊、魂の果てまでそう狂信している、襲い掛かる嵐のような重圧は、すでに質量さえ伴っているかのようだった。



シュライバー

ギッ、ーグッ、ガアッ!



二発、三発、続けて銃弾は命中したが、その程度で少女の仰は揺るがない、そして荒ぶる凶念は、魔的な奇跡を当たり前のように引き起こす



ヴィルヘルム

ぐおおオッ



都合四発の銃弾を受けながらも間合いに入った少女の蹴りが、倍近い体重はあろう男の身体を吹き飛ばした、これもやはり、常人の筋力を超越した所業だろう

身体から噴水のように血を噴きながら、けたたましく笑う少女

その狂態を睨みつけ、男は瓦礫の山を押しのけつつ身を起こして吐き捨てた



ヴィルヘルム

くそったれがあ!、、なんだこのガキ、イカレてんのにもほどがあるだろ!


ヴィルヘルム

撃ったんだぞ、あたったんだぞ、なんで倒れねえんだ、ありえねえだろ!


シュライバー

ウアハハハ、アハハハハ、、、、、痛い、痛いよ血が出てる!、、銃で撃たれたのなんか久しぶりだぁっ!


シュライバー

ねえお兄さん、でもキミは下手糞だねえ〜


シュライバー

度胸があるだけで、射撃の腕はド素人だ


シュライバー

これ以上そんなものに頼ってると、次でその首、ねじ切っちゃうよぉ


ヴィルヘルム

、、、、、、、、、、



侮蔑と賞賛入り混じった少女の言に、男は眉を顰めて低く呻く

形だけ見れば、先の攻防において不覚を取ったのは彼のほうだが、だからといって男が脆弱なわけではない

むしろ、これで済んだ事を讃えられて然るべきだ

少女の暴圧的な狂気を前に、並の人間なら木得となって引き金すら引けず、即座に殺されていただろう

男の胆力と状況に対する即応性

人間に躊躇なく発砲する事の善悪はともかくとして、果断と言って差し支えないはずだ

事実、身投げじみた特攻を戦法とするこの少女が、撃たれたのは久しぶりと言った事からもそれは分かる

"この場に転がっている数多の死者が、それすら出来ずに引き裂かれた事を証明している"

だが、、、、しかしだからといって、そんな理屈を男が自身に許すかどうかは別の話だ



ヴィルヘルム

、、、、、、上等、、、、


ヴィルヘルム

いいギャグ持ってんじゃねぇーかバケモンが


ヴィルヘルム

ぶち殺してやるからかかってきやがれ



銃を放り投げて立ち上がり、静かな声で手招きする、彼はいま激昂していた

銃などという、臆病者の武装に頼った自分自身に

そんな無様を晒させたこの少女に

許さない、思い知らせる、強いのは俺のほうだと、こちらも"人外の域"で狂言している獣なのだ



シュライバー

うふ、うふふふ、、、、いいな!、いいよお兄さん!、ノれる感じだ、、、、名前が知りたい!


シュライバー

これから先も、今夜の興奮をたまに思い出して浸りたいよぉ〜、だから、ねえ、ねえ、いいでしょ!名前、教えて、教えて!!知りたいん

だ!!


ヴィルヘルム

、、、くっ、、、一人で飛びやがってこのクソがぁ



同属嫌悪、対抗意識、野獣が野獣に負けるわけには断じていかない

それは矜持で、そして掟で、外道を歩む者の真理

敗北は死でしかないと、何より理解している二者なのだ



ヴィルヘルム

ヴィルヘルム・エーレンブルグ、、、てめぇは?


シュライバー

ウォルフガング・シュライバー、、、、名づけの親なんかもういないけど、、、、ねえ、それはたぶんお兄さんもさ


ヴィルヘルム

ああ、とっくに殺して、燃やしちまったよぉ


シュライバー

アハハハハハー!いいね、そりゃ最高だっ!


ヴィルヘルム

おお、気が合ったみてぇーで反吐が出るぜっ!


シュライバー

うふ、うふふふふふふふふふふふふ、、、、


ヴィルヘルム

はは、ははははははははははははは、、、、



牙剥く刹那、漏らした笑いは貴様を喰らい殺すという自負の発露

無限永劫に不倶載天、この時代、この帝都に、無敵を謳う人獣は二人もいらない

その了解は、双方共に本能として持っていたから



ヴィルヘルム、シュライバー

引き裂いてやるっ!!!!




時は1939年、ドイツ、ベルリン



シュライバー

生皮剥いで、僕のベッドに敷いてやるよぉ!


ヴィルヘルム

てめえぇ!!、教会の十字架にでも串刺してやらぁぁ!



ヴィルヘルム、シュライバー

いっくぜエェェッ!!!!!



運命の大戦に雪崩れ込んでいく髑髏の帝国は、恐怖と狂気と狂騒と、そして混沌という名の炎に彩られた、修羅の春と化していた



つづく

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